葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「あの」
途中で飲み物だけを買って、指定されたホテルに向かえば。
妙に高級車っぽい車が並んでいて。
冷や汗を掻きながらも二階に昇れば。
「…………」
泣きそうな目の黒髪と。
「…………」
妙に据わった目の金髪と。
「…………」
色々と抱えていそうな灰色(?)の三人が並んで此方を見ていた。
所々に、白い包帯を巻いた状態で。
全員、何も言わずに。
けれど目線が、重圧を帯びたように身体に張り付き。
部屋の鍵を開けて中に入ろうとすれば当然三人も入ってくる。
そうして、ギュッと。
全員が全員、俺の身体に抱き着いてきて。
その衝撃でベッドの上で小さく跳ねる。
身動きも出来ずに、敬語で言葉を呟くけれど。
じっと見ている目線のみで、何も返事を寄越してくれない。
「あのー、三人とも?」
じっと見られている。
瞳が、微かに揺れている。
腕に、身体に、肩に。
それぞれの痛みが増し、けれど女の子の柔らかさが服越しにもあって。
言葉にするのが非常に難しい、そんな状態。
「――――」
ぼそり、と声がした。
掠れたような。
声にならない、乾き切った声。
(聞き直す……のは、ちょっと駄目だな)
事こうなってしまっては、彼女達を落ち着かせないと。
返事をしていてもしていなくても、似たような事態にはなっていただろうし。
敵であるバーテックスを無視するなら、三人が抱えてしまうのは分かっていたこと。
その結果、古いだけだった家が倒壊した
この部分を強く押し出さないと、多分不味い。
俺が家の前でどんな行動をしていたのか。
其処まで知られていたら――――。
『責任に押し潰される、までは行かぬと思うが』
『責任を取ろうとはするでしょうね』
だよな。
彼女達の両肩に背負っているものを知った上で。
それでも戦うには間違いなく理由があって。
それを聞いていた上で……今回の被害ともなれば。
こうもなる……かぁ。
「――――なさい」
繰り返される、掠れ声。
須美ちゃんの泣いているような声。
「私達が……」
「いや、アタシが……」
自分を責め立てる声二つ。
「……良いよ、三人ともどれだけ頑張ってるか知ってるんだから」
両手が使えるなら、頭でも触れていた気もする。
ただ、
この二年で急に伸び始めた身長は、それでも須美ちゃんと同程度。
もう少し高ければ格好でも付くんだろうけれど。
「でも!」
「……そんな怪我した上で、撃退したんだろ?」
少なくとも、掠り傷で済まなかったのだろうことは確実。
それでも、装飾品を身に付けたままでいてくれることは嬉しく思う。
「だから、俺は何も言えない。 良く頑張った、って言うくらい」
犠牲となったのは俺の親類だけではない。
だから、俺だけが受け入れるわけにはいかないという側面があるにしろ。
「それでも重いと思うなら、話を聞くしか出来ない俺も入れて四等分。
責任……うん。 責任は、そんなものでいいよ」
危うい、と感じてしまう部分もある。
そんな、何より大事な三人だからこそ。
その心くらいは護り通したい。
例え、それが。
大赦やバーテックス……或いは、神であろうとも。
「――――。」
「…………てん、くん」
「天理」
三者三様の瞳が、更に一層揺れた気がする。
けれど、その奥で何かが固まったような。
そんな錯覚にも似た違和感が、背筋を刺す。
『なんだか父上を思い出しますね』
『それは褒めてるんじゃないぞ、罵倒だと思うぞ。 ヒメよ』
どんな父親だったんだよ。
脳内で呆れの感情を浮かべていれば。
三人が、更に一歩。
抱き締めている状態から、更に距離が縮まった気がした。
「ちょ……っ!?」
体温を、服上から感じるのと。
吐息さえ肌で感じるのと。
擽ったいような違和感と、服の上に落ちる透明な雫。
「……すこ、しで……いい、です。 こう、させて……」
今になって気付く。
微かに、震えている。
「アタシ…………もう、ちょ、っとで」
「わっしーも……ミノさんも。 かなり、あぶなく、て」
途切れ途切れに放たれる言葉は、それだけの恐怖を伝えてくる。
普段の倍近い大きさのバーテックス。
地震を発生させ、その上で押し潰してくる行動に対処しつつ。
最初の攻撃で危険度を理解し、急所だけは避けるように立ち回ったそうだが。
だからこそ、地震を連続して繰り出す山羊座への対処が鈍ったのもまた事実。
結果、鎮魂の儀を発動するにもそれなりの時間を要し。
現実世界――――樹海に被害が多く出た、という話らしい。
「……連携してくるバーテックス、か」
包帯の上から、自分の傷を無意識に触れている。
少しだけ、
上から潰される形になっている俺も、その表情を曇らせられてしまう。
「……先生とも、話したんだけどさ」
様々な香り。
花の、少女の、部屋の、薬の。
入り混じった、生きている人間の匂いが四つ。
部屋の中を漂う中で。
銀が、小さく呟いた。
「……何を?」
全てを聞こうと、受け入れようとして。
耳元で聞こえた、少女の吐露する内心に触れる。
「アタシ――――もう、
一度、二度。
最も多い包帯を巻き付けた、銀が。
自分の腕と、脚の包帯に順に触れた。
変更点:
・バーテックス君連携開始。
・死亡の直接原因とのクソ連携で少女達も怪我だらけ。
・死することは、無かった。
・代わりに負ったモノは。
「わすゆ」中編パートに於ける最終話ヒロインあんけ~と
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そのっち
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銀ちゃん
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わっしー