葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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急-7

 

「あの」

 

途中で飲み物だけを買って、指定されたホテルに向かえば。

妙に高級車っぽい車が並んでいて。

冷や汗を掻きながらも二階に昇れば。

 

「…………」

 

泣きそうな目の黒髪と。

 

「…………」

 

妙に据わった目の金髪と。

 

「…………」

 

色々と抱えていそうな灰色(?)の三人が並んで此方を見ていた。

 

所々に、白い包帯を巻いた状態で。

全員、何も言わずに。

けれど目線が、重圧を帯びたように身体に張り付き。

部屋の鍵を開けて中に入ろうとすれば当然三人も入ってくる。

 

そうして、ギュッと。

 

全員が全員、俺の身体に抱き着いてきて。

その衝撃でベッドの上で小さく跳ねる。

身動きも出来ずに、敬語で言葉を呟くけれど。

じっと見ている目線のみで、何も返事を寄越してくれない。

 

「あのー、三人とも?」

 

じっと見られている。

瞳が、微かに揺れている。

 

腕に、身体に、肩に。

それぞれの痛みが増し、けれど女の子の柔らかさが服越しにもあって。

言葉にするのが非常に難しい、そんな状態。

 

「――――」

 

ぼそり、と声がした。

掠れたような。

声にならない、乾き切った声。

 

(聞き直す……のは、ちょっと駄目だな)

 

事こうなってしまっては、彼女達を落ち着かせないと。

返事をしていてもしていなくても、似たような事態にはなっていただろうし。

 

()()()()()()()()()、という目線で追いかけてしまうと。

敵であるバーテックスを無視するなら、三人が抱えてしまうのは分かっていたこと。

その結果、古いだけだった家が倒壊した()()()()()

この部分を強く押し出さないと、多分不味い。

 

俺が家の前でどんな行動をしていたのか。

其処まで知られていたら――――。

 

『責任に押し潰される、までは行かぬと思うが』

『責任を取ろうとはするでしょうね』

 

だよな。

彼女達の両肩に背負っているものを知った上で。

それでも戦うには間違いなく理由があって。

それを聞いていた上で……今回の被害ともなれば。

こうもなる……かぁ。

 

「――――なさい」

 

繰り返される、掠れ声。

須美ちゃんの泣いているような声。

 

「私達が……」

「いや、アタシが……」

 

自分を責め立てる声二つ。

 

「……良いよ、三人ともどれだけ頑張ってるか知ってるんだから」

 

両手が使えるなら、頭でも触れていた気もする。

ただ、()()……と言う問題も出てくるので今のままで良かった気もする。

この二年で急に伸び始めた身長は、それでも須美ちゃんと同程度。

もう少し高ければ格好でも付くんだろうけれど。

 

「でも!」

「……そんな怪我した上で、撃退したんだろ?」

 

少なくとも、掠り傷で済まなかったのだろうことは確実。

それでも、装飾品を身に付けたままでいてくれることは嬉しく思う。

 

「だから、俺は何も言えない。 良く頑張った、って言うくらい」

 

犠牲となったのは俺の親類だけではない。

だから、俺だけが受け入れるわけにはいかないという側面があるにしろ。

 

「それでも重いと思うなら、話を聞くしか出来ない俺も入れて四等分。

 責任……うん。 責任は、そんなものでいいよ」

 

危うい、と感じてしまう部分もある。

 

そんな、何より大事な三人だからこそ。

その心くらいは護り通したい。

例え、それが。

大赦やバーテックス……或いは、神であろうとも。

 

「――――。」

「…………てん、くん」

「天理」

 

三者三様の瞳が、更に一層揺れた気がする。

けれど、その奥で何かが固まったような。

そんな錯覚にも似た違和感が、背筋を刺す。

 

『なんだか父上を思い出しますね』

『それは褒めてるんじゃないぞ、罵倒だと思うぞ。 ヒメよ』

 

どんな父親だったんだよ。

脳内で呆れの感情を浮かべていれば。

三人が、更に一歩。

抱き締めている状態から、更に距離が縮まった気がした。

 

「ちょ……っ!?」

 

体温を、服上から感じるのと。

吐息さえ肌で感じるのと。

擽ったいような違和感と、服の上に落ちる透明な雫。

 

「……すこ、しで……いい、です。 こう、させて……」

 

今になって気付く。

微かに、震えている。

 

「アタシ…………もう、ちょ、っとで」

「わっしーも……ミノさんも。 かなり、あぶなく、て」

 

途切れ途切れに放たれる言葉は、それだけの恐怖を伝えてくる。

 

普段の倍近い大きさのバーテックス。

地震を発生させ、その上で押し潰してくる行動に対処しつつ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()が、腕や脚を抉り取ってくる戦い。

 

最初の攻撃で危険度を理解し、急所だけは避けるように立ち回ったそうだが。

だからこそ、地震を連続して繰り出す山羊座への対処が鈍ったのもまた事実。

結果、鎮魂の儀を発動するにもそれなりの時間を要し。

現実世界――――樹海に被害が多く出た、という話らしい。

 

「……連携してくるバーテックス、か」

 

包帯の上から、自分の傷を無意識に触れている。

少しだけ、()()()()()()()()()()()()()()

上から潰される形になっている俺も、その表情を曇らせられてしまう。

 

「……先生とも、話したんだけどさ」

 

様々な香り。

花の、少女の、部屋の、薬の。

入り混じった、生きている人間の匂いが四つ。

部屋の中を漂う中で。

銀が、小さく呟いた。

 

「……何を?」

 

全てを聞こうと、受け入れようとして。

耳元で聞こえた、少女の吐露する内心に触れる。

 

「アタシ――――もう、()()()()()()()()()()

 

一度、二度。

最も多い包帯を巻き付けた、銀が。

自分の腕と、脚の包帯に順に触れた。




変更点:
・バーテックス君連携開始。
・死亡の直接原因とのクソ連携で少女達も怪我だらけ。

・死することは、無かった。
・代わりに負ったモノは。

「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と

  • そのっち
  • 銀ちゃん
  • わっしー
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