葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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承-12

 

「そんなに大変だった?」

 

「大変って言ったら失礼じゃん」

 

「……それもそうね」

 

自宅、と呼べば良いのか仮住宅と呼ぶのが正しいのか。

結局其処に戻ってこれたのは、夕方を超えた夜に踏み込んだ時間帯。

 

特に具体的に何かをしていた、と言うわけでもないのだが……。

彼女の家に出向き、二人で過ごしていると時間が消し飛んでいる。

 

写真を見たり、他愛のない話をしたり。

最近はパソコンを利用した情報収集にも熱を上げているらしいが、凝り性なのだろうか。

 

肩を良く回したりストレッチを心掛けている、というのは()()()()()良く分かる。

色々と疲労が貯まると言うので肩を揉んだりだとか、お茶を飲んだりとか。

後はおやつの時間帯に出されるモノの品評だったり、今特に注目する料理の内容だったり。

 

話題が尽きない……いや、出す話題が似通っているから終わらない、のか。

だからこそ、名残惜しそうにする彼女と別れるのは大分遅くなり。

そうしてから自分の身体に溜まった疲労に気付く、というのも幾らか見受けられる光景で。

 

「じゃあ……そんなに楽しかった?」

 

家に戻ってきた時、迎え入れてくれたのはせんちゃん。

銀はどうしたのか聞いてみれば、無言で指を寝室へと向けた。

どうやらあの後も熱暴走したような状態のまま、部屋でゴロゴロとしていたらしく。

顔を出さないのもそれが理由らしい。

 

『多分寝てるんじゃない?』とは彼女の言葉。

流石に寝顔を覗きに行く勇気は今の俺にはない。

 

「それは……まあ、うん」

 

そして最後、と銘打った彼女の希望。

そうして求められたのは……理由は良く分からないが、”好きにさせてくれる”事。

一も二もなく頷けば、横になることを求められ。

言われるままに床に横になれば――――。

 

『人にするのは初めてだけど……』

 

膝の上に頭を載せられ、何処からか取り出したのは……推定、耳掻き。

 

何事か、と思えば曰く。

『昔の友人が良くやってあげていた行為だから』とか何とか。

……初代勇者だよな、多分。

 

「えい」

 

自分の手ではなく、他の人の手で操られる長物を耳に入れる。

初めての体験というのも当然に有り、お互いに緊張しているのも確か。

 

……彼女との距離が極めて近いのも、その絶対的な理由の一つだろう。

 

「怖いからやめてって!?」

 

「ならあんまり楽しそうに言わないで。 妬いちゃう」

 

なので、一切顔を動かせずにされるがまま。

軽い雑談は挟みながらも、それでも完全に身を任すことへの本能的な恐怖も有り。

冗談だと分かっていても、口にする内容にビクビク反応してしまう。

 

「……そんな事言ったらさ」

 

だから、せめて口では言い返す。

聞いていないことを教えて欲しい、と口にする。

 

「なあに?」

 

()()()()()()()()、って言うよ?」

 

普段なら、決して聞くことでもないのに。

 

「当たり前じゃない」

 

極めて当然の言葉。

何を当たり前のことを、とでも言いたげな口調。

でも、その頬は微かに紅に染めている。

 

「私からも聞いて良い?」

 

「うん」

 

「…………まーくんは、嫉妬してくれるの?」

 

何に、にもよるけれど。

彼女が、俺の知らないことで表情を変えること。

特に……悲しそうな顔をすることに対しては、多分。

 

「嫉妬……って言葉とは違うと思うけど。 多分」

 

「そう」

 

「そうだよ」

 

そして、一度言葉を閉ざす。

 

――――互いに、恥ずかしがっている内面を落ち着けて。

それでから、もう一度口を開いた。

 

「せんちゃんから、その……昔の友人の事結局聞いてないよね?」

 

ああ、と口にしたのは。

互いに今逃げ場がないのが分かっているから。

 

そして、今まで口を濁していた内容でもあるから。

 

「……良く上里さんが乃木さんにやってあげてた、って事じゃなくて……よね」

 

「それはそれで聞きたいけど、また別」

 

それを真似た、と受け取れば良いのか。

してあげたいから、としてくれたのか。

受け取り方が違いすぎて風邪引きそうになるから考えないことにする。

 

「ずっと伏せてるけど……俺にも言えないこと?」

 

「……まーくんだから、言えないこと、かも」

 

「俺……だから?」

 

そう。

小さく呟きながら、右手を軽く捻りつつに引っ張り出し。

反対側、と言って反転させる。

 

彼女の腹部を眼前に、横目で見れば彼女の顔を覗き込め。

微かに響く心臓のような音が、腿の辺りから伝播する。

 

「……神様のことについて少しでも知ってる人なら、笑い話にもならないこと。

 私達は誰も知らなくて、だからこそ流してしまったこと」

 

その顔が……少しだけ寂しそうで。

腕を伸ばして、その頬を両手で挟み込んだ。

 

「……つまり?」

 

「聞きたいの?」

 

「教えてよ、”おねえちゃん”」

 

「寝物語には早いわよ」

 

耳掃除の手を止め。

真上から、真下から。

互いの瞳が互いを見詰める。

 

聞き返された言葉に、嘗ての呼び名で呼べば。

嘗ての――――触れられなかった頃のように。

膝枕のような体勢は変わらないままで、額に手を当てて優しく微笑む。

 

「……まあ良いわ。 ワカ様達が言うには、()()()()()()()()()()らしいから」

 

そうして、せんちゃんが口を開く。

互いに互いを見詰めたままで。

他所に目線を向けることを許さない、とでも言いたげな体勢のままで。

 

神様の基準で、『食べる』ってどういうこと?

 

「食べる?」

 

そんな、馬鹿らしい風に……聞き返してしまった。

 




・若葉様達の状況説明も挟んでたら長くなりました。
・この二人はお互いに口にし合うくらいで丁度良いです。


・銀は「幼いながらの恋愛関係」
・そのっちは「年下少女と年上の青年」
・わっしー/東郷さんは「年齢に不釣り合いな婚姻関係」
・ぐんちゃんは「甘え下手の年上彼女とその弟分」
みたいなイメージ。

次のメイン砂糖回誰にしようか案

  • わっしー
  • 銀ちゃん
  • そのっち
  • ぐんちゃん
  • 国土さん
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