葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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美森ちゃんパート。
原作のように実行動に出ない分色々と過激になっております。


幕間2-43

 

誰かを好きになる。

誰かが私の傍にいてくれる。

 

私の中では、その二つははっきりと別物だと区別していた筈。

けれど――――いつからだろう。

その二つが一つのように重なり、安心できるように成ったのは。

 

先程脱ぎ捨て、床へと畳まれた私服と下着。

床に落ちる湯水は、足踏み用の布へと落ちて染みていく。

幾らか髪に残ってしまった水分は……拭って貰おうか。

 

そんな我儘を思いながらに、目線を落としている先。

持ち込んでいた手荷物の内、約半分を占めていた物質。

 

……見せれば喜ぶんじゃないか、なんて。

そのっちに言われてその気になってしまった、その服(・)を見て少しだけ手が止まる。

 

(……他に持ってきてないし、もうこれしか無い……のは分かってるけど)

 

ちょっと派手すぎないか、と思う部分と。

以前にも着ていたのだし、と思う部分と。

 

まるで善の神と悪の神が私の脳内で騒ぎ立てるように。

肯定と否定を繰り返すのを遠くで眺めながら、頬が微かに熱を帯びるのを感じる。

 

見て貰いたい。

恥ずかしい。

 

そんな……極普通の女の子らしい感情を抱けたのは。

鷲尾の家でカチコチに固まっていた頃では、思うことも出来なかったこと。

東郷の家に帰ってきて……友奈ちゃんと出会って。

初代の勇者達と交流する中で、幾らか育まれてきたもの。

 

……そ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)に(・)し(・)て(・)お(・)き(・)た(・)い(・)、と。

心の何処かで逃げるように思ってしまうのは、二人きりだからなのかしら。

 

(……私も、変わったわね)

 

そう、確かに思う部分もある。

 

そのっちや銀に言われたから。

千景さんに言われたから。

ひなたさんに言われたから。

 

新たに増えた友人と、知り合いと。

色々な意味での同士と、仲間と。

そういった人たちから言われて、自分でも色々と悩んで考えて。

……それでも、互いに契を交わした彼からは離れられないでいる。

 

そう決めたから、と言うだけではなくて。

安心できて、信頼できて、助けてくれて。

私が私であるための、土台の一つへと既に変わっているから――――そんな気もする。

 

(学校での男の子の目……余り気にならなく成ったのっていつだったかしら)

 

普段は思い返しもしないこと。

何となくに、ふと気になったから思ってしまったこと。

 

先程まで温まっていた身体から熱は抜け。

滴る水滴が、髪から肌へ落ち。

そのまま滑り落ちる独特の感触を感じながら。

その根幹の理由を思って、更に頬だけに熱が灯る。

 

あれは――――多分。

神樹館を卒業する間際から、中学校に入学するまで。

 

元々、何らかの理由で……そのっちや銀にも向いていた目線。

御役目が始まった頃から、それに集中していたから気付かなかった事。

 

三学期……役割が終わり。

私達が別の場所に引っ越すことと相成って。

そうして、下駄箱に手紙が置かれていたり。

男の子に声を掛けられて、けれどそのっちに護られていた事を後で知ってから。

 

恐らくは、『御役目』を持つ『名家』というのは。

……私達を守る、一種の壁だったのだろう。

 

其処から最初に抜け出ることに成ったのは私。

『鷲尾』から『東郷』へ……主家から分家へ。

見方を変えるのならば、立ち位置が上から下へと落ちたことで。

他の家から見れば、私は手(・)に(・)取(・)っ(・)て(・)も(・)許(・)さ(・)れ(・)る(・)範疇になったのかもしれない。

 

でも。

放課後を、休日を。

三人が一緒にいてくれたからこそ、私はそれ以上に手を出されることもなく。

そして、常に異性と一緒にいたからこそ……恐らくはそ(・)う(・)見(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。

そして、私は周囲の目線から――――身体に向けられる目線を気にしなくても済むように落ち着いた。

 

(――――他の誰に、どう見られても良い。

 私は……私(・)達(・)は、彼にこそ見て貰って、笑っていて欲しい)

 

こうして思い返すのは……単純に。

これから先、更(・)に(・)一(・)歩(・)を(・)踏(・)み(・)出(・)そ(・)う(・)と(・)す(・)る(・)なら。

私は……私として、きちんと立ちたいと。

そう、先程の微かな時間の中で思い直したから。

 

唇同士を重ねた事。

極自然に、欲しい物を求めてしまうのなら。

これから先――――そして、家の求める役割を果たすとするのなら。

そもそも世間一般に認められる筈もない私達の関係は、何らかの形で精算しなければならない。

 

私は、私達はそれで良い。

彼は、彼自身はそれで良い。

 

でも……其処から先を認めさせるのなら。

嘗(・)て(・)の(・)戦(・)国(・)時(・)代(・)の(・)英(・)雄(・)の頃のように。

皆に分かる形で、彼と私達が共に有り続けることでの利点を示さなければならない。

 

(……そ(・)の(・)為(・)に(・)、なんて言ったら)

 

多分、この世界に失礼なのかしら。

そんな事を思い浮かべて、直ぐ様に消してしまう。

 

……もし。

私が御役目の中で誰かを、何かを失っていたら。

それを記憶していたとするのなら。

そんな手法に手を伸ばしていたかもしれないけれど。

短絡的に――――解決することだけを考えて。

誰にも話を振ることもなく、私自身の我儘として実行に移していたかもしれないけれど。

 

はぁ、と微かに吐息を漏らし。

他の……同い年の異性には、彼以外には見せることも考えさえしないそれを手に取り羽(・)織(・)る(・)。

 

それは、以前毎朝の水垢離の際身に付けていたそれに親しい白衣。

本来ならば下にも履く緋袴は、皺になるから身に着けず。

それこそ覗き込もうと思えば下着さえも見えてしまう……透けてしまう、そんな衣装。

 

(――――どう、反応するんだろう)

 

見惚れてくれるだろうか。

少しでも反応を見せてくれるだろうか。

考えれば考えるほどに暗く、沈んでいく思考の数々。

 

少しでも、反応してくれるのなら。

もし、興奮を煽りすぎてしまうのだったら。

考えれば考えるほどに妄想し、そうはならないと思うような行動が浮かんで消える。

 

でも――――もし、それを望んでくれるのなら。

そうなってくれるのならば、永久の幸福を望めるのならば。

あの時と同じように……私の意思と、彼の意思を交換し合いたい。

 

どれ程に想い。

どれ程に焦がれ。

どれ程に救われたのか。

 

その事を口にするには……未だ、早いから。

 

持ち込んでいた、幾つかの着替えを袋に纏めながら。

手に吊るし、扉を開き。

お待たせ、と口にして。

 

――――珍しく。

ぽかん、と思考が固まったように戸惑っている彼の顔と。

少しずつ顔が朱に染まっていく光景に。

ほんの僅かに、幸福を思い浮かべた。

他メンバーもメイン回でこういうの欲しい?

  • よこせ
  • いらん
  • 全員やれ……!
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