葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「神託……ですか?」
そんな事を聞いた時。
周囲に誰もいないのを確認する彼女が、少しだけ珍しかった。
「うん。 不都合でなければ聞いてもいいかな」
新年の挨拶、というにも関わらず当然のように大赦にいた国土さん。
以前に聞いた限り、この中の学校……及び寮に住んでいるらしいので外に出ることは限られる。
その辺りを踏まえての訪問でもあったわけだが、その考えは正しかったようで。
休憩室のような、食堂のような。
時間と時期が時期だけにがらんとした部屋の隅で、声を潜めて話し合う。
『外』、及びバーテックスの事を知っているとは言え。
その内容次第では平穏な生活自体を脅かしかねない、限られた人間だけが受けられる事象。
下手な神官に聞かれでもしたら、
「そうですね……神樹様の見ている物をそのまま見る、感じでしょうか?
その後の解読などは私達巫女と、その上に一任されている事が多いです」
「一任?」
「考え方、捉え方が幾つかあることだってあるわよね?
それをどう読むか、どう理解するかは神樹様が私達に任せてるんじゃないかしら」
ああ、と小さく頷いた。
聞き返した言葉に、袖を引っ張って囁いたのは須美ちゃん。
ある種近いところがあるからなのか、二人の息は合うように思えた。
逆にそのちゃんは何処か退屈そう。
真面目な子と自由な子では噛み合わない……ということなのか。
或いは退屈ではなく――――もう少し別の感情が混じっているのか。
女の子の気持ちまで全部把握できる訳じゃないから、その辺りは推測が大きいけど。
(……そうなると。 やっぱり神樹サマが何か動いた線は消していいな。
あの夢は、どう見ても俺自身がそのまま見た時の感じだった)
他にも解釈の仕様がある、なら俺自身に何かの変化があった可能性もあったが。
こうまで違ってくると、やはり完全に別物と考えていいと思う。
と、なるとやはりかなり遠い縁を繋げてきたということ。
ワカやヒメが計画し、半ばその方向で動いている……神を束ねる、という方策。
その内、少なくとも楯姫様は相対する権利を得たと認識する。
問題は何を好むのか、とかどんな儀式を踏まえた神様なのか、とか。
確か『大国主命の配偶神』とか言ってたよな。
なら神樹サマ……じゃなかった、八百万の神に捧げる汎用的なものでいいのか。
(神具持ってるならそれに近い何かを感じ取れるなり、近い性質も持ってるって話だが)
選ばれる、ということはそれなりの理由がある。
現在の勇者達の選ばれる基準が、二柱の言う通り『神降ろしの適性』であるように。
初代の勇者達の選ばれた理由は、恐らく『神の司るモノに何かしらが合致・或いは近い』からなのだろう。
せんちゃんがワカとヒメの神具、大葉刈に選ばれたのも。
『死からの本能的な忌避』であったり『
当人に言うつもりはないが、多分知ったら何日か寝込むぞ。
ならば、あの二人の選ばれた基準は。
楯姫と支佐加比売……キサカ姫。
それらの持つ権能、或いは精神性、感情性。
そのどれかが近いということでもあり――――同時に
俺がこんなに子供っぽくなくなった大きな原因の一つが、二柱の影響らしいし。
余計なことしかしねーな彼奴等。
感謝もしてるけど同時に文句もたっぷりある。
「あの……勇者様……?」
いつものように脳裏で考えていれば、いつものような問い掛け。
普段なら俺が何か言うまでは押し黙っている事のほうが多いんだけど。
今日は珍しい。
「だから……それは色々誤解されるからやめてってば」
一回真に受けられて再検査させられたからな。
良く分からない運動やら血液検査やら。
結果は極々普通の一般人判定だったが、アレは今の勇者を調べる試験だろうし。
何方かと言えば初代側に近い以上、判定結果も微妙になるだろうとは予想通りだった。
「そうは言われましても、名前で呼ぶのも気安くありませんか?」
「その呼び方のほうがよっぽど重いよ……?」
常識がズレているのだろうか。
その呼び方に関して何か言われてるんじゃないか、って質問には曖昧に笑うだけだったし。
正直深く掘り下げるのが怖くもある。
彼女に何が見えているのか、聞ける日は来るのだろうか。
「てんくん、この子変わってるね~?」
「多分そのっちに言われたくないとは思うわ」
テーブルにべたりと張り付きながら、少しだけ眠っていたようで。
急に目を覚ましたと思ったらこの言葉。
明らかに呆れている須美ちゃんに、小さく笑っている国土さん。
器が大きいと言えば良いのか。
「余り、こういう事を話せる方もいませんから」
巫女の才能、というのもそれなりに人口がいる四国でも大分限られる。
同年代ともなると更に減る。
神樹様に祈ることが多いとは聞いているが、外の事情を知ってしまうとやはり少しは変わるか。
……悪いこと教えてるの、俺なんじゃないか?
「大赦の中での勉強ってどうなってるの~?」
「教員の資格を持っている方が教えることが殆どです」
その分集中は出来るんですけど、とか。
集中できるのは大切だよね~、とか。
奇妙に噛み合わない話を聞きながら。
俺へ少女達の目線が時折向く度に、小さく笑って誤魔化していた。
多分、考えは――――読まれていたと思うけれど。
翻れば事情を知っている側は特に制限する理由も少ないとも言える。
……推定、巫女と結婚できるのも事情を知っている側のみとしてこの二次創作は設定する。
・くめゆ読み直したら明記されましたね巫女。
・他の勇者である系列見る限り、年齢に応じて能力が下がるのは確実なのか?
・感受性の問題なのか齢七つまでは神の子理論なのか。
・何にしろ幼い子大好きなのは間違いないと思うんだ。
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