葦原天理は巫覡である 作:氷桜
・ゲームに逃げる→朝起きられない、が昔。
・それに加えて純粋に低血圧気味、という追加。
「おはよー!」
がちゃり、と扉を開けて元気そうな顔を覗かせる。
その手には制服が詰められた袋と教科書類が纏まった鞄が伺え。
同時に運動着姿が眩しい友奈の姿。
「……おう。 朝から騒がしいな」
ふぁぁ、と欠伸混じりに返事を返し。
一度上がれ、といつも通りに手招きをすれば。
いい加減慣れた様子で上……居間へと足を進め始めた。
たった数日の『夫婦』生活。
それを終えてからの平日が始まり。
けれど。
今までと同じ日常……とは言えない日常が再びに始まっていた。
「……まあ、友奈ちゃんですものね」
「…………サンチョ、が、ななひき~?」
ぴんぽん、と玄関先のチャイムが鳴るのは朝の
その頃には全員が起きていて、準備を済ませているからまだしも。
普通の家に対して行えば迷惑千万な行為、と言い切って良いだけの蛮行。
そして、そんな時間帯にも関わらず半ば当然のように居間に居座る来客二人。
何方も共にやってきたのは十数分程前。
ただ、片方は立ったまま寝ている……まあいつものこと。
……美森ちゃんは兎も角としても、そのちゃんは部屋用意したほうが楽な気がするよなぁ。
確実に家の中を侵食され始めている。 拡大してる。
「ほら、そのっち。 時間よ」
「……わっしーが、ごにん?」
「未だ夢見てるわね……」
ため息混じりに面倒を見ている姿に、何処か懐かしさを覚える。
小学校の頃、唐突に眠った時もこんな感じだった。
(……今日は速さ重視にしてみるかなぁ)
実際、こうして集まっているのは他でもない。
放課後、という時間が部活で取れない以上。
実体……つまりは勇者になるより前の
肉体を鍛えられるそれなりに取れる時間が朝くらいしか無かった、というだけ。
そして、そもそも何をするのかと言えば……。
放課後の僅かな時間を応用、つまりは受け身なんかの直ぐに応戦出来る体勢に身体を戻す訓練とすれば。
基礎の基礎、体力や腕力……或いは敏捷力と言った陸上部系の鍛錬。
要するに俺が毎朝やっていたランニング、或いは負荷を掛けた短距離走。
その行動に全員が名乗り出、参加することにした……と言うだけの話。
初代勇者達も、今頃はアパートの周りを走っている筈。
そこで訓練後に朝食、少し休憩してそのまま学校へ出る流れ。
せんちゃん曰く『昔も此処までやらなかったけど』とか言っていたが。
実際に動き出した後なら兎も角、それより前なら目を誤魔化すこともまだ出来る。
夏休みに入る前には先生達にも会う約束を取り付けたし、今はそういうものとして実行するだけ。
ただ――――。
「……千景さん、また寝坊?」
「せんちゃん、朝には少しだけ強くなったんだけどなぁ」
そんな中での最年長。
そして実戦経験が一番豊富な面々の一人であるせんちゃんの弱点の一つ。
朝に弱い、というのは毎度の如くに発揮されていて。
こうして全員で揃い始めて数日ではあるが、毎度最後に顔を見せるのが固定化され始めていた。
「……起こしに行ってきたら?」
「そうするかぁ……悪い、ちょっと見てくる。
最悪は三人で先出てくれ」
えー、とか。
待ってるわよ、とか。
否定する声色が二重奏と、その声に慌てて起きる一人の反応に苦笑い。
ただ、こうして早起きさせた上で待たせているのも悪い。
それに……明らかに普段よりも遅いからこそ。
そんな文句に背を向けて、早め早めに行動しようと動き出す。
いつもなら目を擦りながら、半ば銀に引き摺られるようにしつつも顔を覗かせているはず。
何より、
肩を貸すなり何なりしないと遅くなるのも明白だし、彼女の部屋へと足を向ける。
(寝惚けてるなり何なりしてるだけだとは思うが……)
それなりの頻度、隣で寝る事があったから予想は出来てる。
朝に弱い、と言っても理由は幾らかあるが。
せんちゃんの場合の弱さは極端な低血圧……要するに起き上がるまでに時間が異様に掛かるタイプ。
夜が遅い、というもう一つの理由も見え隠れはしていたが……今となってはそれも薄れている。
だからこそ……。
『…………!』
『…………』
部屋に近付けば、扉越しにくぐもった声色が耳に届く。
片方は何か強く言っているようで。
もう片方は死んだような低い声……恐らくは頭痛とかそれに近い何かに飲まれた声。
(まぁ想定通り……かな?)
