葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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見たいシーンがあったら感想etcで言って貰えればその内書きます。


幕間2-53

 

――――それからの数日間は、嵐の前の静けさと言うやつだったのかもしれない。

 

例えば。

三人で行ったカラオケを羨み、近いうちに再び行くことを約束させられたり。

 

例えば。

部活動の一環として行う応援の際の格好を準備した、というので。

妙に露出が激しい格好(チアガール)に着替えた風先輩と友奈へ感想を望まれたり。

 

尚、上下を何度か往復した上で本心を告げたら。

顔を真赤にした上で身体を覆い隠して着替えに戻ったので、首を捻ることになり。

それを横で見ていた、残りの面々の良い笑顔に取り囲まれることになったもした。

 

彼女達の同じ格好を見たいかどうかで言えば当然見たいが。

夏休みに約束させられる程だったのか、其処までは女心が読めなかった。

 

例えば。

気付けば最低でも週に一度くらいのペースで開かれる、集合しての食事会じみたモノだったり。

 

前回は室内だったが、今回は誰が用意したのか幾つかの辛さに分けられたカレー大会。

……俺は直接現場を見たわけじゃないのだが、樹ちゃんが凄い色の物質を作ったとか聞いた。

一念発起して真剣に料理を学び始めたらしいので……まぁ、良いことなのか?

 

そんな幾つかの出来事が凝縮され。

自然と笑みが浮かぶようになり始めていた、週末のとある日。

六月末に当たる休日。

 

「……やっぱり高く感じるんだよなぁ」

 

余り大声を出すような内容ではない、と分かっていても。

人生経験上、一杯500円(ワンコイン)を超える珈琲を頼むような店には縁遠く。

店員が距離を取っている今だからこそ、若干愚痴のように言葉を零す。

 

「慣れないと駄目よ?」

 

ことん、と。

風貌だけを見れば高貴な令嬢にも見えなくはない、黒髪の少女。

外出用に着込んだ服装は初夏を彩るような、薄い青に染めた軽そうな服装。

ただ、その手元の飲み物が珈琲で……そして少しばかり()()()なのは見る人が見れば分かる。

 

飲み物の趣味で言うなら、俺と彼女はほぼ同じで。

だからこそ……不機嫌なのは同じ感想を抱いた結果なのかもしれない。

 

「緑茶以外は飲めれば良くない? ……とか言ったら怒るよね」

 

「最近聞かなくなったけど……未だにその緑茶至上主義見え隠れさせてるよなぁ、天理」

 

聞き慣れた、機械の微かに軋む音に呆れる声。

木製のお高そうな椅子を態々退かして貰い、代わりに其処に滑り込む形になった銀。

 

但し、その格好は以前の小学校の頃の男らしさとはまた別方向。

()()()()が好きに着せ替えた結果、女子らしさを彼方此方に目立たせつつも動きやすいパンツ姿。

スカート姿だけは全力で拒否していたが、俺とせんちゃんは知っている。

箪笥の奥の奥に仕舞われ、そして同居する三人のみの時には着ることもあるスカートの存在を。

 

「わっしーよりも、其処だけは過剰なんだよねぇ……」

 

「何だ急に」

 

そしてその一人。

ついでに言えば、この雰囲気の良さそうな喫茶店を選び勧めた張本人。

何も言わないか……或いは取り繕っていれば物語に出てくるお姫様にも見えるのかもしれない。

 

事実、この閉じられた空間の中では一二を争うくらいにはお姫様の資格を持ってるそのちゃん。

そんな少女も含め、呆れ顔を浮かべられてしまうと此方も困る。

 

「実際好き嫌いがあるくらいは良いだろ?」

 

「でもてんくん、お茶だったら結構無駄遣いしそう」

 

「無駄とは何だ無駄とは」

 

そもそも作ってる場所が狭いから良いものは高くなるんだよ。

それは紅茶とか珈琲とかの嗜好品なら何でも同じだって分かってて言ってるんだろうか。

最高級品は流石に手を伸ばすのは控えてるんだし、ちょっとくらいの贅沢なら良いじゃないか……!

 

「園子、天理が凄い物申したそうな顔してるが」

 

「言いたいことは大体分かるし~……?」

 

「多分、私と同じようなこと考えてるんでしょうね」

 

ジトッとした目線を三人へ向ける。

 

一人はヒソヒソと相談事を隣に回し。

一人は軽く受け流すようにしつつ微笑み。

一人は深く、深く同意するように頷いている。

 

そんな三人娘は、どうしても目立ってしまう。

 

ついさっき、町中を歩いている時。

通りすがりの幾人かに目を向けられたりもした。

三人が三人とも、余所行きの一張羅とも言える服装なのに対し。

一人だけ、しかも男が殆ど見ない和装だというのもあるんだと思う。

 

一応これ、正式な場所にも着ていけるような素材の和服なのだが。

普段の呉服ではなく、一式揃えた格好はどうしても目立つ。

但しそれは目を引く、と言うよりは物珍しさの方が絶対に強いはずだ。

 

(とは言え、洋服はあんまり肌に合わないからなぁ)

 

制服にはいい加減慣れたし、学校関係の格好は着慣れてきている。

ただ、私服となると適当なもの……或いは和式じゃないと合わなくなってきているのは何故か。

汚染か何かなんだろうか。

 

()()()()()()()()()も何か言いたげに肩を揺らしている。

 

……まあ、あまり深く考える余裕があるわけでもないか。

特に、今日の目的を考えれば。

 

そんな事を思いながら、妙に苦い黒の液体を口に含んでいれば。

からんからん、と入口に設けられていた鈴が鳴り来客を示す。

 

いらっしゃいませ、と店員達が声を掛ける中。

続いて顔を見せた、世話になっている人と目が合いそのまま目礼を返し。

そして――――三人目として付いてきた一人に、自身の目を疑う。

 

「…………ん~?」

 

「あ、先生だ」

 

知り合いがいたので、と口にして此方に向かってくる足取りは確か。

そしてその顔は面白がる……と言うよりは極めて真面目な方が強い。

集まった口実が口実だけに、少しくらいは気を抜くと思っていたのだけど。

 

「や」

 

「どうも」

 

青年……ある意味で尊敬の心を持ち続けている相手、三好さん。

女性……三人の元担任であり、未だに俺も世話になり続ける人、安芸先生。

 

そして、もう一人。

本来此処に出てこれる筈もなく、付いてきていることから何から……。

全てが違和感に包まれる、良く顔を知る年下の少女。

 

「……で。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

巫女を大赦から連れ出した。

それが、どういう意味合いを持つか知らない人ではないだろうに。

 

――――それに対する返答(かおいろ)は。

苦々しく、どうしようも出来ないとでも言いたそうな大人の悲痛が混じって見えた。

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