葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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承-4

 

新年、初詣、知り合いの家に挨拶。

そんな幾らかの(正直に言えば面倒くさい)恒例行事を熟しつつのこと。

 

『うわ、うちにまで来てくれたの!?』

 

『そりゃ今年から世話になるかもしれないからな』

 

『お世話してほしいの?』

 

『誰がそんな事言ったよ』

 

白く輝く息を吐きながら、次の目的地……大赦に向かう前。

三ヶ月程後から住処となる生家へ戻りながら。

手土産片手に、先程までお邪魔していた家での出来事をふと思い返す。

 

(大分ご無沙汰だったのに変わんないなー、あの人達は)

 

昔の友人、という体と。

中学入学と同時に此方に戻ってくる、という改めての報告。

 

それらを兼ねて、お世話になっていた二人……友奈の家に寄っていた訳だが。

嬉しそうに……何かあれば頼ってくれ、と言ってくれた二人。

直接縁がある相手でもないのに、こうして人の面倒を見てくれるところは娘への遺伝か。

 

『して欲しい、って言ってくれたらするよ?』

 

『当分は必要ないな……うん、間違いなく』

 

『じゃあ待ってるからね?』

 

打てば返る会話。

銀のような互いのことが分かっているからの短縮会話ではなく。

互いの性質が分かっているから言い合える冗談混じりの会話。

 

異性間、と言うよりは文字通りそれを超えた友人関係が近いのか。

会話内容を聞いて苦笑いしていた、過去と現在の表情さえも一致する。

 

(子供の頃のことなんか忘れてもいいのにな。 結局友奈は()()()()()やれるようになったし)

 

少しばかり過去を回想し、そしてその考えにくっついてきたつい今朝のこと。

その道中、というか出立前も少しばかり面倒だった。

 

『てんくん大赦行くの?』

 

『まあ、一応挨拶がてら』

 

昔の親戚の部下とか、先生やらあの人やらいるだろうし。

特にこうした行事の時こそ忙しいのが一般神官。

労いを兼ねて顔を出しに行くつもりでその報告を全員にした所。

 

『だったら私も行こうかな~、忙しくて外出られないんよ~。

 でも、そういう理由があれば別でしょ?』

 

『……私もついて行っても大丈夫かな?』

 

『わっしーこそ出たらまずくなぁい?』

 

家に閉じ込められて挨拶三昧の二人が文句を言い出した。

 

一応乃木の一人娘。

一応鷲尾の養子で……東郷に戻るとは言え可愛がっている一人娘。

どっちも新年は忙しいの分かっていたことだろうに、今年に限って妙に騒ぐ。

 

(まあ、疲れてそうな顔はしてたが……)

 

一応、どっちの家にも礼儀として顔を出した。

 

その時には笑顔で圧と言うか言質を取ろうとする親への挨拶という戦いがあった。

……まあ、何とか曖昧な笑顔で受け流し。

彼女達の部屋へ逃げ込んで事なきを得た訳だが。

 

後で考えると、アレも罠だったんじゃないかという疑惑が消えないんだが。

まあ、今はどうでもいい。

 

『……言い争ってる暇があれば二人で行けばどうだ?』

 

何故か勝手に進む争いに、無視して一人でいこうと考えたその時。

銀が余計(クリティカル)な一言を言ってくれやがった。

 

『あれ、ミノさんは?』

 

『アタシはパス。 行っても面白くないだろうし、絶対変な目で見られるし。

 後天理、話を無視して一人でいこうとすんのやめろ』

 

『うぇ、見つかった』

 

折角着替えも終わらせて出るつもりだったのに。

銀の余計な一言で電話口の奥がヒートアップした。

 

『私も大赦は遠慮しておくわ。 出来るだけ関わりたくない場所だから……』

 

炬燵に潜り込んで丸まるせんちゃんは猫のようで。

下手に手を伸ばしたら引っ掻かれそうだなー、なんて思って意識を逸らしていたが。

 

『わっしー、駅で集合で良い?』

 

『ええ、そうしましょう。 逃げたらあとが怖いからね、天理くん』

 

二人は一瞬にして協力し、逃げることを決めたらしい。

それに合わせて俺の予定も強制で決められ、結局三人で駅で合流。

人の家への挨拶ということで二人は俺の家で待っててもらったんだが。

 

(電気もまだ通ってないのに無茶させたよなぁ、多分)

 

隙間風とかがないのは以前確認済み。

そして、一度足を運んでいる須美ちゃんもいるから任せていいかと思ったんだが。

予想以上に時間を取られてしまって今がある。

 

少しばかり小走りで家へと戻り、玄関口に手を掛ければ軽い感触。

鍵を掛けていないのか、と疑いながらも扉を開ければ。

 

「おかえり~」

 

「おかえりなさい」

 

上着を脱ぎ、座りながらに玄関口で待つ二人の姿。

 

つい先程別れたばかりで、見覚えのある服装の筈なのに。

妙に視線が上から下まで行き来して、それから漸く言葉が出る。

 

「た、ただい……ま?」

 

何してたのか。

寒くないのか。

幾らか質問や疑問は浮かぶのに、それを言葉に出せない。

 

「それでさぁ、お父さんったら文句言うんだよね~」

 

「分かる分かる。 私は鷲尾のお母さんだったなぁ」

 

最近は……特に年が明ける前まではほぼ毎日のように顔を合わせていた友人。

けれど家の都合で閉じ込められた、外の空気を知ってしまった少女達。

だからこそ、思い切り深呼吸しているようにさえ思う。

 

「てんくんはどうだった?」

 

「何が?」

 

「他の家との付き合い方の話です」

 

身分、というものがあれば掛け離れた二人。

けれど、今となっては大事な二人。

そんな二人が向けてくれる笑顔に。

色々言いたいことは吹き飛んで。

 

「うち…………親戚の家、って前提で言えばそうだなぁ」

 

もう少しくらいは、自由にさせてもいいだろうと。

少しくらいは、共にいてもいいだろうと。

 

「少なくとも、銀……三ノ輪の家とは接するなとか言われてたな。 無視してたけど」

 

「うわ~悪い子~」

 

「理由は?」

 

「俺もよく知らない。 ただそう言われてただけ」

 

雑談に没頭し。

二人の間に座り込んで。

気付けば――――両手を、彼女達に奪われていた。

 

寒さが、体温で消えていくのを感じながら。

当初の目的を、忘れてしまいそうになるほどの時間を。




・貴方と共に時間を過ごせるのなら、みたいな一日。

・この後、国土さんを含めて四人で()()の挨拶がありました。

次のメイン砂糖回誰にしようか案

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  • そのっち
  • ぐんちゃん
  • 国土さん
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