葦原天理は巫覡である 作:氷桜
憎らしいくらいの快晴。
雲ひとつ無い真っ青さは、今の時期だと敵として見る目の方が強い。
「やっぱアタシは外のほうが合うわー」
「だろーな」
からから、からから。
普段ならば自分で動かす――――或いは補助具を用いて少しずつ移動する。
以前であれば自分の足で歩き回っていた、銀の『地震による被災』は影響も強く。
学校で向けられる視線にも、同情と手伝いを申し出る声が絶えないらしい。
そんな彼女を車椅子に載せ、駅前から少しだけゆっくりと道を進む。
普段通っていた道とは違う道からイネスへ。
たった二年前のことなのに、だいぶ昔のようにも感じてしまう。
「それってどういう意味?」
「お前は閉じ籠もってるタイプじゃないって意味」
「間違ってはないけどさー」
軽口を叩きつつ。
以前とは違う、彼女が俺を引き連れるのではなく。
俺が彼女を移動させる……主体となる立ち位置。
そうなった原因へは、目を向けるのも痛々しい。
毎日のように変えている包帯の下は幾らか膿さえ見えていて。
けれど、服を変える……着替えさせる以外ではそういう部分に積極的に手を出していた。
最初こそ『恥ずかしいって!』と顔を染めていたけれど。
銀が今一人で巻いた包帯の
強引にでも結びつけたほうが幾分かまともに見えるのもまた事実。
最近は特に、器用さという面で磨きがかかっている感じもあったので。
「でもさ」
「?」
互いに目を合わせない。
移動中では、どうしても合わせようもない。
地面の小石を踏む感触と、背中越しの会話が繰り返されるだけ。
「何も考えずに、天理とこうして出るのも久々な気がする」
「お互い、色々あったからなぁ」
学校が違い。
家が違い。
役割も違い。
けれど、腐れ縁として結び付いていたはずなのに。
たった二人という関係性が少しだけ変わってしまったのは。
変えてしまったのは、今でも思い出す夏のことで。
「なぁ、天理」
「んー?」
からから、からから。
幾度も同じ音の中。
誰もいない道程を、たった二人で歩いていく。
見た目はほんの少し成長して。
中身は嫌でも変わらざるを得なくて。
それでも。
浮かぼうと思えば、幾らでも浮かんでしまう。
「お前さ――――
だからこそ、唐突な質問には空白が一瞬。
「……ああ、好きだよ」
どういう意味で。
誰が一番で。
そんな複数の意味合いが込められつつも、
「やっぱりかぁ。 ミリョーしちゃうもんだからなー!」
声だけが聞こえる。
乾いた声と、乾いた声。
取り繕うような、上っ面だけの声色。
「そう言ってるとアホっぽいぞ」
「誰がアホだ誰が!」
そんな受け答えをしながら。
きぃ、と音を立てて車椅子を止めた。
周囲には何もなく……いや、正しくは一本の川だけが流れる川辺沿い。
そのほんの少しの高台で、唯何をするでもなく足を止めた。
「? 天理?」
そして、だからこそに彼女は疑問符を浮かべて。
彼女の肩に手を置きながらに口にする。
「色々迷ったんだよ」
「?」
「いや、どう言おうかとか……どうするのが一番正しいのか、とかさ」
いつだってそうだ。
俺は自分で悩んで、親代わりのような二柱に相談し。
そして、最後は――或いは最初に――彼女に口にする。
誰が一番好きだとか。
誰かを贔屓するだとか。
そういう話ではなく。
俺は、話すなら……最初に銀に口にしたい。
恐らくは、最初に抱いた相手だから。
恐らくは、一番……弱い俺を知る相手だから。
「良く分からないけど……アタシ達に、言いたいこと?」
「そういう事に……なるかな?」
「なら言ってみろよ。 これでも、銀様は聞くの得意なんだぞ」
知ってる。
「銀も、須美ちゃんも、そのちゃんもだけど」
「おう」
だから。
一度だけ、目の前で口にしている彼女へ。
その気持ちが変わっていない事を宣言する。
「好き。 誰にも渡したくない」
醜い醜い独占欲。
神が見初めた少女*1に対して向ける欲望。
「……毎度思うけど」
「うん」
「もう少しそういう気持ち表に出さないの?」
急に言われると心臓に悪い、と。
先に口にしたのはお前だろ、と言い返せば。
多分延々とブーメランの投げ合いになるだろう。
「でも、まぁ」
手に置いた肩に、髪が触れた。
昔よりも、少しだけ伸びた髪。
少女から女性へと羽化する途中の姿。
「アタシは、お前から離れてやらないから安心しろよ」
子供のようだった感情。
成長するにつれ、変化した思いの丈。
けれど、その根底は多分あの日と変わらない。
「責任、取ってくれるんだろ?」
ああ、そうだな――――なんて。
あの時の話を持ち出されながら。
再びに、車椅子を動かし始める。
今のこの距離から、変化するには。
後二人も、多分共に。
「~♪」
少しだけ音程の外れた鼻歌を流しながら。
目の前の
変更点:
・口にする。受け入れる。
・なんとしてでも生き残る、と新たに意志を固めた。
・これでも小学生ですよこいつら。
二人きりのデート回、全員分描写いる?
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いる
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いらない
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