葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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勇者部満開行った人はお疲れ様でした。
行けなかったのでひたすら更新します。


急-5

 

その日は、何でもない日だった。

 

二度目のバーテックス、天秤座(ライブラ)との戦いを終えた後。

丁度授業中で何も出来ず、終わった後でそれを知り。

 

連携――――と言うよりは各人の不足している部分の特訓の為、と。

三人が集中合宿に出向き、戻ってきたとある日のことだった。

 

ただ、いつも通りに学校に向かい。

ただ、いつも通りに授業を受け。

ただ、いつも通りにイネスに寄った後で三人と合流するはずだった日。

 

――――かららん。

 

既に二度聞いた、何かが響く音がしたのは校舎裏へ出たタイミング。

 

無意識に禹歩を刻み。

けれど、周囲がコンクリートで固められていたから結界を刻めずに。

俺を飲み込んで、神樹サマの結界が世界を覆ったのが分かって。

次の現実世界に戻った、と認識した時。

 

「うお、お!?」

 

()()()()()()()()()()

 

罅割れる、或いは学校が崩れるなんてことはなく。

けれど、地面を大きく波立たせるように左右に揺れたのが分かって。

 

「……何だ?」

『地震、ですか?』

()()()()()()、か?』

 

自分の身体を支えきれずに。

その場に立っていられず、腰を落とした。

 

『――――まだ、此方には来るには早いわよ』

 

がしゃん。

 

目の前に、土入りの花入れが落ちてきて砕けたのが分かった。

破片が飛び散り、土が身体に降り注ぐのを他人事のように感じていた。

 

『全く……世話が焼けるんだから』

 

どくん。

 

一瞬、心臓が跳ねた気がした。

興奮や、緊張や、情動に動かされたモノではなく。

もっと悪い予感に、導かれた気がする。

 

『……天理?』

 

声が、少しだけ遠く聞こえた。

目の前のものを無意識に放置して。

ランドセルを背負い直し、裏門から抜けていく。

 

この感覚が、何なのかは分からない。

 

ただ今はっきりしているのは、三人がお役目に呼ばれたということ。

だからこそ、今日の予定は空白になり。

本来だったらたった一人でイネスにでも寄って帰るのが普段通り。

 

けれど、その道を選ぶことはなく。

途中、公園を挟んで自宅へと一度帰ろうとしていた。

 

結界が張られた跡。

現実世界に影響が出た。

その意味を、俺は当人達自身から聞いている。

 

『……どうしたのだ?』

『…………いえ、まさか』

 

二人にも分かっていない、俺だけが感じる感覚。

()()()()()()()()()()()()()()()()()ような。

不安と、恐れと、悪寒がする。

 

(…………悪い。 少しだけ自由にさせてくれ)

『女子達との予定は立ち消えただろうから、我等は構わぬが……』

『天理よ、何を感じたのです?』

 

どう言葉にして良いのかがわからない。

ただ、感じたのは。

()()()()のは、少女の声。

 

見知らぬ姿の。

聞いた覚えのない声の。

けれど、何かを残した後悔したような声色。

 

操られている訳ではなく。

連れて行かれる訳でもなく。

知らない筈なのに、嘗て会ったことのあるような錯覚。

 

歩く。

早足。

気付けば小走り。

息を切らしながらに走る、その先。

 

少しずつ住宅街が見え始め。

道路沿いに人々が増え始めていく。

 

『……人?』

(何で……?)

 

明らかに普段よりも多い数。

老若男女問わず騒ぐ声色。

段々と近づいてくるサイレンの音。

赤い灯火が回り、白い車が内側から人々を吐き出しては再び取り入れていく。

 

()()()……?」

 

ふと、建物を見上げた。

 

瓦が崩れた跡。

崩れた古い建物。

物置小屋の下から聞こえる、小さな動物の鳴き声。

 

『――――まさか』

『天理、急ぎ自宅へ戻るぞ。 お主の感じた何かが正しいのなら』

 

ああ、と呟いたのか。

或いは脳内だったか、今の俺には判断できなかった。

 

「あっ、おい」

「あの子、彼処の――――」

 

背後に声が幾つか流れていく。

 

この辺りは……銀と二人で色々歩いた場所。

だからこそ、顔見知りだっているのは分かっていて。

それらに意識を振り分ける余裕が、今はなくて。

 

走ったその先には。

 

「………………」

 

()()()()()()()()()()

 

朝、出た時に見た建物。

夕方、帰りに見ていた建物。

この数年間、毎日のように見ていた風景。

それが崩れ去り、残骸だけが積もっているのが分かった。

 

『…………これ、は』

『耐えられなかった……?』

 

ふらり。

一歩、残骸の傍へと近付いていく。

 

足元の先。

崩れた建物から、液体が染み出している。

 

その場になって初めて。

金属臭い香りと、埃と、入り混じった香りが鼻に届いた。

彼女達が漂わせる、自然を想わせる香りではなく。

もっと人工的めいた、漂ってはいけない香り。

 

そして。

赤い、紅い見覚えのあるモノ。

 

自分の体内に流れ。

両親の肢体から抜け落ちてしまい。

モノへと変わり果ててしまう原因となる液体。

 

「ぁ」

 

ふと、言葉が漏れて。

 

「ぇ」

 

理解する自分の脳と、感情が食い違う。

 

へたり、と地面に腰が堕ちた。

履いていたズボンが、微かに赤く染まるまで。

 

濡れた実感もなく。

相手に対しての強い感情もなく。

何かを思い出してしまうように。

 

言葉にならない言葉を、発し続けていた。




※変更点
・第三バーテックス戦まで終了済み。(アニメ版だと二話まで終了)
・不可思議な声を聞いた。

・再び、幾つかのものを失った。
・故に、結び付いてはいけないものと結び付いた。

「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と

  • そのっち
  • 銀ちゃん
  • わっしー
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