葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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承-19

 

散っていく星屑。

戻ってくる四人の姿が、元の服装……内二人は見たこともない私服へ変わり。

一足先に戻っていた美森ちゃんの肩を借りながら、起き上がる。

 

――――まだ起きないのか、と天を見ても変化は無い。

肉体の治療がまだ途中とか、そういう感じだろうか。

 

「……ぁー……はじめまして?」

 

「……そうですね、そうなりますか」

 

「そうだなー、多分お前以上にタマはしってそーな気がするけどな」

 

力を介する必要が無くなったから、体に掛かる負担は幾分か抜けた。

特に問題が消えたのは耳……だろうか。

揺れが収まり、未だに高音域の耳鳴りはするものの声は聞き取れる。

左腕と両足が死んでるから、誰かに支えてもらえないと歩くことも難しいが。

 

「改めて……葦原天理です。 多分先輩方に言うなら花本の末裔、って言ったほうが良いんですかね」

 

一瞬、名前に目が開くのが分かった。

ただ、その後の先祖の紹介の方に大きく驚いたようで。

何かに大きく納得するように二人で頷いていた。

 

「……花本さんの、ですか? 道理で」

 

「なーんか見た覚えあったんだよな~。 ますずの末もいるのかな?」

 

「二人共、名前くらいは自分で言いなさいよ」

 

呆れたように声を出すせんちゃん。

ただ、そんな彼女にこそ目を向けて何かを言い出そうとしている。

 

「と~」

 

「うお!?」

 

「二人で支えたほうが楽だよね?」

 

その隙を縫って、もう片腕をそのちゃんに確保された。

ギリギリで脚が着いているとはいえ、ほぼ確保された宇宙人のような状態で。

ぷっ、と吹き出してみせたのは土居さん……土居先輩、のほうが良いのか?

 

「向こうは向こうで仲よさげだな、ちかげ?」

 

「別にいいのよ、その分は後で利子付きで払って貰うから」

 

「ひぇ」

 

話がどんどん横に逸れ、その度にせんちゃんの怒りが増すように空気が悪くなる。

一度空咳をした上で目線をこちらに向けて。

 

「えーっと……土居さん、でしたっけ?」

 

「土居球子、タマでいいぞ。 ()()()()()()()()()()()?」

 

「それが良く分からないんですけど」

 

「自分できけ! てんりって呼ぶからな!」

 

……周囲にはいなかったタイプ。

一番近いのは多分銀……から周囲を見る目を少しだけ抜いた感じ。

ただ、異性という面を抜きにするなら一番付き合いやすい気もする。

 

苦笑いを浮かべながら、伊予島先輩へと目を向け。

 

「改めまして、伊予島杏……です。 杏と呼んで下さい」

 

若干はにかむように照れつつの挨拶。

 

「……あの、杏先輩?」

 

「はい?」

 

「先程……タマ先輩?が言っていましたが……王子様、って?」

 

宜しくお願いします、と素直に返事を返そうと思った所。

訝しげというか、怪しむ様子で若干問い詰めるように両横の二人が問い掛ける。

多分、傍から見れば問い詰めているようにも見えたかも知れないが。

この二人は極めて真面目で、そして目の前の先輩も真面目だった。

 

「……私の、憧れなだけですよ」

 

そう言ってちらり、と目線を向けたのは何か楽しげなタマ先輩。

……そう言えばさっき、彼女のこともヒーローとか呼んでたよな。

 

つまり、そういった……何というか、”ヒロイン願望”に近いものを抱いている人、か?

誰でも起こり得る、話の中で自分と登場人物を同一視するアレ。

事実、そのちゃんは分かる分かると頷いているところを見ると似てる気がする。

 

「まあもう、何と呼んでもらってもいいですけどね……」

 

余り筋肉も付かない、痩せっぽちの男で良ければですがと自分を下げつつに。

話を真っ当な方向へと向ける。

 

口の中が鉄っぽいのは、気合で飲み干しながら。

物凄いそれを気にする両隣と斜め前方二名。

取り囲まれてるんだけど……うん、口に出されなければ関係ないことにする。

 

「えーっと……二人はまだ目覚めない感じですか?」

 

「寧ろタマ達が聞きたいのだがー、どうやればおきるんだー?」

 

「神具を介してるので、二人が起きればそれに連動して起きるはずなんですけど……」

 

この”起きれば”とは、正確に言うなら傷が治り次第。

毒素が精神世界で消え去ったから連動……対照の法則により肉体からも抜け出たはずで。

ただ、それなりに時間が掛ることは分かっていた。

だからこそ待っているのだが……予想以上に長い。

 

『天理』

 

『そのまま黙って聞きなさい、少なくとも他の者に気付かれぬよう』

 

(へ、ワカにヒメ?)

 

そんな折。

唐突に脳裏に過ぎった、二人からの声。

危うく声を漏らしそうになって、止められたことで()()()()()()()()()()として対応する。

二人の肩、胸部に手が流れそうになって危うく踏ん張りながら。

 

「だいじょーぶ~?」

 

「無理はしないで下さいね?」

 

「いや大丈夫、多分長くても今日中には良くなる気がするし」

 

そんな口を聞きながら、脳内での二人との会話。

頭をかなり使う会話手段なので、普段ではやりたくはないのだが。

嘗ての……叔父叔母がいた頃に身に付けていたからか、咄嗟でもまだ対応できた。

 

『お主等が救助に成功したのは此方でも把握した』

 

『直に目覚めるでしょうが――――問題が一つ』

 

(……と、言うと?)

 

目線を周囲に向け、話に参加しているように聞きながら。

 

「ああ、二人共。 多分起きたら色々身体が固くなってると思うから気をつけて」

 

「……前よりも、です?」

 

「あんずはガッチガチだからなぁ。 色んなところはやわらかいのに」

 

「た、タマっち! そういう事は言わないで!」

 

二人が告げる言葉に意識を傾ける。

 

神樹が介入した

 

『現実世界で先程、魂を内側に取り込む現象が起こりました。

 恐らく、貴方も目覚めればその中に引き込まれます』

 

(は?)

 

言葉の意味が分からない。

魂を、神樹の中に取り込む?

それは俺達から仕掛けようとしていた行為。

 

だが、その理由も原因も分からずに。

聞き流しそうになる脳を再活性させ、聞き逃さないように気合を入れ直し。

 

『神樹の中の……唯一戦死した御魂が呼び寄せたようだ』

 

『ワカ様の盟友様のところに向かいなさい。

 街の外、樹海の奥。

 恐らくですが――――』

 

一拍、間が空いて。

 

『神樹の中でも、荒御魂から目覚めつつある神がいると思われます。

 其の者達の試練を超え、味方を増やして下さい――――天理』

 

…………。

……………………。

 

え、()()ってことは一人じゃないよな? まさか。

 

そんな悪寒と共に。

目の前に光が広がった。




自己紹介パート。

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