葦原天理は巫覡である 作:氷桜
ぺらり、ぺらり。
紙を一枚一枚捲り、気になることがあったら筆記・記述。
手元のメモ帳は意味があることと無いこと、両方で埋められている。
「ん~……」
その対面側。
流石に此処で携帯端末を開くのが不味いことは彼女も承知の上。
普段から持ち歩いているらしい、良く分からないメモ帳に何かを書いている。
市立図書館、その片隅。
この時間、珍しいことに他の来客の姿は見えず。
今、互いに向き合って調べ物。
(……流石に小学校よりは色々置いてあるもんだな)
学校を除き、こういった場所には余り近付いたことがない。
理由は単純、学生と教員以外の成人達が多く立ち寄る可能性がある場所だから。
けれど、俺が通うのは何処にでもある(というには新しめの)小学校。
置いてある本の種類や内容にも限りがあり、調べるにもその情報が無い始末。
念の為神樹館側を調べて貰ったそのちゃん曰く。
『此方も駄目~。 普通の本?はあるけど、専門書とかそういうのは無かったなぁ』
とのことで。
今こうして二人して、”偶然出会った”体で調べ物を進めている。
子供の浅知恵、と言ってしまえば其処までだけど。
少なくともそのちゃんの趣味がある以上。
俺はともかく、彼女の側は其処まで不審がられるような行動とは言い切れない筈。
『自己犠牲は好まれませんよ』
(仕方ないだろ、他に方法思いつかなかったんだし)
大赦の中に知り合いでもいれば別なんだろうけどな。
生憎そっち方面には一切繋がりもないし、諦めるしか無い。
(それよりも、だ)
手元の資料。
多分、其処に疑問を持って調べでもしない限り気付かないと思う違和感。
ふと気になった発端も、目の前の金髪の少女由来。
「そっちはどう?」
「ん~……”頑張りました”くらいしかないんよ~」
須美ちゃん経由で伝えた情報を調べる中。
何か物思いに耽るような、微かな憂いを込めた目をしながら。
多分、俺と二人になったからか漏れた……或いは
『そう言えば~……私達の家って、ずーっと昔から仲良かったんだよね~』
『……へ?』
『乃木と上里。 てんくんの家の本家……って言えば良いのかな?
ご先祖様達が大赦って形を整えたらしいんよ』
それ自体は聞いたことがある。
『でも、
その後のことは、弟さんか妹さんが引き継いだんだって』
『聞いたこと無いな……』
『まあ、合ってるかどうか分かんないお話だからね~』
聞いたこともない異説。
姿を消した初代達。
それは死、という隠語という意味だけではないはずで。
(――――そういや、父さん達が生きてた頃
そして、上里、という名前に違和感を覚えたのも確か。
口に出すこと自体気をつけていた、というか。
万全に万全を重ねて、絶対に言わないようにしていた、という感じの。
俺がその苗字を正しく聞いたのは、今の家……叔父と叔母の下に来てから。
仮に、家への……血への誇りがあるのなら何処かで聞いていただろうし。
二人……二柱から聞いた、言霊という文化を思い出す。
(……口にしてはいけない何かを引き継いでいた、とか?)
そんな、突拍子もない思い付き。
だからこそ遡り始めた、『神世紀になってからの歴史』。
乃木、上里、そして俺の『葦原』。
その記述を追い求めて、一般的に知られていることを先ず調べた所。
(200年くらい前……から西暦時代までに掛けて……
大赦に関して殆ど情報がないのはまあ良い。
そういう組織だし、寧ろ少しでも内容が記載されていたのに驚く位。
とは言っても、『神樹サマの対応・維持している』程度の記載ではあったが。
四国が閉じられている部分に関しては知っている常識通り。
ただ、その”ウイルス”と記載された部分には今では少し疑問が残る。
ウイルス、細菌……
二人から聞いた、そして須美ちゃんが聞いたという名前。
神樹サマらしき存在が知っていた、その
つまり、今回のものが初めての襲来ではないのは確実。
そうなってくると、更に疑問が発生するのは名家と呼ばれる家々達。
大赦に関わり、その立て直しを図ったとされる俺達に関わりの深い二家。
現代は兎も角、その発端当時はバーテックスの存在を確実に知っていた筈*1だ。
(言えない、ってのは分かるが……)
そのちゃんに目を向ける。
一人娘、言ってしまえばこの四国の次代で最も権力を持つ一人。
それさえ知らない事実――――いや、『勇者』だから、か?
「……分からん」
「てんくんもおつかれ~?」
「うん、疲れた」
主に脳が。
細かい部分を聞いても、曖昧な笑みと誤魔化す口調で流されるし。
あの二柱は、自分で知ることを大前提にしている節もある。
恐らく、それを踏まえてどうするかを見定めているんだろうが。
余計なお世話だよ、と大きな声で言いたくもなる。
「じゃ、今日は此処までにしよっか」
「そのちゃんもそれでいいの?」
「うん。 趣味の調べ物も出来たし、気になることも後で家で調べてみるし……。
それに、ちょっと満足しちゃった」
満足。
何をだ。
首を少しだけ傾げれば、おかしそうにクスクスと笑った。
「真剣な顔に気が抜けた顔。 色々見れたからさ~」
「うぇ」
思わず出た変な声。
え、観察されてた…………?
「てんくん」
「はい」
思考の隙間に刺さる呼び方。
親愛にも似た、もう少し複雑な感情が混じいる声色。
「……もうちょっと、満足させてほしいなぁ」
ニッコリと、笑顔。
「…………何を、すれば?」
「そうだな~」
……結局、好意を抱いた側の負けなんだろうな。こういう時。
そんな諦め半分、喜び半分の感情で問い直せば。
少しでいいから、手を握ってくれない?
そんなお願い事をしながら。
彼女は、そっと手を差し出していた。
※変更点
・「上里」「乃木」の初代のその後の変化
・「葦原」の引き継いできた謎
・改竄された歴史の話
・現状、脳内がバレたら確実に「事故死」させられる。
「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と
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そのっち
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銀ちゃん
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わっしー