葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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想定イメージ曲:プラネタリウム/大塚愛

わすゆ系ヒロインのターン一旦此処まで。


急-15/園子

 

ざわざわ、と大勢の人。

普段は近寄る場所でもない、大赦近くの一般人が神樹サマに参る土地。

その入口から、少しだけ離れた場所。

 

(まだギリギリではあるけど、これ着れたんだな……)

 

ホテル近くの、月単位で借り受ける為の仮住宅。

その一部屋に銀と共に越した、二週間程後のこと。

そのちゃんと約束した通り、お祭りの当日。

 

以前と同じ、紺色の甚平に身を包み。

待ち合わせからやってみたいという彼女の願いに従って、前半分の時間を二人で使う。

須美ちゃんと銀は二人で色々見て回る、と言っていたから後の合流で。

それでも、言ってしまえば二人きりの初めての外出とほぼ同じ。

 

(……うわ、緊張してきた)

 

()()()()に近いことは平気でしているのに。

何を今更、と思う自分もいる。

それでも――――。

 

「ごめ~ん、お待たせ~!」

「あ……うん、大丈夫」

 

草履に浴衣、ある意味で祭りの正装。

以前に見たものとも違う、薄紫の浴衣に身を包んだ少女が駆けてきて腕に組み付く。

彼女なら突発的に何をしてもおかしくない、と分かっているけれど。

それでも『想定外』の行動に心臓が跳ねるのは避けられない。

 

「出る前に捕まっちゃった」

「捕まった……家の人に?」

「うん。 後は……大赦の人?」

「そっか」

 

少しだけ嫌な予感を抱えつつ。

それでも、今だけはその感覚を横に置いた。

 

「……まあ、でも」

「ん~?」

 

右腕を絡め取られ。

すぐ横で此方を伺う少女は、今日を楽しみにしていたのは間違いなく。

携帯端末からも、先生から『ちゃんと面倒見てください』と謎のフォローも届いたことだし。

言われなくても、と思いつつも。

 

「今日は、楽しもうか。 ()()()()だし」

「いえーい!」

 

腕を組んだまま歩き出し。

同じ小学校の生徒や神樹館の生徒に見られ、二度見される。

 

『んー…………ん、んん!?』

『え……あれ、乃木さん?』

『ほんとだ……って隣の子、銀ちゃんの友達の、だよね?』

 

所々で聞こえる声。

それを()()()()()更に絡めてくるんだから度胸が座っていると言うかなんというか。

 

「そのちゃん、このままでいいの?」

「このままがいいな~」

 

そうですか。

まあ、一年半も共に過ごせば多少は分かっているから。

今のは分かった上で聞いた、という意味が強く。

そしてそれを踏まえた上で答えた、聞かせたという意味もありそう。

 

(要するに、()()()()()()()()()だよな……)

 

私には()()()()()がいます。

()()()()()()です。

それを神々の関わる行事でやってくる度胸。

 

「……ねえ、そのちゃん」

「ん~?」

 

だから、歩きながら問い掛けた。

人混みで、他には誰も聞いていないから。

静かな場所より、今聞いてみたかった。

 

「そのちゃんはさ……その、何で俺なんかを?」

 

言葉より、その行動こそが雄弁に語る。

そんな文章が載っていたのは何の本だったか。

 

「ん~…………てんくんは、多分知らないけど」

「うん」

「私とてんくん、一時期婚約者として名前が上がってたの」

「へー…………へ!?」

 

え、なにそれ。

 

「あ、知らなかった感じだ。 まぁ、もうとっくに消えた話なんだけどね~」

「お、おう……」

 

上里本家から出せよ!

何で俺!?

と言うかそこが結び付いたら権力面ヤバいって事で潰されたタイプだろ!?

 

「それから、気にはなってた」

 

名前しか知らなかったけど。

家から出る機会も、出た先でも仲良くしてくれる相手も無くて。

だから、想像出来る……本を書くのが好きになった。

そんな声が、耳元で聞こえる。

 

「……てんくんは?」

「……どうなんだろうね。 最初は、好きとか嫌いとかじゃなかったと思う」

 

人混みに流されそうになって。

腕にしがみつく力と、もう片手で彼女を押し留めて。

その後で、互いに頬を染めて笑いながら。

 

「でも、そのちゃんが普通の女の子だって分かって……努力してるのも分かって」

「うん」

「多分……気付いたら好きになってたんだと思う」

 

何か切っ掛けがあったとか、何か理由があってとか。

そういう話ではなく。

四人で過ごしていて、笑う顔を見て。

ああ、と――――ふと腑に落ちた、というのが多分一番近い。

 

そっか、と小さく笑った。

その顔だよ、と小さく答えた。

 

「……私も、多分おんなじ」

 

気になったから、相性が良かったから。

それだけじゃなくて。

 

「大事に……うん。 多分、()()()()()()()()()()()()()()()、かなぁ」

 

どこでも寝ちゃったり。

人と少しだけ考えが違ったり。

それでも、同じって見てくれるから。

 

小さく呟く声の一つ一つが、普段は聞いた覚えの無いもの。

吐露するものでもない――――幾つかの、積み重ねていった結晶。

 

「両思いだ」

「両思いだね~」

 

何がおかしいのか、互いに笑う。

 

……そうしているのが、自由にしているのが。

彼女には一番似合うと思った。

 

「てんくん」

「ん?」

 

少しばかり空腹で。

近くの……焼きそばでも二人分買おうかと人の流れを泳ぎ渡る。

その中で、首元に抱き着く彼女から小さい声と。

いつか、何処かで嗅いだような微かな草木の香りがした。

 

「……だからさ。 てんくんのはじめて、一つもらうね?」

 

え、とは言わずに。

言う暇も無く。

頬に、少しだけ温かい湿った感触がして――――すぐに離れる。

 

無意識に手を当てれば。

頬に伸びる、微かな濡れた液体が指沿いに伸びた。

 

「ずっと、いっしょだからね」

 

そんな――――呪い(ねがい)のような、言葉が一つ。




変更点:
・互いに吐露し、互いに結び付き、互いに見出した。
・依って、少年と少女は神を介して正しく結ばれた。


・その意味を知るのは、代償という別れを受ける時。
・本来であればあったはずの、喪失の傷。
・神の加護は、贄という未来を否定した。

二人きりのデート回、全員分描写いる?

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