葦原天理は巫覡である 作:氷桜
行けなかったのでひたすら更新します。
その日は、何でもない日だった。
二度目のバーテックス、
丁度授業中で何も出来ず、終わった後でそれを知り。
連携――――と言うよりは各人の不足している部分の特訓の為、と。
三人が集中合宿に出向き、戻ってきたとある日のことだった。
ただ、いつも通りに学校に向かい。
ただ、いつも通りに授業を受け。
ただ、いつも通りにイネスに寄った後で三人と合流するはずだった日。
――――かららん。
既に二度聞いた、何かが響く音がしたのは校舎裏へ出たタイミング。
無意識に禹歩を刻み。
けれど、周囲がコンクリートで固められていたから結界を刻めずに。
俺を飲み込んで、神樹サマの結界が世界を覆ったのが分かって。
次の現実世界に戻った、と認識した時。
「うお、お!?」
罅割れる、或いは学校が崩れるなんてことはなく。
けれど、地面を大きく波立たせるように左右に揺れたのが分かって。
「……何だ?」
『地震、ですか?』
『
自分の身体を支えきれずに。
その場に立っていられず、腰を落とした。
『――――まだ、此方には来るには早いわよ』
がしゃん。
目の前に、土入りの花入れが落ちてきて砕けたのが分かった。
破片が飛び散り、土が身体に降り注ぐのを他人事のように感じていた。
『全く……世話が焼けるんだから』
どくん。
一瞬、心臓が跳ねた気がした。
興奮や、緊張や、情動に動かされたモノではなく。
もっと悪い予感に、導かれた気がする。
『……天理?』
声が、少しだけ遠く聞こえた。
目の前のものを無意識に放置して。
ランドセルを背負い直し、裏門から抜けていく。
この感覚が、何なのかは分からない。
ただ今はっきりしているのは、三人がお役目に呼ばれたということ。
だからこそ、今日の予定は空白になり。
本来だったらたった一人でイネスにでも寄って帰るのが普段通り。
けれど、その道を選ぶことはなく。
途中、公園を挟んで自宅へと一度帰ろうとしていた。
結界が張られた跡。
現実世界に影響が出た。
その意味を、俺は当人達自身から聞いている。
『……どうしたのだ?』
『…………いえ、まさか』
二人にも分かっていない、俺だけが感じる感覚。
不安と、恐れと、悪寒がする。
(…………悪い。 少しだけ自由にさせてくれ)
『女子達との予定は立ち消えただろうから、我等は構わぬが……』
『天理よ、何を感じたのです?』
どう言葉にして良いのかがわからない。
ただ、感じたのは。
見知らぬ姿の。
聞いた覚えのない声の。
けれど、何かを残した後悔したような声色。
操られている訳ではなく。
連れて行かれる訳でもなく。
知らない筈なのに、嘗て会ったことのあるような錯覚。
歩く。
早足。
気付けば小走り。
息を切らしながらに走る、その先。
少しずつ住宅街が見え始め。
道路沿いに人々が増え始めていく。
『……人?』
(何で……?)
明らかに普段よりも多い数。
老若男女問わず騒ぐ声色。
段々と近づいてくるサイレンの音。
赤い灯火が回り、白い車が内側から人々を吐き出しては再び取り入れていく。
「
ふと、建物を見上げた。
瓦が崩れた跡。
崩れた古い建物。
物置小屋の下から聞こえる、小さな動物の鳴き声。
『――――まさか』
『天理、急ぎ自宅へ戻るぞ。 お主の感じた何かが正しいのなら』
ああ、と呟いたのか。
或いは脳内だったか、今の俺には判断できなかった。
「あっ、おい」
「あの子、彼処の――――」
背後に声が幾つか流れていく。
この辺りは……銀と二人で色々歩いた場所。
だからこそ、顔見知りだっているのは分かっていて。
それらに意識を振り分ける余裕が、今はなくて。
走ったその先には。
「………………」
朝、出た時に見た建物。
夕方、帰りに見ていた建物。
この数年間、毎日のように見ていた風景。
それが崩れ去り、残骸だけが積もっているのが分かった。
『…………これ、は』
『耐えられなかった……?』
ふらり。
一歩、残骸の傍へと近付いていく。
足元の先。
崩れた建物から、液体が染み出している。
その場になって初めて。
金属臭い香りと、埃と、入り混じった香りが鼻に届いた。
彼女達が漂わせる、自然を想わせる香りではなく。
もっと人工的めいた、漂ってはいけない香り。
そして。
赤い、紅い見覚えのあるモノ。
自分の体内に流れ。
両親の肢体から抜け落ちてしまい。
モノへと変わり果ててしまう原因となる液体。
「ぁ」
ふと、言葉が漏れて。
「ぇ」
理解する自分の脳と、感情が食い違う。
へたり、と地面に腰が堕ちた。
履いていたズボンが、微かに赤く染まるまで。
濡れた実感もなく。
相手に対しての強い感情もなく。
何かを思い出してしまうように。
言葉にならない言葉を、発し続けていた。
※変更点
・第三バーテックス戦まで終了済み。(アニメ版だと二話まで終了)
・不可思議な声を聞いた。
・再び、幾つかのものを失った。
・故に、結び付いてはいけないものと結び付いた。
「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と
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そのっち
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銀ちゃん
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わっしー