葦原天理は巫覡である 作:氷桜
罰としてワカを地獄のような部屋に放置し。
一度外に出、その日一日の食料を買い求める。
本来なら今日か明日、大赦に向かい内部偵察を行う予定もあったが。
今の現状、二人を離す理由もない。
途中、普段からそのちゃんを送り迎えしている運転手の人へも伝言を頼む。
『友達と気を抜いている最中だから、今日一日くらいはゆっくりさせてあげて欲しい』と。
無論、それの半分以上は欺瞞。
けれどもう半分は普段から実行していることで、同時にその姿を少なからず見ている人。
『何かがあれば
そんな問い掛けは、子供を見るものでなく一人の当主に伺うモノで。
その裏の意味――――そして、それを適えるだけの権力を持つことを再認識しながら。
小さく頷く事で、一日という時間を確保した。
(さて……)
部屋まで昇る階段の足取りは妙に重い。
出来合いの食事に慣れているとは言え、三人は当然不慣れで。
寧ろ自分で作り出す方向へと興味が向いている最中。
銀だけは誰か介助がいないと怖くて刃物は握らせられないが。
その事にも、彼女は不満そうな顔を浮かべていたのを覚えている。
(今日一日で済めば良いんだけどなぁ)
先程の話をもう一度。
俺の考えも入れ、噛み砕きながら説明したことで。
二人は少しは耐えようとし始めていた。
より具体的に言うなら、恐らくの副作用は
したいことをする。
やりたいことをさせる。
我慢という線を簡単に超えさせるような、精神への悪影響。
その程度で済んでいるのは二柱という神を介して力を受け取っているから。
要するに二人が耐えられないような強大な力を流さないように調整しているから。
それが出来たのもまた、神との縁が結ばれたからなんだろう。
(ただ、その調整も甘いし……こればっかりは慣れか)
本来は神樹サマとの契約を以て変身する勇者。
これを誤魔化せているのは、ヒメの生来の在り方……つまり神樹の大元との関わり方からだという。
『出来れば天理とも縁を結んで欲しいのですが』
脳内で会話は出来るけれど、色々と考え事が多すぎて思考が纏まらない。
そういう時は
誰かと電話しているふりをして、胸元の人形と会話をしながらのこと。
行儀は良くないし、ルール違反には煩い子がいるので部屋前で立ち止まりながら。
「は?」
編みぐるみの分際で何やら言った時は真顔で返答していたが。
ワカと同類に落ちたのか……いやある意味似たようなもんか。
そんな思考をしながら見ていれば、明らかに文句を言いたそうに口元を捻じ曲げた。
『無論、彼女達のことを思ってですからね?』
「どういう意味でだ……」
『
対? と当然のように聞き。
はい、と返った言葉は普段の教えるときのモノ。
『天理と三ノ輪の子……銀のように。
巫は勇者を見出し、その補助であり支えになるのが本来の役割です』
「なんかその言い方だと俺が彼奴を選んだ、って聞こえるんだけど」
『間違ってはいないでしょう?』
あー、いやー、あー。
二年前のちょっとした事を思い出すと、まあ、そうは言えなくはない?
互いにあの頃のことは口にしないようにしてるけど。
言い出すと顔真っ赤になって会話が続かない。
『ですが、乃木と鷲尾……特に乃木とは関係性が歪です』
「いや、どういう風に?」
『鷲尾は巫としての繋がりと――――貴方が人として抱いている感情があります。
ですが、もう一人は
にも関わらず、天理が奉じる神……つまり私達と結び付いていること』
初代の勇者――――つまり、文字通りの意味でバーテックスが現れた当初。
各地で目覚めた巫の才を持つものは、己の勇者を選んだ。
そして、導かれるように神具を受け渡し……『勇者』とした。
して、しまった。
「……でも、その言い方だと。
その……
『無理です。 理由はその内分かりますが、少なくともワカ様の武具は渡せません』
「まーた秘密主義だよ……」
誰かに聞かれないように、遠回しの言い方をすれば。
確実な否定と、また情報を伏せる言い回し。
何度目なんだ……と言うかその秘密を知れるのはいつになるんだ。
「で?」
『?』
「
確かに――――。
一個人同士、”腐れ縁”として繋がった銀。
巫覡/巫女としての縁を持ち……多分好意を持ってる須美ちゃん。
それに対して、そのちゃんとの関係は友人としての延長線上。
いや、一歩進んだ感情かもしれないけれど。
何にしろ、他の二人と違う点と問われて直ぐには思いつかない。
そんな、曖昧な関係性を続けてきたから。
『
区切りをつけろ。
勇者を見出す巫として。
見出された勇者として。
男と女……『上里』と『乃木』の関係者として。
言葉にするなら――――特別性を。
それが、ヒメの望み。
「……まだ、小学生なんだけど」
『先に言っておきますよ。
そうやって曖昧にしておけば、後悔するのは天理です』
何人も抱えるかどうかは好きにすれば良い。
それはお互いの関係性と、周囲の見る目によるもので。
社会として認められないモノを貫き通せるのか、と問われると。
……多分、貫き通すしか無いんだよなぁ。
三人が三人とも好き、という時点で。
誰か一人に選べない時点で、全員を選ぶ選択肢以外は消えている。
「……分かった、話してみる」
はぁ、と深く漏らした溜息。
『乃木さんと上里さんはもっと分かりやすかったけれど』
『異性だとまた違うのですよ。
誰かと話すような、ヒメの声の中で。
扉を抜け、注連縄のように編まれた縄の結界の内側で。
小説を好きに書き、興奮したように声を挙げるそのちゃんと。
写真を撮り、それを携帯端末で編集・保存している様子の須美ちゃんと。
動けなくて暇そうに、仕方なく漫画に手を伸ばしている銀と。
そんな、ある意味自由にしている三人へ。
「そのちゃん…………後でちょっといい?」
そんな、声を投げ掛けた。
変更点:
・巫女の役割の追加。
・勇者を見出した巫女の役割は人によるが、基本的に『神具を預かる』権限は巫女側にある。
・小学六年生にして、改めて覚悟を決めた。
・子供らしい好き嫌いより二歩三歩程進んだ『好き』。
・決めないと後々地獄を見ると無意識に察知した。
二人きりのデート回、全員分描写いる?
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