葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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承-14

 

一週間。

二週間。

 

『卒業式』と銘打った儀式のために費やされる幾らかの時間を過ごした後。

その本番を終えた、その日の晩のこと。

 

「久々にのんびり出来てる気がする……」

 

『色々有りましたからね』

 

『だが、明日は解放の為の戦いだぞ?』

 

「そりゃ分かってるけどさ」

 

せめて風呂に入ってるときくらいはゆっくりさせて欲しい。

余り作れない、自分一人の時間なんだし。

 

……今日の昼間は、まあそれなりに色々あった。

普通なら家に戻って遊んだりするんだろうが、俺の立場上そういう訳にも行かず。

 

協力者、兼現状ではもう半ば大赦からの監視及び保護者として共にいた先生と合わせ。

()()()三好さんとも顔を合わせた上で若干の引き継ぎ。

その後には笑顔なんだか作り笑顔なんだか分からない三人の両親との対談、その他。

 

精神的に疲労したが……所々でワカ達のフォローもあったからか。

少なくとも子供として見られない基準は満たせたかな、とも思う。

 

(小学生だから、と甘くしてもらえてた部分は絶対あるだろうからなぁ)

 

ざぶん、と湯に浸かり空気を泡に変える。

はしたないですよ、とかいう声は聞こえないし聞かない。

 

(……本来だったら、あの三人とは此処で別れててもおかしくないし)

 

銀は随分と久々に親と話し。

やはり結論として完治するまでは最低でも俺が預かる方針を改めて固め。

 

そのちゃんは大赦に手を回し、ついでに親を説得し。

『先代勇者』として、或いは『友人』と共に過ごすことを選択し。

 

須美ちゃん……いや、もう東郷さん、或いは美森ちゃんか。

彼女は最も神樹に選ばれる可能性を持つ次代の勇者候補の傍へと送られる。

「鷲尾」も「東郷」も、何方の名前も引き継ぐ以上は……次代の名家の顔の一つになるのも見えている。

 

そんな三人に比べ、俺が持つものは遥かにちっぽけなもの。

 

生まれ持った時に名付けられた名前。

偶然に持ち合わせた、適性と繋がりから得た知識。

そして、多少の()()()

 

(…………もっと、色々と動けるようにならないとな)

 

俺がしたいことではなく。

彼女達がしたいことは、俺のしたいことと同義だからこそ。

その為に出来ることを更に見つけたい。

 

吐息と共に、面倒くさい考えを全部流しだし。

ぷは、と空気を吸いながらも考えるのは新しいこと。

 

(新しい勇者……絶対美森ちゃん以外にも招集してるよな)

 

俺が顔を合わせられるか、は別問題としても。

名家側という立場が強い先代勇者達に比べ、大赦側の意向を強く持てる部下は一人二人いると思う。

だから、まずはそれの把握と考え――――傾向の読み取り、と言った所か。

 

それに、同じ市から引っ越してきたとは言え全員と顔見知り……親しい仲、と思われるのもアレ。

絶対に視線が集まって動きにくくなるし。

 

その辺もどうするか相談しないと駄目……かなぁ。

 

「やるべきことは多いよなぁ」

 

『なんです、急に』

 

『多感な年頃なんだ、気にしてやるな』

 

「その言い方のほうがよっぽど気になるんだが?」

 

戯言、文句。

なんと言い換えればいいかは分からないが、それでもちょっとイラッとしたのは確か。

 

『まあ確かに、やらねばならないことが多いのは分かりますがね』

 

『風呂上がりのこととかな』

 

「やめろ思い出させるな」

 

そして、若干現実逃避しているのも確か。

 

バレンタインデー()の後、ほんの少し。

……一歩だけ関係が進んだ四人は、もう少しだけ欲望に素直になった気がする。

 

『天理ー、ちょっと勉強教えてくれない?』

 

銀は当たり前に部屋に出入りするようになった。

家族にだけ見せるような、少しだけ露出が強い……気が抜けた格好もし始めた。

たまに目のやり場に困って口を出すが、照れたように笑われるとどうにも言えない。

 

『てんく~ん、今回どうだろ?』

 

そのちゃんはアレ以降、時折に本の真似をしたがるようになった。

自分で書いた本であったり、買った小説だったり、ネット小説だったり。

その時に違うけれど、()()()()が多いのは間違いなく。

気取るような、化けるような真似に嫌でも慣れてしまっている。

 

『その…………どうですか、天理くん』

 

美森ちゃんは朝晩、時間を見つけてはやってきて料理するようになった。

……もう少し言い直すなら、中学から俺達は弁当での生活に切り替わる。*1

その際の練習とか、一人分作るなら二人も変わらないから、とか。

……俺が自分で作る時間はあるのかは不明。

 

『ほら、まーくん』

 

そして、せんちゃん。

誰かといる時はそうでもないが、二人きりになるとスイッチが入るのか。

間近にいたがるし、自然と此方に近付いてくる。

凄く懐いている猫……のような印象。

 

『あの子達も変わりましたねえ』

 

『……変わりすぎている気もするが』

 

本当だよ。

 

『それに、天理も変わり始めていますし』

 

『それ自体は良いことだろう?』

 

一応、最近は朝晩に軽く家の周りを走るようにはしている。

それは、何をするにしても体力面……或いは身体面は大事だと改めて気付かされたからであり。

ほぼほぼ唯一、頼れる男の人からのアドバイスからでもあった。

 

『ですが……』

 

『?』

 

『…………父上の巫女の、あの子。 少々放置し過ぎではないですか?』

 

「国土さん……か」

 

多少時間も作れるようになってきたし。

今度また会いに……話でもしに行こう、と思いながらに風呂から立ち上がり思う。

 

けれど。

――――この時は、あんなことになるとは予想さえもしていなかった。

*1
小学校は不明だがこの小説ではそういうことにしておく。

犬吠埼姉妹の過去を見る限り小学校は出ていたっぽい?ので。




・変化の話と決戦前夜。


・ときメモには爆弾ってシステムがあったよね、そういえば。(何の関係もない)

次のメイン砂糖回誰にしようか案

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