葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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新キャラ一人入りまーす。


急-12

 

仰々しい顔隠しに服装。

合う大きさがないからか、最小のモノでも何処か引き摺るようにしながら。

大赦の本部、その中でも『上里』が主に治める方向へと足を向ける。

 

(はぁ)

 

思い出しては溜息と、微かに頬に熱を持つ。

 

結局昨日、そのちゃんに約束を取り付けたは良いものの。

 

『天理くん?』

『天理?』

『分かってるよ……』

 

当然に他の二人も要求をぶつけてくる。

贔屓したりするわけじゃないから、当然それも受け入れるわけだが。

その日程調整とかで意外と時間を取られた。

 

例えば銀は、今の行動が制限されているのもあって補助具か車椅子での二人での行動を希望し。

例えば須美ちゃんは、一度家に招いてお茶会をしたいとの要望で。

……そしてそのちゃんは、近々開かれるお祭りでの二人での行動を羨望した。

全て、というわけにも行かないから前半部分だけでも、と。

 

(まあ、それだけ感情を持って貰ってる、と思えば良いんだろうが)

 

気付けば季節も大分進み、既に初夏と言っていい時期。

バーテックスは残り半分……そして、それまでに新開発のシステムは間に合うのか。

ちょっと恐れもありつつに、その辺りも確認できればと思っての今日の訪問。

 

当然に平日で、けれども今日の訪問の主体は『叔父の遺品や家関係の物品の回収』。

此方に残している荷物は然程多くないとは思うけれど、それでも俺が出向く必要性はあった。

あった、のだが。

 

(何だここ……迷路か何かか……?)

 

宗教上の意味でもあるのか、或いは単純に迷わせたいだけなのか。

気付けば入り組んだ道の半ばで迷い込み、途方に暮れる。

もう少し分かりやすく作って欲しいものなんだが、気付いたら肥大してたとかそっち?

 

(どーしよ)

 

編みぐるみ二体は俺の胸ポケットの中。

とは言え、此処は言ってしまえば神樹サマのお膝元。

迂闊に声を出せば見咎められるかもしれない、とのことで基本押し黙ったままで。

結論から言えば役に立たない。

 

(誰かいるなら、道聞けるんだけど……)

 

変なところに迷い込んだらそれこそ不味い。

何を隠しているか、その全容すら把握できていない組織。

その泥濘に更に足を突っ込むのとか死んでも嫌だ。

 

そんな形で、右往左往すること少々。

 

「あ、あの……?」

 

突然、といえば突然か。

背後から声を掛けられ、そちらに振り向く。

 

「何か、お困りですか? 勇(・)者(・)様(・)」

「へ?」

 

視界に入ったのは小柄な俺よりも更に小さい。

くすんだ金色、やや茶が混じったクリーム色とでも言うべきか。

大赦特有の格好……らしい、羽衣にも似た巫女衣装を身に纏った少女が一人。

 

「違うのですか?」

「いや、俺男だぞ?」

 

一見小動物のようにも。

けれど、どことなく芯の固さを感じる。

それが何由来なのかまでは、流石に分からずに。

 

「ぁ」

 

線の細さは良く言われる。

こればっかりは運動をしても余り変わらない……生来の特徴なんだろうし。

ただ、女の子と勘違いされた経験は初めてだった。

 

「いや、別に気にしないけどさ」

 

年下……なのだろうか。

一見してその辺りの判断は出来なかったが、それに近いものだとして。

大赦の神官としての正装越しに、少しだけ間の抜けた会話を続ける。

 

「それは……失礼しました。 神樹様に近いモノを感じたので」

「あー……いや良い。 少し聞きたいことがあるんだけど」

 

声で気付かなかった……いや、多分見ている目線が少しだけズ(・)レ(・)て(・)い(・)る(・)。

そして、須美ちゃんと出会った時と同じような違和感を抱く。

あの時よりも少しだけ大きく、その力の強さを証明するように。

 

