葦原天理は巫覡である 作:氷桜
本来なら200話くらいで銀ちゃん回に重ねたかったけど上手く行かなかったでござる。
そのまま三人で向かったのはカラオケ。
丁度駅前辺りに位置し、図書館とアパートの中間地点辺りに位置するチェーン店。
学生でも会員証さえ作れば入れる、と学校で耳にしてはいたのだが。
実は行ったこと無い場所なので、少しだけ緊張しながらの道中だった。
「ぉ~」
「防音……ではあるんでしょうけど、多少は漏れるみたいですね」
ただ、同行した彼女達も状態は同じ。
と言うより、受付が高校生から大学生くらいの男性だったせいか。
二人を見る目と俺を見る目が少しだけ違った気がしたのだが……勘違いなのだろうか。
受付で予約したのは凡そ二時間。
終わる頃には外は真っ暗だろうし、そのまま送っていくのはほぼ確定。
……と言うか、何も言わなければそのちゃんは家まで付いてくる気がする。
今更だし、深く何かを言うつもりもないのだけれど。
「わっしー達には連絡も終わった~」
「念の為ひなたさんにも夕食は遅くなるかも、とは連絡しました」
うん、間違いなく付いてくるつもりだなこれ?
と言うか其処で銀やせんちゃんじゃなく
帰ったら当然のように台所を支配している気がする。
最近、少しずつ胃袋を支配される割合が増えてると思ってるところも合わさる。
将来考えたら家の全てを少女達が管理し、俺が手を出せる部分殆ど無くなるんじゃないだろうか。
……いや、それもある種の幸福な末路か。
考えるだけ無駄だし。
どう足掻こうともそうなる予感しかしなかったので……これ以上考えないことにする。
「……ま、折角来たんだ。 話だけで終わらせるのも勿体ない……よな?」
「終われば、ね?」
「あはは……」
入口で頼んだ飲み物が届き、店員が去ったのを確認した後。
端末を互いの間に置き、話し終えた後で……と改めて明言し。
聞きたかったことをもう一度口にする。
「で、杏さんや。 さっきの続きだけど」
「はい。 ……何度も言ってますけど、
「その内ね……」
多分、そう呼び捨てる時。
それは他の幾人かと同じように、終わりまでを共にする覚悟を決めた時。
もう少し、俺も……そして彼女達も。
互いのことを知った上で、と思ってしまうのは我儘なんだろうけど。
何しろ、そう呼ぶ覚悟自体は出来ている。
必要なものを、出来事を、思い出を重ねた後に……なんて漠然的に思いながら。
「てんくん、あんずんも。 私にも分かりやすく教えてくれると嬉しいな~?」
「分かってるよ。 ……先ず、そもそもの話なんだけど。
初代勇者達が眠ってた結界、って物自体がおかしいのは分かるよね?」
「うん。 有り得ないモノなんだろうなぁ、っていうのは分かる」
そもそもの話。
今の四国……特に神樹サマによって護られている土地の基礎は『奉火祭』に依って担保された。
この儀式自体は俺の今扱っている結界とも関係性を持ち。
そして樹海が構築された時、俺が囲んだ結界内だけは隔離されないのも似た原理を持つ。
つまり――――神としての格の差や強弱を別とするのなら。
何かを召喚する際、刻む召喚陣で召喚者を守るのも似た考え方。
明確に区切っているからこそ、そして上下を定めているからこそ安全性を担保しているわけだ。
翻って、彼女達が眠っていた結界。
明らかな異常点として真っ先に挙げるとすれば。
まず最初に
これは、生命力を捧げることで結界の内容を変異させた結果だからだろう。
神に対する捧げ物、という意味では納得しやすい事。
次に内外での時間経過差が明確に異常……つまり、
これ自体もまた――――と無理に納得すること自体は出来るとしてだ。
「問題は、この技術の大元って神様由来ってとこで。
初代勇者達が現役で活動してた当時。
それだけ密接に話を聞けた勇者や巫女はいなかっただろうってとこ」
少し長くなってはいるが、前提知識を踏まえた上での話。
ワカやヒメから習った基礎知識、そして俺自身の認識。
特に小説を好むそのちゃんだからこそ、こういった知識も抵抗なく受け入れてくれる。
「それは……想像じゃなくて~?」
「ほぼ確信」
一応理由もある。
と言うよりも、当人たちの状況などから察した……という方が正しい気もする。
「神に近づけば、或いは神に認められれば神具が発揮する力は強大になる。
でも、聞く限り手段自体は『切り札』での自身を汚染しながらの撃退だったらしいし。
多分、神から聞いてる範囲はそう多くはないと思うよ」
参考にしたのが今の結界……というのも考え難い。
生贄を捧げることで強大化した、という犠牲を伴う手段の前段階。
恐らく然程強いモノでもなく、何かがあった時に樹海化を及ぼす程度のモノだったと推測してる。
これは俺自身が今変わって行っている部分からの推測も含む。
其処まで万能でもなく、寧ろ副作用やら不具合、対応できない幅のほうが広いからなぁ……。
「だからこそ、何を参考にしたのかを知りたい……と思ってたんだけど」
少し話しすぎて喉が乾いた。
多少溶けた氷が浮かぶオレンジジュースを飲みつつに。
苦笑いと、それと同じくらいに尊敬に似た何かを受けこそばゆさが浮かぶ。
「……王子様がいれば、少しは変わったのかもしれませんね」
「いや、無理だったと思うよ……。
ワカやヒメがやる気になったのも、せんちゃん絡みがあってからだって言ってたし」
俺が今こうしていられる最初も、その二柱に見初められたから。
色々なものから力を借りて、それを還元し……変換すること。
それが今の俺の役割で、これから先の運命でもある。
それで――――と、問えば。
はい、と小さく頷き。
「詳しい場所であったり、細かい方法は分かりません。
それらはひなたさんが回収し、大赦に吸収される前に念の為身に付けたらしいので」
先程と同じ前置きをした上で、少しずつ語り始める。
「四国……私達とはまた別の場所。
長野は諏訪、建御名方命様の加護を借りた勇者。
白鳥歌野さんと、その巫女である藤森水都さん」
恐らく、欠けた情報を握る勇者。
逆から遡り、ついに指を掛ける寸前まで行き着いた誰か。
「
知識、儀式の根幹を知る存在。
その名前を。
今、初めて耳にした。
・神樹サマとは別方向性の神から力を借りた勇者と巫女。
・北海道と沖縄にもいますが神事、という意味合いと主人公が持つ知識・技術的な側面からするとかなり大事な存在として設定しています。
・元々国譲りの神話由来ですからね、奉火祭の儀式。