葦原天理は巫覡である 作:氷桜
足から急に力が抜けた。
それで、ついさっきまで立っていたような感覚から外れ。
自分の足が無いような不安感と、同時に走る幻肢痛。
また一つ、或いは二つ。
失う物を引き受けたのが分かった。
「…………っ!」
「天理■ん!?」
地面に伏せるように倒れ。
本来であれば射手――――射撃手としての役割を持つべき彼女に助け起こされる。
「……悪い、脚が持っていかれたみたい」
「ううん、だっ■ら私が護っているか■……」
ぐわんぐわんと揺れる頭。
半分しか言葉が聞こえず、そのせいで大小がハッキリせずに音を正しく捉えられない。
左腕、両足、右耳。
今回は行動に邪魔が入る部位ばかりが失われていくせいで、一人の行動を阻害してしまっている。
舌打ちをしたのが、彼女に聞かれていなければ良いのだが。
首だけを持ち上げながら、まともに動かない肉体を保護されながら。
推移していく戦闘を眺め。
(……アレが、二人の精霊か)
そんな事を、遠巻きに眺めて思う。
目前に広がっていたのは大きく二つ。
巨大化した盾。
目前に広がる吹雪。
心象世界……と呼ぶのが正しいのか。
伊予島
けれど、俺の半身は何処かで多大な熱を冷やしたと感じ取っていた。
マクスウェルの悪魔のように、熱のみを移し替える祈り。
唯の人の身では起こし得ない、苦痛と言う名の温度変化を互いに入れ替え発現する。
恐らく、その代償に持っていかれたのが片耳か。
(治らない……ってことはないだろうけど、時間掛かりそうで嫌だな)
周囲の声が聞き取れないというのは想像以上に精神に負荷がかかる。
それも、好意以上の感情を持つ少女達のものであれば尚更に。
『……安心しなさい。 私の力で治すから』
……何処かから、苦笑のような声が聞こえた気がした。
「あん■! 先に行■ぞ!」
「■い!」
そうしている間にも、声が届き。
気合を入れる叫び声と共に、巨大化した盾……そして、その側面に張り付いた刃が回転し飛んでいく。
糸か何かが付いていれば創作物の戦闘用ヨーヨーにも見え。
現状では、自分でコントロールできるかは別として投擲物として扱っているように見える。
(ブーメラン? ……精霊を宿してる間なら操作出来る?)
果たして浮かんだ感想はそのままで。
地面に針を刺して大きく飛び退いたバーテックスを追い、有り得ない角度で曲がっていく。
その先は、針の付いた尾のような部分の中程。
「……あ、■なかったぁ~」
「だいじょーぶ■、後輩!」
――――当時は、一切攻撃が通らなかったらしいのに。
「危な■んよ~、先輩~」
「お、お■。 すまん」
そして、それを咄嗟のところでそのちゃんが回避して冷や汗と共に文句を言っている。
……まあ、連携も取れていないならこうもなるか。
「■きます!」
そして、周囲を凍らせながらに
飽く迄嫌がらせ程度にしかなっていないようだが、それで良かったようで。
周囲に捕まりながら、黒髪の少女の隣へと移動する背中が視界に入った。
……何が起きているか、先んじて戦っていた片方の勇者は知っている。
誰が扱っていたのかを、共に闘っていたからこそ知っている。
「土居さ■に伊予島さん!」
「……千景■ん!」
それは、と彼女達の状態を見咎めて。
近くに配置していた一人が、俺達の方を向くのが分かった。
……視界が七つ、同時に処理しているはずだがどうなっているのだろう。
一度聞いてみても良いかも知れない、と苦痛から明後日のことを考える。
「――――大丈■なの?」
そして、発する言葉を選ぶようにして一度舌の上で転がしたのが分かった。
彼女ならそうしてくれるだろう、という無意識の期待。
それに応じてくれた、と考えてしまう自分へ呆れる自分がいる。
「は■。 王子■の力がありま■から」
「……それ■後で話し合■ましょう」
ええ!?と叫ぶような声が聞こえたような。
そんな違和感を無視して、美森ちゃんに問う。
「…………どう思う? 行けるかな?」
「……私も、援■してもいいか■?」
「俺は何も出来ないからね、必要なら捨て置いていいよ」
「そういう■言わ■いの」
弓……そしてシステムが更新した時に合わせて銃へと切り替わった彼女の武具。
弩とは違い、一撃毎の間隔は長くとも火力は圧倒的。
雑魚散らしと対主力用、と言い換えても良さそうな違いを持つ二人の援護用武器。
それを利用すれば、恐らくは……確実に行けるとは思う。
体勢を崩すには十二分な衝撃を持つ事は、今までの活躍を聞いていれば自然と分かる。
「せんちゃん、美森ちゃんからの攻撃で体勢を崩すと思う。
そこを狙って、って伝えて!」
だから、近くにいたせんちゃんの一体に叫ぶようにそう伝え。
改めて介護されていた身体が地面に伏せると同時。
真上で、微かに光り輝き変身しているのだろう事を感じながら。
「確実に宜しく」
「はい」
別の痛み……唇から流れる血液の通り、噛み続けていた事で紛らわせていた痛みが再発しながら。
たぁん、と音がして数秒後。
再度振り回された盾が――――尾を切断するのを、薄ぼんやりとした視界で捉えていた。
・戦闘場面はスキップスキップぅ!
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