軽いノックを経て、特に返事を待つこともなく扉を開ける。
それだけで何か騒いでいる声と、もう一つの声の理由が目に入ってくる。
「千景さーん、アタシまで動けないんだけどー!?」
「……まだ、大丈夫じゃない……?」
起こそうとして引き込まれたのか。
ついでに言えば無理に動けない、というのも在るのか。
同じ寝具の上で抱え込まれるようにして、力を抜いて捕まっている銀。
抱き抱えるようにしながら、死人のような声を出しているせんちゃん。
恐らく、銀本来の力が出せるのならとっくに振り払えているであろう現状。
多分同様に、せんちゃんも正しく認識できてない。
目が正しく開けてないし、何処かうとうとしている雰囲気がある。
隣で寝ていた時、寝惚けていた光景そのもの。
そして同時に、
(前は
その根幹は俺がどう足掻いても手出し出来ない過去の話。
既にその名すら残っていないという、嘗ての故郷で起こっていた当時の話。
それ自体を、俺はあの場所で耳にして。
それなりの時間が経過はしたけれど……恐らくは生きている限り付き纏う呪い。
多少は覆い被せても、蔓延る黴のようにしつこく張り付き続けるモノ。
だからこそ、少しでも幸福な思い出を持てるようにしてきたつもりだが。
その結果がこれとなると……正しかったのかちょっと悩むな。
「天理ぃ、千景さん何とかしてくれよー」
そして、俺が顔を見せたのを救いの手とでも見たのか。
顔だけをもぞもぞと動かして此方を強く見る。
見方を変えれば……睨んでいるようにも見えなくはないが。
まあそうなってしまう理由は分かるし、気にしない。
「いやまぁ、その為に俺も来たんだけど……。
もう皆揃ってるし」
「あ、やっぱりそんな時間!?」
体勢的に時計は見られない感じか。
もし今の時間とかが分かってるなら無理にでも起こしてた筈。
ついでに言えば、どんどん時間が減っているのも間違いではない。
(あー……仕方ないかなぁ)
取り敢えず三人は先に行かせることが前提になるし。
俺も今日の朝は丸潰れになる危険性があるから無理は出来ないんだが……。
やれるだけやるしかないか。
「銀、ちょっと無理にでも這い出てくれ。
んで三人に先に行くように伝えてくれると嬉しい」
「まぁ、そりゃやるけども。 向こうの機嫌後で取れよ?」
「取るよ……」
負担ばっかりが丸投げされてる気がするが致し方なし。
年上とは言え、男子と女子。
それも相手は寝惚けている状態なら何とか片腕くらいは外せないこともない。
腕を痛めないように気をつけながら持ち上げ、引きずり出して。
その分近付いた彼女の耳に小さく囁く。
「……朝だよ」
――――何が理由なのかは良くわからないが。
俺の声自体は昔からずっと聞いている、というのもあってか。
うつらうつらしていても、きちんと耳に届くものらしい。
銀も最近はその分類に放り込まれているはずなのだが……。
今日はそれより一歩状況が酷かった、と言ったところか。
んぅ、とか呟く言葉と同時に片目が薄く開く。
壁沿いに手を当て、そっと部屋を立ち去っていく銀を横目に。
きちんと目が開くまで。
「……まーくん?」
「おはよ、せんちゃん」
互いのことが正しく理解できるまでの、僅かな間。
互いの吐息が届く距離感で、唯その時を待っていた。
・原作を見る範囲だと『勇者服でない時』の力自体は然程影響してない?ようにも見えます。
(のわゆ小説・アニメを追う限り技量を重視して基礎体力云々は二の次の印象。
おしながきとかでは走ったりしてるので全くやってないってことは無さそう?)
・ただ、この小説では『器としての才覚』×『生身での体力』で増幅する部分があるものとしています。
・力の供給元は同じでも、変換器を通していることに寄る変質とでも思ってください。
他メンバーもメイン回でこういうの欲しい?
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よこせ
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いらん
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全員やれ……!