「私にでしょうか?」

「神儀科に行きたいんだけど、ちょっと迷ってね。 初めていく所だから」

 

神儀科。

上里が治める、文字通りの意味で『神への儀式』全般を取り纏める科。

その中の小さい、直接的には神樹サマに触れない部署に属していたのが叔父。

ほぼほぼ名誉職的な側面が大きかったとは言え、役職持ちなら十二分だった気もするんだが。

 

ああ、と小さく少女も頷くのが分かった。

そして同時に、奇妙な感覚を彼女も共有しているようで。

ちらちらと此方を伺っているのが容易に分かってしまった。

 

「でしたら、ご案内します」

「良いの?」

「今でしたら、少し時間もありますから」

 

此方です、と来た道を戻っていく。

その後についていく形で歩き始める。

……何処かで曲がるべきところを通り過ぎたのか。

 

(……多分、この子も巫女、だよな)

 

どれだけの数、大赦に巫女と呼ばれる人物が存在するか知らない。

ただ、その中の大半は『神樹様』による神託を受信する側で。

その先、更に強く受け止め。

感覚や耳目で何かを聞く・見る事を可能にする人物はほぼいないと思う。

 

(あの二人に言わせれば、それが出来てこその巫(かんなぎ)だって話だが)

 

そして、他の女子と比較するのは多分お互いに失礼で。

当人に知られたら詰問されそうではあるが――――。

須美ちゃんとはまた別の意味で、何かに優れた感覚を持ち合わせている子だと思う。

 

「あの」

「ん?」

「新しく配属される方ですか?」

 

ぁー…………どうなんだっけ?

将来的には……代々継いできた部分は他(・)に(・)継(・)げ(・)る(・)人(・)物(・)が(・)い(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)やらざるを得なくて。*1

ただ、口伝で伝えられてきた一部は既に消失が確定している。

故に、その部分は多分二柱や神樹サマの意向に沿う形で進めることになる筈だ。

 

「そうといえば、そう?」

「そうでしたか……」

「それがどうかした?」

「いえ。 加護を多く受けた男性の方は珍しいので……」

 

ああ、と答えたのは今度は俺の側。

それを与えた神が違うが、確かに存在自体がレアなのは確かか。

 

「代わりに儀式全般の知識は薄いから、色々頼ることになるかも」

「それは……お任せください。 神樹様を祀る巫女として」

 

此方です、と案内された場所。

迷った場所から数分と掛からず、途中で折れる場所を逆に進んでいた結果らしい。

 

「いや、助かった。 今度お礼させてくれ」

「当然のことをしただけですので」

 

互いに礼儀を含めた、感謝の言葉を口にして。

けれど当然にそれは固辞されるが、一つだけ聞いておきたいことは残った。

 

「それでも、此方の気持ちだ。 せめて名前くらいは聞いてもいいか?」

「……その程度でしたら。 国土亜耶と申します」

 

では、また何れ会う機会がありましたら――――勇(・)者(・)様(・)。

一度否定しても、その言葉を繰り返し去っていく背中を見送る。

 

(……変わってる子だな)

 

そんな子を見送り。

軽く頭を振ってから、神儀科の中へと入っていった。

 

後で知った話。

神官の正装……顔を隠すことで、極限まで個を薄める意味合いを持つそれは。

正しく扱うのなら、私語など以ての外。

 

つまり、そういう意味で俺は変わりすぎた神官という事になり。

互いに、そういう認識を抱いた――――変わり者同士、という関係性を築く事になった。

*1:
神樹を奉る事に偏重し過ぎた弊害。嘗ての知識などが一部失伝・禁書指定されていることによる。




※変更点:
・家の仕事は強制引き継ぎ決定。
・この時点で国土亜耶は巫女としての勤めを果たし始めている。


・本来は、彼女の『勇者』と出逢うのは二年は先。
・それより前の、外との……接することのない筈の異性との遭遇。

二人きりのデート回、全員分描写いる?

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