葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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「うーん」

「どうかしたのそのっち」

「てんくんが反応してくれなかったなぁ、って~」

「待ちなさい何見せたの」

※小説を見せた画面外


承-3

 

『夢の中で姿を見た……ですか』

 

「直感だけど、アレは唯の夢じゃなかったと思うんだよな」

 

起床後。

気付けば二人が寝床に潜り込んでいたので(顔を見られないうちに)逃げ出し。

未だに暗い居間、編みぐるみ二体と相談を始める。

 

新年だと言うのに、年が明けたことを祝う前にこんな相談するのもどうかと思ったが。

二人に言うのではなく、二柱に言うのならまあ許される気がする。

一応礼儀として「明けましておめでとう」とは伝えたけれど。

 

「なんというか、呼(・)ば(・)れ(・)た(・)? 感じ?」

 

『……ヒメ、何方だと思う?』

 

『まず間違いなく神屋楯比売の方でしょうね』

 

俺自身が感じたこと。

そして導いた存在と見かけたもの物を口にすれば。

明らかに情報が足りていないにも関わらず、それだろうと断じてきた。

 

「一応理由聞いても良いか?」

 

『以前にも話しましたが、神屋楯比売……以後は楯(・)姫(・)としておきますが。

 彼女が司るものは『守護』、その中でも明確に空間を区切った上での障壁系列です』

 

無論八百万、と呼ばれるだけあり似たような権能を持つ存在は幾らか存在するが。

『神の宿る屋、社』と『神殿を護るために立てられた垣根』と明確に名付けられたのは彼女。

 

言霊、という意味合いでも二重にその属性を持つ為に特化している存在なんだとか。

 

『そして、夢も各個人が持つモノと人間が共通するモノがあり……其処は繋がっています。

 『個人の夢』と『共通の夢』の垣根を緩め、招くことくらいなら可能でしょうね』

 

『だが待て、それをするにしても天理を特定する切掛は何だ?

 少なくとも楯姫には接したこともないはずだが――――』

 

正直、神樹サマとこの二柱を除けば神に接する機会など殆ど無い。

勇者、という存在に絡んでいる以上は敵としての神はあるのだが。

 

だからこそ悩むべきところだが……今日の眠っていた時の変化。

そして、彼女との繋がりが頭に浮かんだのはこの冬休みの出来事故なんだろう。

 

「……かなり遠い縁だけど、せんちゃんから繋げたのか?」

 

思い返したのは、片腕を握られた状態で眠っていた初代勇者(せんちゃん)。

 

無論他の三人もそれぞれの特徴があって、ドキドキさせられるのは変わらないのだが。

眠っている場面を見る回数が少ない、というのと。

安らいでいるその顔に心を惹かれ、大慌てで逃げ出してきた事が頭の中で蘇ってしまう。

 

(最近誰でも積極的過ぎて……色(・)々(・)困る)

 

朝起きた時、普通にしている時、眠っている時。

そのどれでも、誰かしらが近くにいてくれて……共に過ごす環境。

 

――――眠っている彼女達は、た(・)だ(・)眠(・)る(・)ということさえ出来ていないのに。

 

『だと思います。 個人で特定出来ているなら、案内も必要としなかったでしょうし』

 

「そうなると、ある程度適当に呼んだのか?」

 

『……条件付をしたと考えたほうが妥当だろうな』

 

呼べるなら誰でも良い、と考えたのか。

知ってほしい、とでも伝えたくてあの末路を見せたのか。

神は、やはり人とは違う思考しか持っていないのか。

 

少しだけ浮かび上がった黒い感情は、ワカの否定に依って沈下する。

 

「条件?」

 

『見せられる人間が限られ、同時に救い出せる可能性も限られる。

 その何方も、お主は該当するはずだな?』

 

そう言われると……どうなんだ?

ちょっと考えてみる。

 

見せられる人間、の定義が「巫」であるならば、まあ分かる。

眠る二人と血縁があるとかそういう話は全く無いはずだし。

寧ろそれがあるなら、土居や伊予島とどういった関係になるのかとまた問題が増える。

 

救い出せる可能性、の定義が不明だから此方は不確定だが。

夢に踏み込む手段を持つ、と考えるならまた此方も「巫」の才能。

そして、恐らくは神具に接する何かを持つ人間ということ。

 

…………かなり自分に都合がいいように考えているのは自覚しつつも。

何とか納得がいく答えには辿り着けたように思う。

 

「……まあ、うん、そうだな?」

 

『少しは自信を持て。 その方が女子達も喜ぶと思うぞ』

 

「悪い、今そういう話してるんじゃないんだわ」

 

但し、茶化すような返答はぶった斬る。

 

仮に喜ばれても今は何の役にも立たないんだ。

……あー、いや。 何にも、ではないか。

 

『兎に角、今助言できることはしました。

 その上で、もう一つ付け加えておくとするならば』

 

「うん」

 

『夢を幾度か見るようならば、見た変化などを書き記しておきなさい。

 その変化こそが、何かに役立つやも知れませんから』

 

こういうアドバイスが欲しかった。

素直に頷けば、不貞腐れているような雰囲気を出す片割れ。

茶化しがなければ素直に尊敬してましたよ、ええ。

 

「それに、ワカ様の発言を繰り返すようですが」

 

「え、ヒメまで似たようなこと言うの?」

 

ちょっと勘弁してほしいんだが。

唯でさえ色々考え事が山程あるっていうのに。

 

『天理と勇者達の関係性の深さは、そのまま貴方を介する力の強さに比例します。

 ……恥ずかしがってばかりではなく、積極性を見せなさい』

 

例えばあのように、と聞こえてしまった死刑宣告。

恐る恐るに後ろを向けば、暗闇の中で立つ二人の姿。

 

「あっ」

 

「…………まーくん?」

 

「……天理?」

 

にっこり、と笑顔が見えた。

にこり、と笑っているのは分かった。

 

暗闇の中。

一切、目は笑っておらずに。

 

「……私達を置いて、一人で相談事?」

 

「二人も繋ぐ?」

 

携帯端末を片手で示す。

身体は壁を支えにしながら、器用に通話画面まで後ワンタッチの状態で。

 

「やめて。 ごめん俺が悪かった」

 

……頭を下げるしか無い、というのは分かる。

 

でも、何でこんなに圧が強くなってんだ二人共。




・圧。

・二柱は気付いてましたが大体始めから聞いてました。
・一人起き出したのに気付いて着いてきた、ともいう。

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