葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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わすゆ本編の年開始。
多大な独自設定の開幕。


カンパニュラ/鷲尾須美は勇者である・急
急-1


 

神世紀298年。

俺達にとって、小学校最後の年。

 

そして、彼女達三人にとっては『お役目』の年であり。

俺にとっては、ワカとヒメと結んだ約束の始まりの年。

 

『さて――――天理よ。 幾度も繰り返した故、分かっていると思うが』

 

学期の始まり月。

心地よい小春日和の中に、時折寒気の残滓が残った日。

例の人形から更に一回り小さい、編み人形のような中へと移ったワカとヒメ。

 

学校にも、それ以外にも持ち込める形としてこれが今の精一杯で。

同時に感情表現を容易とする、人の形代としてはこれが最適でもあった。

 

(分かってる。 ……俺のやるべきことも、したいことも)

 

通学路、背負ったランドセルの奥底で眠りながら。

目と耳を俺と同期した二人は、見るもの聞くものを全くの同一としている。

本来はこれを『御魂降ろし』とか『神降ろし』、『()()()()()』とか言うらしいが。

肉体的にも精神的にも、一切の負担が発生していないのは恐らく幾つかの特異性のせいだろう。

 

『……随分と立派な男子ぶりをみせるようになりましたね』

『まだまだだろう。 好意と友情を同一視しているだけではないか?』

(うるせえ)

 

昨年よりも更に、叔父叔母と会う機会は減っていた。

恐らくそれは、彼女達のお役目が始まったことと無関係ではないはず。

冷蔵庫の中身は常に更新されているし、用件があればテーブルの上に紙を置いてやり取りも出来る。

ただ、顔を合わせることと……会話することは、もうこの一月ほどした覚えもなかった。

 

(大体三人を三人とも好きで何が悪いんだよ)

『お前は良くても相手がどう思うかの問題だが』

『一昔前なら甲斐性、などとも言ったのでしょうが』

 

…………あー。

 

「それ、どんだけ昔だよ」

『はて。 少なくとも三百年よりも前であるのは確かですよ』

 

ついつい言葉として出た問い。

平然と返ってくるから時間間隔が狂ってるのが良く分かる。

 

(……ああそう)

 

呆れ口調で思考での会話に戻せば。

くすくす、と笑い声が脳内に響いて余計に怒りが増す。

何がおかしいっていうんだ畜生。

 

『話を戻すぞ?』

(……頼む。 今日のヒメは色々おかしいらしい)

『よくあることだ。 分かっているとは思うが、お主では()()()()()()()()()()()()()()

 

だろうな、と小さく頷く。

技術として、二人の力を借りることで実現できる『結界』は他の神からの干渉を一時的に防ぐ。

そして『お役目』……四国の外から来る怪物、バーテックスの襲撃の際。

神樹は世界への影響を防ぐため、一時的に『樹海』と呼ばれる己の結界で世界を覆うらしい。

 

その間、神樹から選ばれた勇者を除く一般人は全て樹海に呑まれる。

端的に言ってしまうのなら。

一時的に時間が止まっているような感覚になる、というのが三人からの説明だった。

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

一度でも自分で張った結界越しに感じれば、前兆くらいは感じられるようになるかもしれないが。

 

(だから、その最初の対応は二人に完全に頼る……って話だったよな)

『うむ。 無論、どうしようもない場合……授業の途中などでは厳しいだろうが』

 

勇者三人を除いて、二人のことを知る人物はいない。

逆に言うならば、信用しきれるか分からない相手……大赦の人間には誰にも気付かれていない。

これは利点でもあり、同時に欠点でもある。

ある程度は自由に動ける反面、何かが起こった際に詰問されるのは目に見えているから。

 

(将来的にはバレるにしても、その前に調べることは調べておきたいよな)

『ああ。 神樹について調べられる機会はほぼ無いだろうからな』

 

そして、それだけの危険を犯しても知っておきたいこと。

それは二人の目的でもあり、引いては俺の目的でもあること。

外敵を打ち払う為に、現状の神樹の状態を知る』事。

 

何しろ、二人が知っているとは言え三百年前。

当時から何かを仕込んでいるらしいのは何となく察してはいるが、それでもたったの二柱。

土地神、地の神の集合体……。

関係者も大多数いるらしい、純化したそれの事を把握しておきたいとのこと。

 

『予想している部分もなくはないのだが』

(何でも良いよ。 俺は、俺の為に動くだけだから)

 

 

十五夜の後。

全員にそれぞれ問い掛けた。

 

「何の為に、勇者として戦うんだ?」

 

一人は言った。

 

「家族の為……かな。 銀様の弟としてこき使うために、今は護ってやらなきゃ」

 

一人は言った。

 

「鷲尾のお父さんお母さん。 ……後は、選ばれなかった皆さんの為に」

 

一人は言った。

 

「ご先祖様からずっと伝わってる言葉もあるし~……。

 私は、私のためかなぁ」

 

そして、全員が付け加えるように言った。

 

『アタシ/私が戦えば。 天理/天理くん/てんくんを護れるから』

 

三者三様の、華のような笑みを浮かべて。

見惚れるような、輝きを以て。

 

だから、俺は誓った。

 

『三人が、三人のままでいられるように。』

 

俺みたいな、どっちつかずの人間なんて最悪はどうなってもいい。

――――その笑みを持ったまま、生きて欲しい。

 

そんな傲慢な、願い事を。




変更点:
・三人の戦う理由に多大な変化。

・樹海の内部調査を決行予定。
・実行理由は『神樹の現状調査』。
・神だからこそ、相手を知るからこそ分かることもあるらしい。

・もし、自分が死んだらどんな精神的悪影響を与えるかに気付いていない。

「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と

  • そのっち
  • 銀ちゃん
  • わっしー
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