葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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起-2

 

俺にとっての旧ご近所さん……結城友奈、という名前を持つ少女は。

大きく二面性を持つ人間だと思っていた。

 

一つは誰にも優しく、別け隔てのない元気な少女。

一つは気を使って周り、常に揉め事を起こさない程度に立ち回る臆病な少女。

 

それを知るのは幼い頃、俺も似た側面を持っていたからでもあり。

向こう側からもそれを認識され、同類としてお互いを認めていたから。

 

『気を使い過ぎなんだよ』

 

『そんな天理くんだってそうじゃん』

 

『俺はちゃんと考えてますぅー!』

 

『でも友達いないよね?』

 

そう、俺の周りには友人がいなくて。

彼奴の周りには友人がいる。

そんな理不尽な程の差が生まれるような相手。

 

ただ、それを大変だなぁと流せるだけの相手で。

ただ、それを可哀想だなぁと思われてしまう相手で。

 

親しいと言えば親しく、そうでないと言えばそうでもない。

 

ただ、彼奴の家に行く回数はそれなりにあって。

ただ、うちに招く回数は殆どなくて。

そんな形で一方的に家族に知られている……という()()の相手だったはず。

 

今日このタイミングで会うとは思ってなかったが。

 

「……で、何してるの? 知らない子連れてるけど」

 

「あ~……まあ良いか。 俺、中学は此方に入ることになりそうでさ、その下見」

 

「え、そうなの!? やった、久々に一緒だ!」

 

勝手に進む話。

その度に手に感じる痛みは増していく。

笑顔がは変わっていないはずなのに、背後の圧力は増している気がする。

 

「で……後ろの子、美森ちゃんも強ち無関係じゃないんだよ」

 

「へ?」

 

ほれ、切っ掛けは作ったぞ。

 

上から下までを眺めてぽつりと、言葉を友奈が漏らしたのは分かった。

うわ、おっきいとは何を見て言った。

 

「え、えっと……結城さん?」

 

「うん。 結城友奈、小学六年生! 友奈でいいよ!」

 

「あ、うん……えっと……私も此方に引っ越すことになってね。

 それで色々と教えて貰ってたの」

 

まあ間違ってはない。

ただ普段より押されているのを見るのは新鮮だ。

そんな事を考えれば、考えに気付かれたのか一瞬ヒヤッとする目線が首元へ。

 

「あ、そうなんだ。 えーっと……?」

 

「あ、ごめんなさい。 東郷……東郷美森って言うの」

 

出来る限り話を邪魔しないように視線の片隅へ移動する。

知り合いと知り合いと紹介する、というのも手間取るもので。

あの時の銀は上手くやったもんだ、と少し前を思い出す。

 

「そっか……じゃあ東郷さん。 美森ちゃん、でも良い?」

 

「東郷……のほうが良いかな」

 

だがまあ。

知り合いが増えることを嫌がる二人ではない筈で。

若干強引気味……には見えるが、これはこれで好相性と見るべきか。

 

実情を知った時どうなるかは分からないけれど。

というか覗いてた、というかどういう相手か観察してた?

 

「うん。 じゃあご近所さんがまた増えるね!」

 

――――まあ、今はそれはどうでもいい。

 

問題になるのは、彼女が大赦から指示された最も高い『勇者適性値』の保持者。

つまり次代の勇者になる可能性が極めて高い相手、というところ。

 

「それは良いんだが、友奈は何してたんだ?」

 

それを気付かれてはいけない。

それに気付かせてはいけない。

 

唯でさえ相手は感情を読むのに優れる相手だからこそ。

それっぽさ、それっぽい言動で別の感情だと誤認させるのが手一杯かも。

 

少なからず、未だ可能性である相手で。

そして多少なりとも交友を持っていた相手で。

()()()()()()()()()()()()、なんて考えを持っていい相手では決して無い。

 

(表面上は従うが……どうにか出来ないもんかね)

 

絶対に俺達だけではないだろう。

何かしら……直接命令を下せる相手にもそれなりに指示をしている筈だ。

つまり、当面はその相手の把握と交友の深化。

向こうは『前勇者』の存在は知っているだろうし、そういう意味で擦り抜けられる可能性は……。

 

(俺と銀、くらいか。 直接戦う力を持たず、そして傷を負っていることからすると)

 

そんな、表面上の顔と内面を不一致させつつも。

恐らく久々に会うことでの変化と受け止められる、と半ば願いつつ。

 

「お母さんに頼まれてお届け物ー。 その帰り道に声が聞こえた感じかなぁ?」

 

「ああ……元気してる?」

 

「してるしてる。 今度また会いにきなよ、多分喜ぶから」

 

こいつは俺の両親がいないことを知ってる。

葬式の時だって、親戚のところに行く時だって一度は顔を見せに来た。

 

……確か、あの時は泣きそうな顔してた気もするが。

だからこそ、友奈当人は兎も角親には頭が上がらないのもまた事実。

なので。

 

「時間があれば……というか正式に引っ越したら挨拶には行く。

 一応伝えておいてくれ」

 

「うん。 ……あ、東郷さんって何処に引っ越すつもりなの?」

 

「びっくりしちゃったんだけど、天理くんの家の真後ろ。

 ……見える? あの屋根の家みたい」

 

「え、じゃあ私の家の隣だ!」

 

絶対狙っただろ大赦。

……まあ、この辺も昔の記憶に比べると空き家もちらほら見えるし。

ある程度選べる中で『東郷』に相応しい家として丁度良かった、のはあるかもな。

鷲尾の分家だったか、確か。

 

「え、そ、そうなの?」

 

「そうだよ! えーっとねー……」

 

俺を無視して二人で話し始める光景を少し離れて確認し。

 

(…………まあ、いい友人にはなれるか? 多分)

 

色んな考えを無視しても。

仲良く出来る相手が増えた、と思えば良かったことにしよう。




※変更点:
・友奈ちゃん爆誕。
・内面(本来の自身の在り方)を把握してる相手がいる。
・東郷さんは友奈ちゃん汚染度が低く済む予定。その分の負担は飛んでいく。


・完全に(二人の関係的には)原作で語られているところが少ない空白の二年なので諸々詰められたら詰めたいですね。
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