葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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@わっしー


承-11

 

なんというか。

色々と吹っ切れてしまった。

 

(罪悪感がずっと残ってるのは変わらないんだが……)

 

朝から昼……正確に言えば昼食手前までか。

 

手を繋ぐことを望み、駅前で色々と見て回り。

帰り際になって渡された箱……手作り、と言っていた菓子を受け取って。

 

()()()、と言い残し去っていく姿を見送った後のこと。

 

(それを彼女達が望むかって言ったらまた別問題なんだよな……)

 

俺の内心と彼女達の感情。

最初からそれを気にするなら、誰かを選べばよかったという話。

選べず、彼女達は受け入れた。

故に、俺はその責任を引き摺って生きていく義務がある。

 

はぁ、と誰も見ていないことを確認した上で息を吐き。

残り一ヶ月も切った、幾度もお邪魔した鷲尾家へと脚を運ぶ。

 

駅前からでは少し距離があるけれど、頭を冷やすには丁度良く。

同時に須美ちゃんに連絡するにも丁度良かった。

 

『駅前から今から行く』

 

『分かりました、()()()()()()()

 

待つんじゃなかったのか、と文章を打ち込んだが読んだ形跡はなく。

そんなやり取りをしたのが十五分程前。

 

名家が立ち並ぶ方角へは、唯歩いていくにしろ少しばかり遠回りが必要。

普通は車を利用するべき場所を、歩いて向かおうとするのは……まあ、元気が有り余っている証拠か。

 

(……中学になってもあんな行動取るのかなぁ)

 

先程まで、そして朝方の行動。

ある種、小学生だから、子供だから……そんな言葉が先立って。

友人だから、仲がいいから……という言葉の前に『異性』と付き始めるのが中学校だと俺は思ってる。

 

無論、実際に行ったわけでもないし……偏見混じりだったり空想が多分に混じっているだろうけど。

それでも、そんな行動を取って許される可能性がどんどん減っていく場所なのは間違いない。

 

関係性の変化の理解。

大人になるに連れての身体の成長。

それに伴う、今だって俺が苦しんでいるようにちょっとしたことで苦労したりも当然に出てくる。

 

(……俺の知り合いの中で、それを理解してるのって多分二人くらいだよな)

 

三つほど年上の少女。

同年代の少女。

偶然に、何方も黒髪を背負う勇者達。

 

「……ただ、なんか寂しくもなりそう」

 

「何が?」

 

独り言のように言葉を発し。

そして、視線を下へ向けながら歩いていたからか――――少女らしき足元が漸く見え。

聞き慣れた、落ち着いた声色が耳に届く。

 

「……歩いてきたの?」

 

「鷲尾のお父さんとお母さんは二人でお出かけだから、ね」

 

目線を上げれば、紺色の上着に淡い水色の服装の少女。

全体的に……というよりも、”青”を好んで身に纏う彼女の姿。

 

「それなのに俺を家に?」

 

「悪い?」

 

「……いや、全く」

 

ただ、こうした発言を聞いているとさっきの想像が間違っているような気になってくる。

学校では相変わらず堅苦しい『委員長様』と見られているらしいが。

そんな気配は……そのちゃんに色々言う時を除けば。

特に、二人でいる時は微塵も感じさせない。

 

「良かった」

 

小さく笑う、和の少女。

 

鷲尾須美/東郷美森。

二つの名前を持ち、何方も自分のものだと認識している彼女。

 

「ご飯も無駄になっちゃうところだった」

 

「え、其処まで準備してくれたの?」

 

「……嫌?」

 

少しだけ頬を緩めて問われれば。

肩を竦めて、そんな訳無いと行動で示す。

 

今までも幾度もご馳走になって、その度に味の進化に驚かされている相手。

隠し味は愛情、とか言われると照れくさくなるのは互いに同じではあるのだが。

 

「行きましょう?」

 

「ああ、うん」

 

手を伸ばされ。

その手を取るようにすれば、するりと内側へ潜り込んでくる。

 

たまにするようになっていた、腕組みの様相。

ただ、小説の挿絵とかで見かけるものと違うのはその距離感。

 

(……あれ?)

 

完全に寄り添うと言うよりは一歩だけ距離を開け。

腕を彼女の手が握る、というのが今まで通りだったのに。

今日彼女がしたのは、本当に寄り添う形。

真横にその顔が見え、そして手と手が触れ合いながらも腕で結ばれている。

 

「須美ちゃん……?」

 

「?」

 

なにかおかしいのか、とばかりに首を傾げ。

目線の先……つまりは腕を見て、もう一度首を傾げた。

 

「何か、おかしい?」

 

「いや、おかしいっていうか……いつもと違うからさ」

 

「…………ああ」

 

そう言えば、少しばかり不機嫌になったように腕への力が増した。

 

「……言わなきゃ、駄目?」

 

分かるわよね、と言外に告げている。

まあ、それは言われなくても分かるけど。

 

「なんか、普通にしてくるから驚いて」

 

「しないと思うの?」

 

今日って日に?

微かに、口が動いてそう伝わる。

 

「……いや、普通にするよね」

 

「そういうことです」

 

会話として何かがおかしい会話をしながら。

冬の寒さの中を、二人で進む。

 

朝方の多少凍り付いていた地面は既に溶け、やや湿っている――――そんな中で。

ちらり、ちらりと()()()()()()()()()()

 

「…………」

 

傍の少女を、更に一歩近付けさせた。

 

「…………」

 

無言で、寄り添い擦り合う。

 

再びに、目線が噛み合って。

二人共に、何かがおかしくて。

小さく吹き出したのも、同じだった。

 

「緊張してる?」

 

「しますよ!」

 

そんな対話と。

そんな内容と。

そんな小さな願いとを。

手と手の熱のみが伝えている。

 

「…………何処にも、行きませんよね?」

 

「四人が認めない限りは、多分ね」

 

「絶対認めませんから、私より先に何処かに行かないで」

 

「……はいはい」

 

軽口。

真面目な話。

正直な答え。

約束。

 

そんな、当たり前の言葉は。

互いの、手と手だけがいつまでも覚えていた。

 

目と目。

指と指。

熱と熱。

吐息が二つ。

 

それらが重なったのも――――そんな、約束の後で。




・此処までを見て分かると思いますが蜘蛛の巣に絡め取られたのは天理くんです。

・そろそろ「ゆゆゆい」に突っ込む準備を開始する。

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