葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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想定イメージ曲:打上花火/DAOKO × 米津玄師


急-13/銀

 

憎らしいくらいの快晴。

雲ひとつ無い真っ青さは、今の時期だと敵として見る目の方が強い。

 

「やっぱアタシは外のほうが合うわー」

「だろーな」

 

からから、からから。

 

普段ならば自分で動かす――――或いは補助具を用いて少しずつ移動する。

以前であれば自分の足で歩き回っていた、銀の『地震による被災』は影響も強く。

学校で向けられる視線にも、同情と手伝いを申し出る声が絶えないらしい。

 

そんな彼女を車椅子に載せ、駅前から少しだけゆっくりと道を進む。

普段通っていた道とは違う道からイネスへ。

たった二年前のことなのに、だいぶ昔のようにも感じてしまう。

 

「それってどういう意味?」

「お前は閉じ籠もってるタイプじゃないって意味」

「間違ってはないけどさー」

 

軽口を叩きつつ。

以前とは違う、彼女が俺を引き連れるのではなく。

俺が彼女を移動させる……主体となる立ち位置。

 

そうなった原因へは、目を向けるのも痛々しい。

毎日のように変えている包帯の下は幾らか膿さえ見えていて。

けれど、服を変える……着替えさせる以外ではそういう部分に積極的に手を出していた。

 

最初こそ『恥ずかしいって!』と顔を染めていたけれど。

銀が今一人で巻いた包帯の()()を知っていると。

強引にでも結びつけたほうが幾分かまともに見えるのもまた事実。

最近は特に、器用さという面で磨きがかかっている感じもあったので。

 

「でもさ」

「?」

 

互いに目を合わせない。

移動中では、どうしても合わせようもない。

地面の小石を踏む感触と、背中越しの会話が繰り返されるだけ。

 

「何も考えずに、天理とこうして出るのも久々な気がする」

「お互い、色々あったからなぁ」

 

学校が違い。

家が違い。

役割も違い。

けれど、腐れ縁として結び付いていたはずなのに。

たった二人という関係性が少しだけ変わってしまったのは。

変えてしまったのは、今でも思い出す夏のことで。

 

「なぁ、天理」

「んー?」

 

からから、からから。

幾度も同じ音の中。

誰もいない道程を、たった二人で歩いていく。

 

見た目はほんの少し成長して。

中身は嫌でも変わらざるを得なくて。

それでも。

 

巫覡(おれ)勇者(ぎん)を見出した事と。

少年(おれ)少女(ぎん)と結び付いた事と。

浮かぼうと思えば、幾らでも浮かんでしまう。

 

「お前さ――――()()()()()()()()()?」

 

だからこそ、唐突な質問には空白が一瞬。

 

「……ああ、好きだよ」

 

どういう意味で。

誰が一番で。

そんな複数の意味合いが込められつつも、背後(おれ)へ……視線に混ぜられた言葉へは反応しない。

 

「やっぱりかぁ。 ミリョーしちゃうもんだからなー!」

 

声だけが聞こえる。

乾いた声と、乾いた声。

取り繕うような、上っ面だけの声色。

 

「そう言ってるとアホっぽいぞ」

「誰がアホだ誰が!」

 

そんな受け答えをしながら。

きぃ、と音を立てて車椅子を止めた。

周囲には何もなく……いや、正しくは一本の川だけが流れる川辺沿い。

そのほんの少しの高台で、唯何をするでもなく足を止めた。

 

「? 天理?」

 

そして、だからこそに彼女は疑問符を浮かべて。

()()()()()()()()からこそ、中途半端な受け答えを続けていた俺は。

彼女の肩に手を置きながらに口にする。

 

「色々迷ったんだよ」

「?」

「いや、どう言おうかとか……どうするのが一番正しいのか、とかさ」

 

いつだってそうだ。

俺は自分で悩んで、親代わりのような二柱に相談し。

そして、最後は――或いは最初に――彼女に口にする。

 

誰が一番好きだとか。

誰かを贔屓するだとか。

そういう話ではなく。

俺は、話すなら……最初に銀に口にしたい。

 

恐らくは、最初に抱いた相手だから。

恐らくは、一番……弱い俺を知る相手だから。

 

「良く分からないけど……アタシ達に、言いたいこと?」

「そういう事に……なるかな?」

「なら言ってみろよ。 これでも、銀様は聞くの得意なんだぞ」

 

知ってる。

 

「銀も、須美ちゃんも、そのちゃんもだけど」

「おう」

 

だから。

一度だけ、目の前で口にしている彼女へ。

その気持ちが変わっていない事を宣言する。

 

「好き。 誰にも渡したくない」

 

醜い醜い独占欲。

神が見初めた少女*1に対して向ける欲望。

 

「……毎度思うけど」

「うん」

もう少しそういう気持ち表に出さないの?

 

急に言われると心臓に悪い、と。

先に口にしたのはお前だろ、と言い返せば。

多分延々とブーメランの投げ合いになるだろう。

 

「でも、まぁ」

 

手に置いた肩に、髪が触れた。

昔よりも、少しだけ伸びた髪。

少女から女性へと羽化する途中の姿。

 

「アタシは、お前から離れてやらないから安心しろよ」

 

子供のようだった感情。

成長するにつれ、変化した思いの丈。

けれど、その根底は多分あの日と変わらない。

 

「責任、取ってくれるんだろ?」

 

ああ、そうだな――――なんて。

あの時の話を持ち出されながら。

再びに、車椅子を動かし始める。

 

今のこの距離から、変化するには。

後二人も、多分共に。

 

「~♪」

 

少しだけ音程の外れた鼻歌を流しながら。

目の前のお姫様(ぎん)と、幾つも日時を重ねた土地へと歩みを進めた。

*1
『巫女』は『神の夫/妻』として仕える逸話は世界中に存在する。勇者は神が見初めた存在、()()()()()()()()()()()




変更点:
・口にする。受け入れる。
・なんとしてでも生き残る、と新たに意志を固めた。


・これでも小学生ですよこいつら。

二人きりのデート回、全員分描写いる?

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