葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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起-14

 

「巫女……って」

 

「私や、天理くんが?」

 

戸惑いが、空間を支配していた。

その中で一番疑問符を浮かべ続けているのは、間違いなく俺。

そして巫女としての役割も併せ持つ須美ちゃん。

 

『鷲尾の子……貴女は少々特殊な立ち位置にいます。

 故に、同種の勇者ならば兎も角。

 嘗ての勇者に対しては……効率は大分落ちるでしょうね』

 

「……同種、って言うと。 そのっちや銀になら?」

 

『はい。 ()()()()()()()()()()()()()()()、ですが』

 

つまり――――どういうことだ?

神具があるのなら、という言い方。

 

媒介を必要とする、そんな何か?

満開や切り札にも近い、()()()()()()()()()()()()()()()種が?

 

『神樹を主に信仰するものでは使用できない――――()()()()()

 天理、お主のように信仰する神が少ない必要性がある』

 

「……は? そりゃ、神樹サマ信仰してんのと変わらなくないか?」

 

向こうは一柱にして八百万の集合体だぞ?

 事実上、多数の神に心を砕いているのと変わらぬよ』

 

だからこそ、祝詞もそれ専用に調整していると。

そう言われて、最初に浮かんだのは国土さん。

 

確かに彼女は神樹に対しての祝詞、儀式は即座に述べられる程度には手慣れている。

言葉の強弱次第で多少の効果の違いがあるかもしれない、とかまで研究するほど熱心で。

それが巫女としての基本であるのなら……まあ確かに、俺みたいな希少種が必要にもなるか。

 

(……あれ? にしては、いつまでも勇者様呼びされ続けてるよな……?)

 

『話を続けるぞ?』

 

「あ、悪い」

 

ふと浮かんだ疑問。

 

それだけ信仰心が強い巫女に、神樹が神託を降ろさないものなのか?

 

考えこもうとした思考を叱責され。

いけないいけないと首を何度か振った。

 

『本来であれば、その……土居と伊予島の巫女の子孫を頼るのが最適なのだろうが。

 伝承が途切れている可能性さえある故、お主がやれ』

 

「いや、やれって言われりゃやるけど……せんちゃん。

 その二人の巫女の苗字って覚えてる?」

 

多少の可能性に賭けて聞くだけ聞いてみる。

俺よりも、同性の人の方が相手もしやすいだろうしという目算を込みで。

 

「確か…………()()()()、だったかしら」

 

そんな質問に返る答え。

…………安芸?

 

「偶然だな、俺その名字の知り合い一人いるわ。

 大赦に所属してる人」

 

「いや天理、それアタシ等の台詞」

 

もしかすれば同名字の派生の……分家の可能性もあるけれど。

あの人がそうだとすると――――。

 

「……でも~。 先生に巫女の力は無い、よね?」

 

「そうね。 普通の職員……いや、普通でもないのかしら?

 私達と大赦を繋ぐ役割を持ってる人、っていうのは間違いないけれど」

 

やはり、頼れる相手はいないことになるよな。

その意見は三人も同じで、結局視線は俺へと。

 

「話が逸れた。 それで?」

 

『ああ……その、だな』

 

なんだ、急に歯切れが悪くなって。

目線が揃って編みぐるみへ向き。

少しばかりたじろぐのが見えてしまった。

 

『私が伝えましょうか?』

 

『いや、良い。 ……あー、その、だな?

 初代勇者達は神々の武具、或いは神々そのものが武具へと変化したモノを利用している』

 

「大葉刈とか……だよな」

 

「土居さんが神屋楯比売(かむやたてひめ)、伊予島さんが金弓箭(きんきゅうせん)

 私が大葉刈……乃木さんが生太刀(いくたち)に高嶋さんが天ノ逆手(あまのさかて)ね」

 

他の武具の名前に関しても指摘が入る。

それを最も知っているのは、共に闘っていたせんちゃんだろうから。

 

『奉納していた生太刀を持ち出していた罰当たりのお陰で助かった、とも言えるな。*1

 まあ、それは良い』

 

大事になるのは先の二人だ、と告げるワカ。

って言うと……土居さんと伊予島さんでいいんだよな?

 

『その二つの神具の持ち主……神とは吾等も面識がある。

 その上で告げるが――これはどの神具も同じだが――()()()()()()宿()()()()()()()()()()

 

「…………え?」

 

疑問符が、当然のように漏れた。

それも、全員から。

 

それもそうだ。

神本人から未熟だ、とでも断言されたようなものだったから。

 

『神屋楯比売に支佐加比売命。

 何かを護ることに特化した女神と、何かを癒やすことに特化した女神。

 特に、後者は神樹の中心……()()()()()()()()()()()()()()()

 

死者の蘇生。

死の否定、とはまた違う魔法じみた……奇跡のような行為。

 

『故に、死の寸前で踏み止まり続けるというのは納得がいく。

 行くが――――正しく扱えているなら。

 女神と共にあるとするのなら、その程度で留まっているのが異常なのよ』

 

その程度、と言い張る神。

けれど、俺はその言葉へは否定的な姿勢を崩さない。

 

「なら、俺が何を出来るっていうんだ?」

 

戦いの中で身に付けること。

他者から学び、学習すること。

その何方もが使用者の役割だとするのなら。

 

『分かっているだろう? 女神と、その担い手を繋ぐこと』

 

今のお主にはこう言った方が良いか、と。

その目は、新たな試練を告げようとしていると感じていた。

 

『恐らくは、その力の大半を費やした女神達をその身に降ろし。

 女神の代替として、その者たちとの縁を繋ぎ。

 万全な状態で送り出す役割』

 

神の力を借り受ける。

現状二柱……増加しても、十に足りぬ神の数。

けれど、その力は人が操るにはあまりに強大過ぎる。

 

つまり。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その担い手を、各々の女神と見立て。

 我等が義父殿……その和御魂の見立てとして成立させる』

 

神と神具の担い手との間に入る中継機。

勇者へ神の力を変換し受け渡す変換器。

その全ての苦痛を、肉体を以て代替する。

 

女神を結い上げ、花束とする根幹に座す

 それが――――嘗ての勇者達を救う策と知れ』

 

――――()()()()()()()()()()()()

*1
「のわゆ」原作では当然本物ではなく、奉納されていた刀に霊力が乗り移った姿。




・この策は「現状の神樹が荒御魂化している」ことに対する対称として成立する方策。
・勇者が全て女性であり、神樹の中心の逸話が多数の配偶神に彩られているから行える方法。
・その力を引き出す為の手段、違いも神樹と同等。 『仲良くなればそれだけ力を与える』。
・違いはたった一つ。 神樹は寿命が存在し、巫覡は神の力を変えているだけ故に肉体的負担=限度。


・要するに:『デートしなさい。 世界を救う為に。』

※尚、巫女がいる場合は負担が減るだけでどっちにしろ実行しなければならない模様
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