葦原天理は巫覡である 作:氷桜
そろそろ次の章ですかね。
頭を抱えてしまうような話が終わって。
『少し一人で考えてくる』と。
天理は家から外へ出ていってしまった。
二柱様……ワカ様とヒメ様も妙に疲れたように項垂れていながら。
部屋の隅で横になっているのを、アタシ達は他人事のように見て。
「…………アタシ達だけだな?」
「そうだね~」
ぼつり、と零した言葉。
立ち上がろうとして、バランスを崩したところを園子に支えられる。
そのまま床へ座り、壁を背もたれ代わりにして少しだけ上を見た。
須美は何かをブツブツ呟いている。
大体こういう時は何を言い出すのか、アタシ達三人の時だけなら何となくは察知できる。
そして多分、その取っ掛かりは全員が抱えているもやもやで。
「銀、そのっち」
だからこそ。
ぼそり、と漏れた言葉は普段のものよりも何かを煮詰めたような言葉。
(……そんなに引っ掛かったか。 いや、分かるけどさ)
アタシ達は彼奴に告白されて、それに対して返答している。
そして、この三人の間ではそれを共有している部分がある。
流石に全部は恥ずかしくて出来ないけど、それでもどんな事をしたのか位は知ってる。
そうでもして対応しないと、
(全く気付いてないけど、彼奴も女子から目線向けられてるからなぁ)
それに対して何とも言えない感情に気付いたのは、大分遅れてから。
いつしか近くにいて当然のようになっていた相手が、離れていく可能性に気付いてから。
それは親友同士全員が共通して思ってしまった感想で。
そして、何も知らない相手には絶対に譲りたくないっていうアタシ個人の願望も混ざってる。
……ついでに言えば。
彼奴についてもっと知りたいし、アタシ達についても知ってほしいと思っている。
「はいはい、やるんだろ?」
だからこそ、不定期にこんな事を始めた。
多分初めてやったのは……アタシがこうなるちょっと前くらいか?
彼奴と……そ、その。 一緒に暮らし始めた辺りから。
二人の目線が凄い冷たかったから咄嗟に言い出して。
それから……の筈。
「わっしー、パソコン無いけどだいじょうぶ?」
「電子計算機……ぱ、
中学校に上がれば新しく英語とかの授業も増える。
敵性言語だ、とか騒いでた須美もいたけど。
『鷲尾』から離れる事が決まってから、かな。
少しだけ態度とか言葉を柔らかくするようにしている気がする。
それにしてもパソコンくらい普通に呼べないのかな。
家でも結構弄くり回してるって話は聞くのに。
「じゃ~、いつも通りミノさんは司会で~」
「須美は書記か。 ……いつも思うんだが、録音した上でそれを文章にする必要あるか?」
「あります! 聞き逃したりしたことを確認するには最適です!」
騒ぐな騒ぐな。
と言うかお前の場合聞き逃すってこと滅多に無いだろうが。
「ぁー、じゃあやるか。 準備いいか?」
「私はだいじょぶ~」
「はい……録音開始、と」
ぽちり、と携帯端末のボタンを押して。
全員が一度頷いて。
「えー……もう何回目か忘れたけど、女子会始めるぞー」
「は~い」
「はい。 じゃあ先ず議題を、そのっち」
女子会――――と言う名目の情報交換会。
この三人だけで、そんな名前を出す時の話題は大体決まってる。
それでもそういう名前なのは……何でだっけ?
堂々と女子会してた、って言う為とかだっけ?
「じゃ~……って言う必要もないけど~。 ”おねえちゃん”について~」
この会。
多分一番有効活用してるのは須美だけど、上手く立ち回ってるのは園子。
アタシはどう使っていいか分からないことも多いし、寧ろ直接聞いちゃうし。
夜にちょっと頼む予定の、膝枕を思い浮かべて頬に熱が宿った。
「銀、何も知らない?」
「知らない知らない。 ただ、天理の血縁に姉とか従姉妹はいない……筈」
「っていうか、
いたらどっかで紹介するか顔合わせしてると思う。
結局、彼奴の叔父さん叔母さんには子供が出来なかったらしいし。
同じように園子も呟き、三人が全員知らない相手ということでもう一回理解した。
「でも、さっきの二柱様の話だと……初代勇者、なんです……んんっ、なのよね?」
「無理しないで慣れればいいと思うんよ、わっしー」
「無理にでも言わないと駄目なんですー!」
丁寧口調に慣れている部分もあるから、違和感もある。
まあ鷲尾から元の家に戻るなら、今直してる方がそれっぽい感じもあるけど。
誂っているのか、心配しているのか。
園子の言葉に激高してみせた須美を無視して呟く。
「でもさぁ、初代勇者様って
「確か……土居と伊予島は初代の勇者の家系の筈?」
「後高嶋にそのっちの乃木もでしょ。 やっぱり四人……よね?」
一番詳しいだろう園子に確認しても、やっぱり知らないと言うし。
今では考えられないけど、昔は勇者であることを公開していたらしい。
……アタシがその頃の勇者だったら大変だっただろうなー。
「上里は巫女の家系だもんな」
「てんくんもその血の影響なのかなぁ?」
「逆……いや、寧ろ上里に取り込まれた家とか?」
ただ。
どうしても、この会議で話しているとその方向性は彼に向く。
「あの目は何かあった目です。 私には分かります」
「またわっしーがなにか言い出したんよ」
「ほっとけ。 まあ今度こっそり聞いてみるつもりだけど……」
あーだこーだ。
何が好きなのかとか何か隠してることはないだとか。
そんな話をしているのが、妙に楽しく思える。
(…………こんな身体だけど。 生きてて、良かったなぁ)
――――そう、思ってしまう。
そして、早く動けるようになりたい……とも。
そんな事に
また、彼奴の話へと没頭して。
気付けば、録音の上限を超えているのもいつも通り。
変更点:
・女子は仲良いですね。
・仲間を増やそうとする集団かは未定。