葦原天理は巫覡である 作:氷桜
前の話で奇妙な顔をされていた理由とかです。
朝食を終え。
私達を残し、各々の学校へと向かうのを見送った後。
時計の時間……学校が始まる始業の時間であることを確認し。
「ひなた」
普段であれば、ほんの僅かな休息の時間。
各々が自分のやるべきこと、やりたいことを見つける日々の合間の安らぎ。
けれど、今日ばかりはそう言っている余裕は欠片もなく。
当然のように、私との考えを共有している筈の……隣に座る幼馴染へ声を投げ掛けた。
「杏さんと珠子さんには声を掛けてあります」
ことり、と卓袱台の上に置かれた個人用の湯飲み茶碗。
以前に杏が購入してきたマグカップとはまた違う……もっと簡素な出来のもの。
けれど、事更にひなたが大事に扱い。
そして私も同じように大事に扱う、彼から贈られた物品。
湯気が立ち上るその先を視界に捉えながら。
返る答えは、想定していた通り。
……少なくとも、私とひなたは
「流石だな」
「いえ……お二人も近い何かを感じていたようで。
私が伝える前から、分かっていたようでしたよ」
急須が二つ、私達側と合い向かい側。
それなりに長くなるであろうことを見込んでの準備。
……背中の傍に置き、常にそうすることが癖になっている私の神具。
触れることで、少しだけ落ち着けるような気がするのは……多分、既に癖になっているからなのか。
『乃木』としての名を背負っていたあの頃であれば――――こんな事を思うことも、無かったのに。
「悪い、待たせた!」
「す、すいません。 ちょっと探しものをしていて……」
二人が姿を現したのは、そんなお茶から湯気が掻き消える程の時間が経ってから。
謝罪の言葉と合わせて駆け込んできた二人……特に杏の手には一冊の冊子が握られている。
「杏さん、それは?」
「以前に、天理さん……それと友奈さんに国土さん。
彼女達と向かった、神樹様の持つ領域に関して書き記したものです」
他のノートに埋もれていて……と理由を告げるその手の内側へ目が向いた。
『考察⑯』とか書かれているのが見え……それだけ、杏も真剣に考えているのが伺える。
「しかしおっタマげたぞ。 気付いたらあんずの部屋、資料だらけで埋まりそうになってるんだ」
「きちんと整理はしてるよ!?」
ただ、色々調べていた時に別のに埋もれてしまっていた、と。
言い訳にも説明にも聞こえる言動に、微かな笑みと苦笑いが混ざった表情が浮かぶ。
……隣のひなたの顔を見るのが妙に怖い。
「杏さん。
「分かってます、この話が終わったらですけど」
太い釘刺し、そして当然それを受け入れる会話。
……杏の
片付いていない状態こそが異常だった、と分かるものではあるのだが。
今の二人の事を考えれば、その異常が平常になっていても仕方ないと思えてしまう部分もある。
そして――――当然、それは私自身にも言えることだから。
更に一度強く言い聞かせ、精神を落ち着かせてから言葉を発する。
「念の為聞くが。 何故呼んだのかは分かっているか?」
前提の確認。
それに頷きながら、それもあったから資料を探したのだと杏は告げた。
「今朝の……王子様、天理さんの背負っていたものですよね?」
「何事かと思ったぞ、アレ」
恐らく、隣にいた千景は気付かなかった。
いや、気付けなかったと言ったほうが正しいのか。
私達が遅れてやってきた二人を見た時。
特に天理……彼の背後から感じた妙な、それでいて負の感情の集まりのような圧力。
何処かバーテックスの進化体、私達では対抗できずに被害を出したアレのような雰囲気を漂わせた何か。
それに周囲を、身体を覆われながら現れた時。
私は、顔を取り繕うのに失敗したと自分でもはっきり認識していた。
そして、同じ感じを受けたのは恐らく千景を除いた嘗ての勇者達全員も同じであり。
私の子孫……と定義して良いのか未だに悩んではいるのだが、園子達も似たような表情を浮かべていた筈だ。
気付いていなかったのは、結城と樹。 平然と普通に対応した二人のみ。
そして、真っ先に取り繕い……彼の周囲を抑えるように囲んだのがひなたと銀だった。
だからこそ、同じものを受け取ったのだと理解していた部分は大きかったのだが。
改めて確認する限り、全員が同じような受け取り方をしたということで間違いないらしい。
