葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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幕間-3

 

長くなるだろうから、と。

後頭部を床に降ろされた上で四人分のお茶を持ってきた須美ちゃん。

 

……いや、名前が戻るから須美ちゃんじゃなくなるのか?

後でこっそり聞いてみよう、希望もあるだろうし。

 

しかし、何処に何があるのかを把握されている事に気付いたら不味いだろうか。

平和な生活を行っていく上では、特に。

 

『……さて、何処から話すか』

 

そんな言葉に、思考を元に戻す。

 

「全部だ全部。 まずはおねえちゃんについて話せ」

 

その呼び方を出すと何故かザワつく。

そんなに特殊でもないだろ。

 

『まあ……そうだな。 何にしろ、あの子がいなければ始まらぬか』

 

『とは言っても長くなります。

 ある程度は省きますので……()()()()()()()()()()()()()()()()、天理』

 

ちくり、と棘を刺された感じ。

話してくれるかは別として……分かってる、と頷いた。

……太腿への力が強くなった気がする。

 

「そのちゃん?」

 

「しらな~い」

 

ニッコリと、背筋が凍るような笑顔が見えた。

……後で機嫌を取らないと不味そう。

 

「そうね……後で教えて貰わないと」

 

「だなぁ、アタシも聞いたこと無いし」

 

「全部を全部話す必要があるのか……」

 

其処まで管理されるの、俺。

ちょっと恐れつつも、今は後回しにすることで極短時間だけ悩みから解放される。

 

『……全く』

 

『ヒメが其処まで入れ込むとはなぁ』

 

『なにか問題でもありますか、ワカ様……?』

 

『いや、全く』

 

向こうも向こうで何やら言われているが。

お互いの視線が『話を元に戻そう』ということで一致した気がする。

性別が男同士、こういうところでは理解できるのだろうか。

 

「ワカ」

 

『分かっておる……と言っても、言える範囲も限られるからな。

 今はこれだけ分かっておけば良い。

 西暦時代の――――初めの勇者達の一人で、吾の神具……『大葉刈』を預けたモノ。

 そして、現状は結界内で眠り続けている少女、とな』

 

始まりの存在。

神の武器を預けた。

言ってしまえば、俺達にとっては伝説に近い相手。

 

しかも、だ。

 

「…………あの、ワカ、様~?」

 

「今、眠っているって言ったってことは……()()()()()()

 

()()()、或いは()()

終了したような言い方ならば死を理解させるのに相応しいのに。

未だに続けている、という言葉の意味。

 

『お主達も体感しておるはずだがな。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう?』

 

極当たり前のことのように口にし。

パクパクと開閉を繰り返し、言葉にならない二人。

 

銀にそのちゃんのこういう状態は割と珍しい。

俺は…………以前に眠ってるって聞いたし、其処まででもなかったが。

 

『とは言え――――本来は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 精一杯抗い、その中で力尽きるのならば……安らかに見送るつもりだったのだ』

 

それは……生物としての基本。

生きれば、いつかは死ぬ。

どんなに理不尽でも、どんなに予想できなくても。

けれど、それを認めない気持ちもまた理解してしまう。

 

『天理。 その考えを変えたのはお主の祖先よ』

 

「……俺の?」

 

『ええ。 私達を祭神とする神社の少女。 大葉刈を管理していた貸与者。

 その少女が、己を捧げながら希ったのです。『僅かの猶予を』と』

 

それが成功したのは、偶然にも等しかった。

 

()()()()()()()()()()()()こと。

神具の特性……『死を否定』した逸話より、霊力に依って僅かに魂を保持できたこと。

その場で治療も間に合わず、対応しなければ即座に死ぬことが分かってしまったこと。

そして何より、ちょっとした用事で樹海が発生する際に極近くに巫女と勇者が存在していたこと。

 

『捧げたのは、己の寿命の半分。 起きられるか、そのまま風化するかも分からぬのにな』

 

『――――その頃、私達は迷っていました。

 最後の手段として残ったけれど、この後どうするべきなのか

 

その考えを最後に変えたのが、その巫女だったと。

人の抗う姿を直視し、そして考えを改めたと。

 

『故に……私達は、最後に残った勇者と巫女。

 園子、貴方の祖先の一人と上里の巫女と話し合いました』

 

「……そういう繋がりなんだ。

 一人、っていうのはどういうこと……なんです、か?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()という意味です。

 詳しくは当人に聞きなさい』

 

…………待て、待て待て。

 

「結局その話で行くと何人眠ったままなんだよ。

 それに、これだけ長く神世紀が続いてるなら事故だって起こるだろ!?」

 

『そうですね。 ()()()()()()()()()()()

 

「は?」

 

良いですか、と改めて。

この話は、既に大赦の中でも神託以外で消し去られているはずだ、という前置きと共に。

 

『最初の神樹の勇者は五名。

 内一人は神樹の中に魂を絡め取られ、一人は後世に発現した呪いにより巫女と眠りに付き。

 二人は毒で臓腑を侵されながらに陽の霊力で微かに息を繋ぎ。

 一人は、死を否定する神具の影響で眠り続けています』

 

その他に一人、眠る巫女だけが知る別の地の勇者と巫女がいるはずですが……と繋げつつ。

 

『父……神樹の荒御魂化を止めるには神々に直接働きかける他ありません。

 そして、それらに干渉出来るのは力ある神々より直接力を与えられ。

 同時に霊力を保つ武具を預かった勇者達のみ』

 

――――つまり。

 

「その言い方だと……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 入るための権限は、ワカ様がお持ちですから』

 

バーテックス(向こう)側から追放された、吾と同郷の神がいる。

 時間は掛かるが……協力を要請することは出来る』

 

そして。

 

『天理、私達が最初に安置されていた公園。

 あの地に眠るのが、貴方の言う”おねえちゃん”ですよ』

 

……………………。

…………………………………………。

 

予想外に大きい話になって、全員言葉が消えたんだが。

先ず、何から手を付ければいいんだ?




※変更点:
・何名かの勇者は生存(死亡直前のまま)眠っている。
・これは「当時の技術では治療が間に合わない」「そもそも治療機関まで辿り着けない」事で緊急避難的に行われた側面もある。
・「ゆゆゆい前編」改め西暦勇者編、反逆神側スタート。
・目的は二つ、中で囚われた勇者の解放と神樹の暴走の停止・協力要請。


・その為の事前準備、色々大変だね。
・サソリさんの毒治せるんだろうか。 喰らったら大概死ぬっぽいんだが。
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