葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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中編。
過去と未来と、有り得ないはずの邂逅の章。


ストケシア/花結いの煌めき・中
中-1


 

夜想(あの)話の翌日、の翌日。

 

「……そんで、今日からはどうすんの?」

 

早朝、朝から食うにはちょっと多すぎるほどの饂飩を全員で食した後。

食休みと相談を兼ねての時間帯。

 

最初に口火を切ったのは、まぁある意味で代表の片割れ……風先輩だった。

 

「やるべきことは決まってるんですけど、それをするまでが大変なんですよねー……。

 それに色々しないといけないこともありますから、手分けも必要でしょうし」

 

「あー。 昨日高嶋ちゃんが言ってたアレのこと?」

 

「詳しく聞いてないんですけど多分それっすね」

 

()()()()後。

顔色が落ち着くのを待って目覚めたことを報告し、色々と面倒事が巻き起こった。

 

心配そうに顔を見に来る相手。

泣きそうになりながら、背骨を折る勢いで抱き着いてくる相手。

仕方ない、と言いつつも一向に離れようとしない相手。

 

それぞれの性格に応じた、と言えばまぁそうなのだが。

 

目敏く反応を示したのは、まぁ当然といえば当然のそのちゃん。

後は俺や友奈、親友達のことになると異様に見る目が細かくなる美森ちゃん。

ついでに言えば嗅覚……直感的に気付いたらしい銀やせんちゃん達もそうか。

 

全員と顔を合わせた後、立ち去った翌日の人気が無い時間帯。

関係性が他よりも深い――――近い相手達には()と一緒に説明をしたわけだが。

全員が口を揃えて「やっぱり」と言っていたのが不思議で。

寧ろその事の方に顔を引き攣らせる羽目になったのが俺達、というのはある種の喜劇だった。

 

その対応に追われ、そして同時に体調も完全に復帰できていなかったのも有り。

この周辺の探索やらなんやら、各々が各々したいことをしていた結果。

丸一日空いて、今日行動開始と相成った訳だ。

 

「たかしー、一応だけど意識のすり合わせだけして良いかな?」

 

「あ、うん!」

 

割と普通のかけうどん(朝食担当:風先輩とひなた)の入っていた器をちらちらと見る目線。

足りなかったのだろうか、と聞くにはちょっと不躾過ぎる。

 

意図して気付かなかったことにしつつ、話を促したのだが……。

そうするだけで、少しだけ嬉しそうにしているような気がするのは。

俺が彼女に気を遣い過ぎている故の、気の所為なんだろうか。

 

「前に俺達が来た時とは立場も人数も、目的も違う。

 つまりしなきゃいけないことも色々と変わるわけだけど」

 

「最初は……やっぱり、ご飯関係だよね?」

 

「前と変わってるよな、その辺りも」

 

うん、と頷く姿を見て確信する。

眠っている時に流し込まれた知識から、そうじゃないかとは思っていたが。

神樹サマ側にその身を置くたかしーがそういうのなら、間違いない。

 

「どういう事?」

 

疑問符を浮かべながら手を上げ質問してきた友奈。

そんな姿を横目で見ながら、小さく微笑んでくる姿に恐怖を覚えてしまう美森ちゃん。

そちらを出来る限り見ないようにしつつ、その疑問に付け加えて答えていく。

 

「前は神樹サマが身内側……と言うか味方側、になるのかな?

 協力してくれる側の立場として入ることになったから、色々と対応できた。

 それが、今では逆な立場ってこと」

 

敵味方が入れ替わっている。

半ば暴走を続ける相手を止めるためとは言え、不敬であることに変わりはなく。

ついでに言えば色々と不利な点もあるのだが……其れに対応する手段は無論ある。

 

「よーするにー……。

 普通にしてるだけじゃご飯も何も無いってことだよな?」

 

「タマったもんじゃないなぁ、そりゃあ」

 

簡潔に纏めつつ、親友からは目を逸らしつつ。

手足がある程度自由に動くようになった銀の言葉にタマ先輩が追従する。

 

ほぼ完調、但し神経系の傷という側面からか未だ反応が鈍いとか何とか。

動かしていけば何とでもなるとのことで、太刀……刀を扱う先人に教えを請い。

何でか師匠と弟子みたいな関係性が、若葉と銀の間に出来上がったとか何とか。

 

まぁ、体育会系……と言うよりは女戦士、女騎士系?

そんな雰囲気を持ってる相手に、銀が懐きやすかったってだけな気もするが。

 

「そうなると……修練の時間は少し削るべきか?

 対応する術はあるように、天理の言葉からは伺えたが」

 

その「お師匠様」、もう一人の代表である若葉さんの発言。

再びに視線が俺へと集中するのを感じながら、当座の予定を口にしていく。

 

詳細は他にも手を借りて決めることになるのは確実だが。

大目標、現在何が必要かという情報の知識を持つのが俺達しかいないから仕方ない。

 

「手が空いてる人……後は其れが得意な人とかは優先的に割り振ることになると思います。

 それと純粋に、調査範囲の拡大の方にも人手は割く必要がありますし」

 

「えっと……葦原先輩、それで何を?」

 

「あー、うん。 単純に言えば信仰度(ちめいど)稼ぎ。

 もうちょっと分かりやすく言うなら……勇者部の活動と同じ、かな」

 

土地を支配した、この辺りだからこそ有効な一手。

再現された、それでも『人』として形成された意識達に自分達の事を知らしめていく。

其の為の活動がボランティアに近い様々な手伝い、人の為になる行動。

 

其れ等を為すことで、その土地で出来ることが増えていく。

 

例えば俺だったら、ある程度の畑から収穫出来るモノの成長促進だったり。

巫女としての交信活動を通して、これから向かう先での試練のことを調べたり。

勇者としての活動を通して、色々な物品を手に入れるための販路を開拓したり。

自分達に出来ることを行うことで、更に先へと広がっていく活動の始まり。

 

「『戦略系』のゲームに近い……のかしらね」

 

「ですね、もう少し何が出来るかは聞き出したほうが良いかも知れません」

 

ぽつり、と漏らしたせんちゃん。

多分やり込み型っていうか近いものは絶対やってたことがある美森ちゃん。

周囲に助けを求めようと視線を巡らせ、逆に力の入った目線を返された。

 

幾つかの狩人のような目が光り。

その中の幾人かは未だ関係性に変化がない相手であるのだと理解して。

嬉しさの前に、恐怖が先立った。

 

……いやまぁ、致し方ないことなんだけども。

俺が寝込んでいる間に色々変わり過ぎじゃないか?

 

というか。

何人にバレてるんだ、これ。

 

視線を向けないようにしながら杏を見。

俺と同じような顔をしていることに気付いて。

諦めがてらに、こっそり溜息を吐いた。

 

天理、と。

逃げられない言葉が聞こえてきたから。

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