「ひなた……分かる範囲でいいが、アレは何だと思う」
ただ、直感的に分かったことがある。
背負っていたものは、私とひなたが繋がる神に関係するものであると。
その影響を背負いつつに、一見平然として見える姿。
それだけ変質してしまっている、と見るべきか。
私の身を捧げる程度で済むだろうか、と年頃の娘らしい妙な発想が浮かんでしまう現状に絶望するべきか。
……少なくとも。
普通では思う筈もない事を思う程度には、私達は彼との繋がりによって影響を受けている。
それは――――杏や珠子も、園子や東郷、銀も。
そして、今の私達には見えない友奈へも。
「恐らくですが……神樹様の現状と、私達の敵との複合かと」
「……現状、と言うと。 荒御魂になっている、という話でしたけれど」
この辺りです、と冊子の中身の一部を指差す。
几帳面というか、女子らしいと言うか。
綺麗に整理されて書かれている一面に、確かにそのような記述が存在している。
「はい。 天理さんも言っていましたが……彼と今の神樹様の状態は対照、或いは対応しています。
それ程までに存在の一部が近付いた、と言うべきなのでしょうが……」
「
感情が振り回され、乱高下が目立つようになっている。
――――幸い、抑える方法自体は私達自身が実行出来ることではある」
つまり、巫女……或いは隣に立つ存在としての照応。
そう扱われることで、天理は代理としての権限を確保したのだから。
その逆、私達が干渉することでその影響力の拡縮自体は容易く行えるはずだ。
……問題は、
少しだけ浮かんだ内容に、顔を横に振って否定する。
「なら、ひなた。 タマ達の敵……って言うと、てんりに狙いを定めたってことか?」
「多分は以前と同じ……或いは彼を守護するワカ様の影響もあると思います。
其処まで強く干渉出来ないからこそ、軽い怪我で済んだ……と理解すべきかと」
結局、何処まで行っても推測に過ぎないのだが。
ただ、全員の認識が共通する以上――――それを祓う、距離を取らせる行動は取らせるべき。
つまりは神から引き離し……僅かにでも、猶予を作る。
以前の私への対応と似たような、時間稼ぎにしか成らない手段ではあるが。
夏休み、という次の予定がきちんと存在する以上は時間稼ぎこそが最良と言えなくもない。
……そうなると、だ。
「問題は、今の現状を当人に知らせるべきか?」
学校に通っている顔ぶれには後で確認するが。
今此処で、先に意見の統一を先行する。
「直ぐに気づくと思いますし、早めに告げるべきだと思います」
「タマもそれに賛成。 ただ、その後どうするかはちょっと悩むとこだけどなー」
「……そうですね、
――――ただ。
その中で、ほんの少しだけ言葉の方向性に違いを見せた杏。
全員の目線が彼女へ向かい。
同時に、小さく笑みを浮かべて言葉にする。
命を、心を、存在を救われたのだから、と。
そんな風に呟く、私達の中で最も低い学年の少女は。
何処か陶酔したような笑みを、その場で浮かべていた。
「そうでもしないと。 ……多分、私は後悔してしまいそうですから」
そんな、言葉と合わせながら。
「皆さんも、そうでしょう?」
神に見初められた勇者、という起源を持つ私達。
それらは、今の彼と同一視出来るモノと結び付くことで……繋がることで。
名を強く持っていた女神、という属性をも孕んでいる。
それに、影響されていないとは決して言えない。
強く揺り動かされている、とも決して言えない。
ただ。
「――――
何かを捧げられるのなら。
私達も、同じだけ捧げたい。
そう思う、少女としての一面の私がいることも……事実なのだから。
・杏の押しが妙に強くなる。
・ゆゆゆいでのわすゆ組への暴走含め、元気を取り戻したならある種暴走する側面が在るのは間違いないと思うの。
他メンバーもメイン回でこういうの欲しい?
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よこせ
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いらん
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全員やれ……!