葦原天理は巫覡である 作:氷桜
今回の目的。
それ自体は大赦側に属する二人との話し合いであり。
同時に、現状次第では此方の手札を幾らか公開すること。
唯、現状で考えた場合の話。
先代勇者達はお偉いさん達に
だからこそ、仲が良い事を何よりも知る大赦側の目を微かにでも逸らす事を目的に。
四人での
知り合いであったのだから少し話をした、という形を作ろうと話していたのだが。
「あ、席隣でお願いできますか?
はい、知り合いで」
「何を頼みますか?」
「……悩みます。 こういった場所来ると思っていなかったので」
いや、まぁ。
七割から八割は言っていた通りに進みはしたけれど。
その残りの部分が明らかにおかしいと思う。
三好さんを見て少しだけ浮かれている様子の店員に頼み。
取り敢えず、と三人分の飲み物を頼んだ上。
立ち去ったのを確認して席を向き直し、会話ができるように体勢を整えて。
「先ずはすまなかった、当初の予定より遅れていただろう?」
年上で、目上の相手に頭を下げられると当初の気炎も薄れてしまう。
それに加え、彼・彼女自身と顔を直接会わせたことのない銀なんかは顔を作ってる。
警戒している、というのもあるんだろうが……その視線は強めに亜耶に向き。
逆に彼女は首を傾げ、俺の隣に座る少女達を見つめていた。
「大雑把にしか予定立てられないのは分かってますんで。
今日の時間だってかなり無理して開けてるんでしょう?」
「まぁ、久々の休日……を兼ねてるのは事実かな」
その日程で先生と行動してるのか、と煽るにはちょっとばかり品がない。
ついでに言えばそんな事を言い出すような隙もない。
実際問題、この二人がいい感じに動き出しているのは
その為だけに行動してる、という状況を目視出来ていないのは大人と子供の行動範囲の差だろうか。
「無駄話、とは思いませんけども。
……もう一回聞きますけど、亜耶が此処にいるのと今回持ってきた話。
「察しが良いのも困りものだよねえ……」
「春信さん~。 てんくんは全く察し良くないからあんまり持ち上げないであげてね~?」
そういうものですか。
そういうものだよ~。
同じ言葉を繰り返される訳だが、その言動……俺ひょっとして馬鹿にされてない?
ジトッとした目で二人を見るが、此方へは一向に目線も話も向けやしない。
視線に気付いてない、なんてこともあるまいに。
視線の先を亜耶に向ければ、どこかワクワクとした表情は隠せていない。
そんな当たり前にも思える光景に違和感が浮かぶ、異常な世界。
それが今の大赦を取り囲む世界であり、今の四国の裏面とも言える状況だった。
「……三好さんは役に立たない。 亜耶、なんで?」
「……あの、えっと。 お祖父様の体調が思わしくなくて、入院されまして」
本来、そんな状況であっても出られる場所ではない。
それを覚悟して入るのが巫女という能力を持ったものの末路であり。
彼女と知り合った後に知った、『国土』という家の人間であれば知っている筈の話なのだが。
「国土様は大赦に長年貢献為された方です。
故に、若干の特例としてですが――――今回の許可が降りた節があります」
そんな風に横から言葉を拾い。
付け加えるように、表情を作るようにした安芸先生。
以前の……三人の担任だった頃は
それでも、目元が緩んでいるような気がするのはきっと気の所為ではないのだろう。
「安芸先生……そんな簡単に許可が降りる場所ではないですよね?」
「うん。 アタシのときの事を考えても、そんな簡単に話が進むはずがない」
そして、そんな上辺の理由に納得する筈もないのは誰も同じ。
聞き返す前に二人が口にした言葉は、少なくとも中学生が持ち出す内容としては重く。
「まあ、其処は皆さんも良く理解為されているところですか」
「春信さん」
「良いから。 ……御察しの通りです」
眼の前でいちゃつかないで欲しい、と茶化す雰囲気でもないし。
俺自身が言えることでもないので押し流し。
雑談混じりより、先に要件を済ませてしまいたいという雰囲気をありありと残しながら。
話を引き継ぎ……二人で共に同じ話を続けていく。
「事実、国土様が体調不良で入院為されているのは間違い有りません。
つい先程まで、その病院への送り迎えを担当しましたので」
「ですが……」
先生が少しだけ口ごもり。
それに合わせ、亜耶の視線も落ちたのは見逃さずに。
「こうして外に、という話になったのは……。
一部派閥が強引に推している、とある方向性が固まりつつ有り。
そして、それに付き従う巫女として国土様が選ばれる可能性が極めて高いからです」
「……方向性?」
とある派閥、というのは――――以前に話から聞いていた。
そして当神も知っている、たかしーを利用しようとする……神に近付こうとする派閥だろうか。
神樹サマを信仰しすぎる余り。
絶対視し、他の手段よりも神の身許に近付く事を望む集団。
それがどういう末路を招くのか、知りながらも視界にさえ入れることのない派閥。
「そして、それは……役割を担うことになるであろう貴女方にも無関係では有りません」
少しだけ。
勇者に接する神官ではなく、生徒に接する先生の雰囲気を残しながら。
「……先生?」
「乃木さん」
――――
直接口に出すのは難しく。
紙に残す事自体も極めて危険で。
故に、お互いにだけ分かる言葉でそれとなく察しさせることが限度だったと分かる言葉。
ただ、それは。
大赦側が持っていない、或いは敢えて見ていない視点を俺が持つからなのだろうか。
・原作よりも『早まる』ってのがどんだけ無茶苦茶なのか、という前フリ。