葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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※微糖風味の話です


承-6

 

「はぁ」

 

学校が始まり早一週間程。

 

もう此処まで来ると卒業間近というのもあり、授業の濃度も減っていく。

特に近くの中学に進学する奴等が大半というのもあり、ほぼ常に一人での行動をし。

神樹館の方も聞く限りでは似たような状態で、特に三人は色々と知り合いに張り付かれているらしい。

 

(実際、今年いっぱいで全員助けられれば良いんだけど)

 

そんな中で浮かぶのは未だに眠り続ける勇者達。

そして唯一その肉体を喪った、という勇者。

 

助ける、と一概に言っても眠っていた時間を認識していない人が殆どだろうし。

つまり『本来存在しない人間』が6人ほど増えるのと同じ。

 

二人三人程度だったらまだ何とか出来るとしても、それ以上ともなると流石に無理。

名前も下手に出せば疑われてしまうし……どうすればいいのやら。

 

(全員高知の方から引っ越してきた、ってのも無理あるよな~……)

 

花本、という家の発端は高知にある。

 

そう教えてくれたのはせんちゃんで、事実手紙で半信半疑に連絡した所親戚がいたらしい。

(こおり)、という名前の困っている知り合いがいる――――そんな名目での、疑わしい内容。

けれどそれは俺達には引き継がれていなかっただけで、向こうでは代々継がれた秘密だったらしく。

あれよあれよと『存在していた』ことにしてくれた、というのが彼女の真実。

 

とは言え、これが通ったのは知られていない苗字の持ち主だからというのも大きく。

余り迷惑も掛けられないかなぁ、と思いながら一応手紙を送ってはみたのだが。

どうなるかはそれこそ神のみぞ知る、というやつ。

 

(……俺がもう少し何とか出来ればなぁ)

 

「ただいまー」

 

自分のできることを考えつつ。

それでも出来ないことだらけに悩みつつ。

帰宅の声を室内に向ける……これも、以前からは変わったことかも知れない。

 

「おかえり」

 

室内から聞こえる、聞き慣れたような聞き慣れないような声。

居間ではなく、入り口間際……キッチンから聞こえた声に顔を向ければ。

マグカップを片手にお湯を沸かしている様子のせんちゃんの姿。

 

「何か入れてるの?」

 

「ホットミルク……のつもりだったけど、カフェオレにしようかな……?」

 

飲む? と聞かれた言葉に小さく頷いた。

洗い場に立て掛けた俺用のマグカップに手を伸ばすのを見ながら、ランドセルを物置へ。

ワカとヒメもこういう時は空気を読むのか、静かに押し黙っていた。

 

「あ、手だけ洗わせて」

 

「うん」

 

出てくれば、丁度牛乳を温めようとしていた所。

 

水道の前から一旦移動して貰って手洗いうがい。

生家の方なら洗面所もあるけど、こんな家に用意されているものでもなく。

台所を併用するような暮らしで、でも誰も違和感を抱いていない暮らしを満喫していた。

 

「銀ちゃんは?」

 

「そのちゃん須美ちゃんが送ってくるってさ」

 

連絡見てなかったの、と聞き返せば今はちょっと、と言葉が返る。

居間の方からはピコピコと鳴る電子音。

 

「ゲーム?」

 

「悪い?」

 

「いや、せんちゃんの好きでいいと思うよ」

 

余り俺はやろうと思わないで生きてきただけで。

見ている事自体は割と好きだったりする。

 

その人の優先するもの、腕前、掛けた時間。

それが如実に浮かび上がるもの、という意味では芸術とも変わらない部分があったから。

 

「そう」

 

「何? ゲームも好きにできなかったとか?」

 

「色々言ってきた人は……いたわね」

 

ちん、とレンジが鳴って扉を開ければ湯気が溢れる。

 

乳膜が浮かんだカップを他所に、二人分。

既に挽いた後の粉ではあるが、お湯を半分ずつ注ぎ。

牛乳をもう半分入れるのを見ながら砂糖を取り出す。

 

「いつも通り?」

 

「うん」

 

角砂糖じゃなく粉砂糖なのは料理とかでも使うから。

 

料理も少しずつは学んでいるが、舌が弱っているのか味付けが極端というのもある。

ただ、それでも少しずつ『人間』らしさを取り戻し始めた”おねえちゃん”。

 

甘党なのはまあご愛嬌、ということで……大匙で一杯、山盛りに。

俺の方にも大匙で擦り切り一杯、から更に少し減らす。

苦いのも甘いのも普通に行けるからこそ、珈琲系の時は妙に甘くしたくなる。

 

「はい」

 

「うん」

 

スプーンで良く掻き混ぜた上で味を確かめ。

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それぞれがそれぞれのものを持って、居間へと向かう。

 

「今日は何してるの?」

 

「素材集め……? ほら、みんなで遊ぶ時用に色々出来るようにしたいから」

 

「こういうところマメだよね……」

 

湯気を漂わせ。

隣に座り。

小さいテレビ画面を覗き込むようにぼうっと眺める。

 

「……昔も、こんな風に何度か遊んだのよね」

 

「へえ……その時はどんな感じだったの?」

 

「そうね……」

 

何の意味もない会話。

ただの雑談で、けれど知らないことを知っていく対話。

 

 

 

「……一人だった頃の事を、思い出すような感じだった、かな」

 

 

そんな彼女は。

 

少しだけ、笑いながら。

少しだけ、泣いているような。

 

何処か、遠い時間を思い返すような表情をしていた。

 

そっか、と。

そうよ、と。

 

一歩分だけ、距離を詰めて。

ただ、遊ぶ光景を眺めていた。




・おしながき・小説版・四コマの大体は経過している前提の話です。

・これはまだ微糖です。

次のメイン砂糖回誰にしようか案

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