葦原天理は巫覡である 作:氷桜
食べる。
食事。
喰らう。
そう言われて浮かぶのは、この間実行していた神から下賜された食事。
神との縁を作り出す行為。
『相手のものを体内に取り込む』という行為は、ずっと昔から存在していたと聞く。*1
分かりやすく、儀式としてもそれらしい行為だからか。
宗教系の儀式として、食べ物/飲み物を介するものは少なくないと二人が言っていた。
「…………取り込む、繋がる、縁を作る……だよ、ね?」
「そうね。 なら、ちょっと考えて欲しいんだけど」
一拍。
口にするのを躊躇うような、その雰囲気。
「バーテックス……今は、星屑とか言うのよね。
「――――は?」
バーテックス……いや、アレを食う?
俺も遠目でしか見てないからハッキリとは言えないが。
少なくとも食おうと思うような存在でも格好でもなかった。
最初は冗談で言っている、という可能性を捨てきれなかったが。
その目は一切ふざけている様子を見せず、故に事実だとして考えると。
(……バーテックスって天の神……の使い魔的な存在ってことでいいんだよな。
巨大化してようがなんだろうが其処は同じ。
……で、それはつまり『天の神の配下』『
人から神へと変わる階梯。
特にこの国……葦原中国という場所で考えれば、その差は明確と言えるほどでもない。
強い能力を持ち、けれどその性格は千差万別に存在する人に近い存在。
だからこそ、
それこそ、現人神という言葉が存在する程に。
「…………バーテックスの、味方になる?」
「乃木さん……私達の実質的なリーダーだった彼女が扱っていたのは、生太刀。
つまり神樹様の……土地神の長の力よ」
そりゃ矛盾する。
ただ、完全にそちらに合一化するという話でもなさそうだ。
少なくとも今までの話を考えれば。
……せんちゃんが倒れるまではそんな様子は見受けられなかったようだし。
「しっかし、なんで……?」
「……仕返し、みたいなこと言ってたわ」
仕返し。
バーテックスを食うことで、仕返し?
…………ウイルスで人が沢山死んだって話あったよな。
ってことは、つまり――――。
「だからこそ、彼女は後から侵食し……自身を呪ったその力への対抗手段を求めた。
でも、その時には自分に対抗できるだけの力……勇者は残っていなかった」
神樹側からの力の供給を止め。
けれど、もう一方から伝わる力で保たれてしまう。
神話上、勝者と敗者は明確に決まっているからこそ。
「そして、上里さんは自分毎彼女を封印したのよ。
自身の後を養子としていた幼い巫女に任せ。
乃木さんの家は、妹さんに任せて……ね」
其処までに掛かった時間が、俺の先祖を介して見ていた感覚で凡そ一年。
その期間で大社を支配し切り、大赦……今へ通じる機関と置き換えた。
既に腐敗している部分も多いが、その辺はどうやら割り切った様子。
「……それで、それをなんとかする手段があるって?」
暴走し続けるであろう、二つの陣営の神の力を持つ勇者を?
「ええ――――正確に言うと、
だから先に二人を助けたかったのよ、と。
目を逸らすこと無く、自身の考えを暴露する。
「どうやって?」
手と手。
互いの顔を抑え合って、見合う時間は長引いて。
少しずつ降りてくる、近付く顔に見惚れながらも話を続ける。
「ワカ様、その知り合い……
「え?」
その目が微かに揺れ。
更に少しだけ顔が近付いて、息が触れ合うような位置へ。
それに比例して、声も小さく……微かに囁くようなものへと移り変わっていた。
「天から来たるものの理。
……私達、西暦時代の勇者はその意味を知ってる。
単純に名前を聞いただけで疑ってしまうくらいには、恐れて嫌ってる」
「それが……?」
「そんな名前を持つ貴方が。
或いは、裏切り者としての属性を持つ神様の巫覡である貴方が。
乃木さんとも契約すればそれで済む」
ワカは、天の神に産まれ……けれど何かの理由で土地神側に付いた。
恐らくその理由はヒメだろうけれど、今はいい。*3
そして、その巫覡である俺は……
だからこそ。 『満開』時には肌を焼かれ、失う痛み程度で置き換えることが出来る。
土地神側として捧げたものを、天の神として受け取り元に戻し。
天の神として下げ渡したものを、土地神として得て修復する。
自分の身体のみを利用する、という前提上だが……それが出来る以上。
「上里さんも、多分それは否定しないし。
寧ろ貴方を助けようとすると思う」
「……うん」
「でも――――ごめんね。 私は……まーくんを譲りたくない」
私以外を多く見てしまう事を嫌って。
私に縛り付けたくて。
私と、こうしていて欲しくて。
「彼女に取られたくないから……無理をする。 ……でも」
そんな私でも許してくれるか、と彼女は言った。
許すも何もない、と俺は言い。
良かった、と小さく笑って。
紅い、赤い舌が俺の唇に触れ。
中に割入り。
吐息と、唾液と、感情とを。
獣のように――――他のすべてを上書きするように。
長く、永い……刻むような接吻は。
互いの事を、嫌でも忘れることがないように。
幾度も、幾度も繰り返された。
「……ぜったい、わたさないから」
例え、彼女達がどう思おうとも。
私が、彼女よりも長く。
一分でも、一秒でも長く。
多分、それは。
彼女に対して抱いた……感情の大きさがあったから。
その肥大だと思って――――同じように、俺も。
彼女の
・西暦勇者が全員重くなる理由です。
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