葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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承-15

 

大橋市から電車で待ち時間合わせ20分程。

其処から徒歩で移動すること15分程。

 

人の気配も少ない、少しだけ荒れ果てた()()()()()()土地の中。

幾らかの道具を入れたリュックを背負ったまま、俺達は朝からそんな場所に立っていた。

 

「ここ?」

 

「そうね。 ……人前に出したくなくて」*1

 

そして、普通の人は()()()近寄らない場所。

大赦の人間であっても何があるか分からないからこそ、知るからこそ近寄らない場所。

そういう意味で、二重の理由で護られた土地。

 

『破り方は覚えているな?』

 

『今回は一人ではありませんからね?』

 

「分かってるよ」

 

共に足を運んだ四人に一度目を向ける。

 

「アタシも行ければなぁ」

 

少しずつ治療は進んで、手足から急に力が抜けることは減っていると言うが。

それでも万が一を考え、俺達という存在の肉体を預けることになる銀を除き。

 

「でも、ミノさんだから任せられるよね?」

 

「……私も、動けるかは曖昧だから」

 

「大丈夫よ……結局、精神性の問題だから」

 

飛び込む三人。

 

もう一人の巫女としての役割を担う美森ちゃんは俺と同じで。

実質的に介入できる勇者は二人、そのちゃんにせんちゃん。

問題があるとすれば――――助ける、という手段自体の成功率。

 

「二人共、分かってるとは思うけど」

 

「まず最初は()()()()()、だよね?」

 

「一撃も貰わないつもりでね」

 

勇者システム、という存在ありきで戦ってきた三人。

神具、という攻撃手段と切り札、という自分を切り捨てる行為で生き残った五人。

そんな別々のルールで戦ってきた彼女達は、今回もまた別のルールに縛られることになる。

 

『携帯端末』を介さず。

『神具』を直接に持ち込まず。

けれど、『精霊』に似た力を『巫』を通して得ることで戦う霊体の……幽体の戦闘。

 

何が再現できるか、どれだけの力を示せるのかは各々の信頼性や感情の強さ次第。

そして、俺の限界という制限もあるからこそ縛られる『満開』『切り札』の制限の中で。

心を蝕む天の神の使役物(バーテックス)を撃退し。

俺達で、あの二人を救い出す必要性がある。

 

「準備はいいか?」

 

その為に話した内容は……勇者達にとって必要だったかは分からない。

 

少なくとも、二人共に攻撃を加えたこともあるはずで。

逆に攻撃を受けたことはないからこそ……それを幾億と見た俺だからこそ言えることはあった。

 

防御、という手段は悪手。

全て躱すつもりで。

 

そのちゃんに取っては手札の一つが潰されるのと同じではあったが。

其処は『満開』……新たな武器を作り出す手札、新たな力と結び付く儀式で補える。

無論、その代償は俺が負うことにはなるが。

 

捧げた部位の異変が収まれば、捧げた事実自体が無へと帰すからこそ。

結局は慣れ続けなければならない、慣れるはずがない痛み。

だからこそ、俺は進んでその選択を提示していた。

 

「いつでも~」

 

「ええ」

 

そしてもう一つ。

彼女達のみでそのバーテックスを倒すことは出来ない、という問題の解決法。

 

脳内で作り出している、自身の精神性が形となったからか。

『呪い』にも似た、物質化しているかは分からないが。

助け、傷を負わせることは出来ても最後は眠る二人で行う必要がある。

 

どう立ち向かうのか――――それ自体は、分からないけれど。

それでも、傷を治すために行う神具への接触は必要不可欠。

つまり、俺だけは生身のままであの空間に潜り込む必要性がある。

 

痛みを抱えたままで。

何を失うか分からないままで。

 

「まーくんも、分かってるわね?」

 

「絶対死んじゃ駄目だからね?」

 

「それを心配するのは俺も同じだと思うんだけど……」

 

故に、取る手段は『二人を可能な限り俺へと近付けて貰う』事。

当然、それは勇者を容易に殺すに足る悪意と一対一で対峙することを要求する。

 

その為に必要な力を引き出せば、もう片方への負担が増す矛盾。

……だからこそ、美森ちゃんの持つ巫女としての才能も必要だったわけだ。

 

少なくとも、切り札系列は使えなくとも。

戦闘を継続する最低限度の力を受け渡すのは、この短い期間の関係でも産まれているから。

 

「アタシが一番心配してるって分かって言ってる?」

 

「分かってるよ」

 

「うっそだー」

 

「お前じゃなきゃ誰に俺達を任せんだよ、銀」

 

背中越しに、信頼という名前のバトンを投げ渡せば。

他にいないから仕方ないか、と少しばかりひねくれた返答。

 

禹歩を刻み、草木で作られた結界を踏み砕く。

微かな振動、電気のような違和感。

以前に比べて減ったそれを脳裏で感じながらに、一筋の文字を描く。

 

(…………此処からは、あの二人を助けるための我儘だ)

 

じっと見詰めていた二人。

 

何かを訴えかけていた、と俺が感じた視線。

意思が通じるはずもないのに、対話したと思った最後の遭遇。

 

『……()()()()()()()

 

『……()()()()()()()()()()()()()()ってタマ思う』

 

脳裏に響いたのは、多分神による干渉だったんだろう。

 

作られていた障壁は恐らく拳一発で割れる程度に薄くなり。

その分だけ衝撃や風圧が此方まで届く状態が続いていたから。

 

だからこそ。

 

(……分かってますよ、先輩方)

 

最初の犠牲、なんて言葉。

無かったことにするためなら、やれるだけはやります。

 

結界が割れる音の中で。

微かに聞こえた悲鳴の下へ駆けながら、そんな事を思っていた。

*1
アニメ版・小説版の死亡地点ではない。




・救出作戦開始

・ワザリングハイツさんからすると割と理想的な流れの部分もあるんですよねこの流れ。

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