葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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そりゃ悩むよね。 うん。
思春期だもの。


起-5

 

足元の石を蹴飛ばして、唐突にブッ込まれた混乱も蹴飛ばす。

 

何言ってくれてるんだ、という怒りが半分。

感情って()()()を言ってるんだ、というのが半分。

 

ずっと見られていた。

幼い頃から面倒を見られていた。

待たれていた。

助けられる可能性を持つのは俺達くらい。

 

(~~~~~ああ、くっそ!)

 

余計なことを言われたせいで頭が混乱した。

どうせだったら現場で唐突に対応したほうが数百倍マシだった。

 

そりゃまあ、言われれば分からないでもない。

銀、美森ちゃん、そのちゃん。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それらを受けたからこそ、結び付いたというのは言われれば分かる。

だからこそ、それも必要というのも分かる。

それでも、考え込むと頭から煙が吹き出しそうになる。

 

(こんな状態で三人に会うの、普通に失礼だよな……)

 

他の相手のことを考えて、とか。

小説とかだったら多分殺される被害者担当だよ。

だから、ある程度自分で整理を付けたい。

 

(名前……呼び方を出すのは平気)

 

普通に出せた。

どんな相手なのかも、多分聞かれれば答えられる。

其処まで隠せば話にさえならない、というのも分かっているし。

紹介くらいはしたい、とさえ思ってる。

 

……ただ、ヒメに言われて初めて気付いたこともある。

 

三人に名前を出した時、妙にざわついたこと。

アレが他から見た場合の「嫉妬」と呼ぶ感情なのなら、俺はそう思わせてしまっている。

 

自分で自分の感情には気付けるのになぁ、と小声で白い息を吐き出す。

 

(次。 感情ってなんだ?)

 

あの時。

引き込まれた、と後で説明を受けた場所。

見たことのない制服で、見たことのない格好で。

意識して今から考えれば移り変わっていた服装の年上に対して思うこと。

 

髪に目を惹かれていた

もしかすれば、今でさえ少女達の髪にも目が向くのはそれが原因かもしれない。

 

声に、優しそうな表情に釣られていた

時々見えなくなって、けれど声だけは確かにしていた。

其処にいる、というだけのことに酷く安心した事を思い出す。

 

共にいてくれることを望み、そして仕方なさそうにする雰囲気が■■だった

今から考えればとても無謀で。

けれど、余り嫌そうな態度を示したことは一度もなかったと思う。

 

それを、言葉にして形容するなら。

それ等を、彼女に対して直接告げるなら。

 

()()()()()()()()

 

改めて考えてしまえば。

改めて思い出し、理解してしまえば。

顔を真っ赤に染めて蹲りたくもなる、甘ったるい想定。

 

相手のことを何も知らずに。

俺のことだけを知られていて。

ただ助けるから――――それだけで全て俺の思う通りに行くはずもない。

 

そして何より、三人に対して不誠実過ぎる。

唯でさえ不誠実だってのを認めた上で一緒にいてくれているのに。

そんな事を言ってしまえば多分酷い目に合う。

ただ、それでも言わざるを得ない。

 

(……あれ、これ詰んでない?)

 

そんな事に気付いてしまって。

どうすればいいんだ、と立ち尽くしそうになれば。

 

「お、いたいた」

 

「てんく~ん、何してるの~?」

 

今出来れば聞きたくなかった声。

目線を上げれば、冬らしくもこもこに着込んだそのちゃんに。

彼女が押す、金属部分に覆いを被せた車椅子に腰掛けた銀。

 

気付けば駅前近くまで歩いてきていた事を知って。

もう全部言うしか無いかなぁ、と()()()()になった。

 

「ちょっと人生の儚さについて悩んでた」

 

「お前、まだ小学生だろ……」

 

「珍しいね、大赦で何かあった?」

 

嘘でもないし間違ってもない。

ただ、今此処……路上で言うべきことじゃないのは今の俺でも分かる。

だから8割位の真実を口にすれば、呆れの表情と真顔。

 

……これ、下手なこと言うと本気にするよな?

 

「いいやなんにも。 知り合いと話してきたのと……出来れば須美ちゃんを交えて伝えたい」

 

彼女を”美森ちゃん”と呼ぶ時期はある程度すり合わせた。

小学校の卒業式……というよりはその前に来る長い春休み。

つまり引っ越すまではそう呼び、以降は渾名のような形にすると。

 

銀はそのまま”須美”と。

そのちゃんは”わっしー”と。

そして何故か俺だけは戻った名前で。

 

多分、以前に交換した約束が未だに生きているんだろうなぁと、そう思う。

 

「えー……? まあ良いか。 須美なら今商店街で買い物してるぞ」

 

「なんでも明日は饂飩にするんです! って。 自分で打つらしいよ?」

 

「どんだけ力入れてるんだ……」

 

元々今日は四人で鍋の予定だったけども。

その締めは全員揃って饂飩だと言い切ってたから……連続饂飩か。

悪くはないけど、良いのか?

 

「そりゃ力入れるだろ。 天理の頼み事だぞ?」

 

「わっしーなら絶対勝利!! とか言い出すって分かってなかった?」

 

「言いそうだけど其処まで考えてなかった」

 

ならどうするんだ、昼食は外で食べていくって話してたのに先に買い物とか。

この後イネス行くんだろ?

 

「まぁ……流石に須美も分かってるだろ。 多分粉とか買うくらい……だよな?」

 

「暴走すると分からないんよ~」

 

「……急いで追いかけよう」

 

そんな事で、全員の意思が一つになった。

今までだったら多分、二人の手を繋いで歩いていただろうけど。

互いにそうするのも恥ずかしく、また難しく。

指と指だけを軽く絡めて、そっと外した。

そんな小さな事に、深い深い罪悪感を再燃させながら。

 

(三人が望むことなら、文字通り何でもするか)

 

自分に対する罰の意味も。

彼女達に対する詫びの意味も。

色々な意味を込めて、目を一度上に向けた。

 

――――二人は、何かに気付いているように。

感情を宿さない目で、俺を見詰めていた。




変更点:
・初恋はぐんちゃんだよ。


・大雑把にヒロイン候補はわすゆ組+のわゆ組+巫女で想定しています。
・特に今章はその要素が大きく出ると思います。 ハイ。
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