葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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長い、永い眠りに付いていた気がする。

 

周囲に広がっていく意識が再度収束し。

其れが再びに広がってはまた戻る。

水滴が地面に落ち、水溜りとなり。

波紋となって広がっては再びに水面と化す。

 

極自然な、と言うには不適応な例え方。

ただ、神樹サマと同一視する、と言う意味合いで考えた場合。

少なくとも、俺自身はそんな感じの受け取り方をしていたのだと想う。

 

多分、この場所自体が神樹サマの精神世界としての側面を持つからであり。

今の現状、俺が立っている位置と在り方の重複の結果であり。

つい先程、担う――――或いは預かる権限を認められてしまった神具の影響であり。

今の俺の現状。 眠り続けている、精神と肉体のバランスの比率の問題なのだろう。

 

(……肉体よりも、多分精神の比率のほうが強い世界だもんな)

 

だからこそ、外の時間と此処の時間のズレが生じる。

そして、ほんの僅かにでも介入する権限を得た今の状況。

たかしーが最初に言っていた猶予よりも数倍……或いは数十倍に引き延ばすことも出来るはずだ。

 

ある意味、それこそが神具の影響であり。

宿る神々の協力を得る事での報酬の一つであり。

進んでいる、と僅かながらも安堵できる基準の一つとして縋ることが出来るモノ。

 

目に見て分かる結果と、分からない結果。

やる気を出せるかどうかで言えば――――それはまぁ、言うまでもないはずなので。

 

(ま、今こうなってるのは()()()()()、って感じが大きいのかね)

 

何かが見えるわけでも、聞こえるわけでもない。

漂っている、というような感覚の中にいるだけなのに、不思議と不安も何も浮かばない。

 

少しずつ慣れてきているから……という面は確実にありつつも。

これもまた肌感覚に過ぎないのだけど、こうも長いのは……。

少なくとも俺一人であるなら、今回くらいだろうから、と。

そんな不可思議な予感があるのもまた不思議。

 

もしかすればこれが神樹サマから伝わる何かなんだろうか。

どうせだったらこう、もう少し。

みんなの役に立つことだったら良かったのに。

 

頭上を見上げ(るような気持ちになりつつ)。

はぁ、とため息を吐いた(ようなつもり)。

 

普段の――――以前に夢を通じて幾つかの出来事に介入した時。

あの時には、少なからず自分という認識と肉体という理解が在った。

今はその合間が希薄だからなのか。

それとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()か。

 

追求すればするほどに疑問が湧いて。

それこそ、誰に問えば良いのかさえも分からない自縄自縛に陥っていく。

 

(全てを知ろう、理解しようってのがまず無理ではあるけどなぁ)

 

その事を知りながらも、手を伸ばしてしまうのは。

後天的に変わってしまった俺の悪い点なんだろうなぁ、なんて。

遠い目をしながら、苦笑を浮かべたつもりだった。

 

――――ぴたり。

 

(え)

 

何かが、俺の顔に触れた気がした。

 

多分肉体の側の……額の辺りか。

其処に意識を向ければ、急に引っ張られるような感覚。

 

(え、え?)

 

向かう方向は、不思議と自分自身だと理解できた。

広がっていた自分自身が一点に凝縮し、更に付け加えるように何かが増えたような状態のまま。

引っ張られ、引き摺られ。

なにもない空間の中を漂うそれに、今更ながらに既視感に似たモノを覚えた。

 

いつだったか。

この世界に初めて訪れた時に感じたのと同じモノ。

 

自分で自分を導くような状況なのに、混乱と疑問が後から追いかけるように湧き出てて。

それを周囲から隠すように、自分なりの答えがそれを覆い隠していく。

 

「…………ん」

 

唐突に、自身の五感が元に戻ったような感覚。

思わず言葉を漏らしながら、額の上に感じるのは僅かな重みと冷たい何か。

目を瞑ったまま、其れに手を伸ばせば。

其処には冷えた布を何枚かに折ったような感触。

つまりは……熱冷ましの為に使われる氷嚢みたいなモノ、だろうか。

 

「大丈夫、ですか?」

 

いや、何でこんなものが。

そんな疑問に襲われていれば、すぐ枕元から見知った声がした。

薄く瞼を持ち上げ、そちらの方へと視線を向け。

色素が薄い、淡い色の髪が特徴的な少女の顔が視界に映る。

 

 

 

「いや……大丈夫。 少なくとも、今は」

 

……何となく。

彼女がいるような気はしていた。

 

以前にやってくる時に共に同行し。

そして、今回もまたそうであり。

夢を介した際には、ほぼ必ず何かしらの繋がりが生まれていた相手。

 

だからこそ。

その笑みに、少しだけ疲れが滲んでいるような気がしたのは。

多分、俺のせいなんだろうと。

普段の笑みと違う、そんな差異に気付けるくらいには――――仲良くなっていたのだ。

 

望むと望まぬとを、互いに選んだ結果として。

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