葦原天理は巫覡である 作:氷桜
※お読みの話は「ゆゆゆい」です
かち、かち、かち、かち。
妙に響く、旧式の時計の音が部屋を支配する中。
小さく漏らした溜息が契機になった。
「其処までは分かったし、俺も協力するのも吝かじゃない。
ただ、一つ……いや二つ三つ聞いてもいいか?」
「はい」
既にこの時点でそうすることは決めている。
しないとしても帰れることは信用からして分かっているが。
彼女からの頼み、と付けばそれは断る理由のほうが消滅する。
些か面倒な呼び方をするけれど、友人であることは変わらないから。
「一つ、人形を作るのは良いけど、そうした後は?」
「可能でしたら、勇者様に預かって頂きたいです」
「大赦の中……うん、ヒナちゃんが色々弄ったはずなんだけどね。
「それに……外部の土地神様と常に同行している天理様なら安心できますから」
知ってたのか、と聞けば。
勿論気付いていましたよ、と頷く。
……ワカにヒメ、お前等が気付くのと同じくらいにはバレてるっぽいぞ。
そして事情を知らない杏さんは顎に手を当て、何かを思案しているようで。
「二つ、杏さんが同行してきた理由は?」
名前を出せば、考えていた事と合致したからか。
ゆっくりと目線が此方に向くのが分かった。
敢えてそちらを見ることはしないが、妙に目線に熱が籠もっているような気がする。
「アンちゃん? 多分……アレかな?」
「恐らく、天理様が先程まで
ああ、そういう。
要するに精神的に一番近い……というよりも潜っていた縁もあって、か。
ジトッとした目線を向けられるのは新鮮で、それだけで普段と違うのが分かる。
別人、或いは何かの衝撃での変動さえも疑える状態だが。
以前を鑑みれば、寧ろこれくらいで……とも思ってしまう。
たかしーへも目を向ければ、若干苦笑いをしながら小さく頷いている。
一応、彼女も気には掛けているか。
……せんちゃんに彼女のことを伝えたら色々と跳ね跳びそうだな、と思い。
ついでとばかりに三つ目の質問を舌に載せる。
「三つ、その……勇者、って呼ぶ理由について教えてくれ」
「…………今、ですか?」
はぁ、と息を吐きながら聞けば。
一瞬動きが固まったのが見て取れる。
え、なにかおかしいこと聞いたか?
「どうせだし、今教えてくれない? 初めに会った時からそうだったよな?」
……いや、初対面は勘違いだったか。
二度目以降、意識して呼ぶようにしていたような気もするし。
去年一年は更に頻度が増し、笑みとともに伝えることも増えていた筈だ。
だから、理由があるとは思うけど。
「あぁぅ……」
そんな思いを込めての問い。
だが、返ってきたのは顔を赤くするだけの光景。
……え?
「ぁ~、天理君やっちゃったねー」
「天理さん?」
眼前と、背後からそれぞれ違った感情の混じった声。
前者は少しばかりの郷愁を含んだ声色。
後者は寒気を覚えるような、呆れるような声色。
「え?」
「…………いえ、良いんです。 言います」
「無理しなくてもいいんだよ、亜耶ちゃん」
「いえ……多分今言えないとずっと言えない、ので」
一人だけ置いていかれている俺。
それに対し、勇気を出すように……決意するような言葉と共に何かを覚悟した少女。
(……あれ?)
見覚えのあるような、覚悟。
少し前に、向こう側の立場としてなにかしたような。
国土さん側の立場として少し考えると、ちょっと冷や汗が落ちそうになって。
けれど自分で言いだしたことだから、途中で差し止めることも出来なくなった。
「……初めて会って、それからずっと気にかけてくれました、よね」
「お、おう」
「あの頃……少しだけ悩んでいたんです」
神樹様へ祈り続けるのは変わらない。
巫女としての役割を果たすのも変わらない。
けれど、所々で感じてしまう神樹様よりも優先されているような出来事。
上の人、名家、派閥、抱え込み。
歳を重ねるほどに、祈りを捧げ続ける程に。
見えてしまっていた、生臭い部分。*1
一度気になってしまえば、内心で疑問が膨らんでいくのは変わらなかった。
「このまま、ただ祈るだけでいいのか……そんな時に、貴方に出会いました」
そんな折に出会った、何処か神聖な雰囲気さえ漂わせる神官――――つまりは俺。
「多分、あの時に会っていなければ……自分なりに、祈り続けることを探していたと思います」
けれど、そうはならなかった。
初回に出会った時は偶然でも、二度目三度目と続いて。
時折話すようになって、疑問をぶつけ合うように話をして。
大赦から外に出ることは認められなかったから、俺だけが唯一の外との繋がり。
そして、ほぼ唯一の同年代の異性との付き合い。
「気付けば、目で探していて」
考え込んで、悩んで。
他の巫女に相談できるようなことでもなく。
そして、たかしーに出会って。
「気付けば、考えていました」
汗が落ちる。
そんな一つ一つの独白は、俺自身がした覚えのモノと何処か重なる。
他者のいる場所でするべきで無かった、と今更に後悔をしながら。
彼女の言葉は、確かに続く。
「……もう一度だけ、言います。
貴方は、私にとっての勇者様です。
神樹様の力を受けているかどうか、ではなく」
考え方に救われたから。
見るべきものを見て良い、と気付かされたから。
それよりずっと前に……巫女と、それに近い存在としてではなく。
更に一歩、踏み込んだ言葉を口にした。
「
決定的な言葉。
他に間違いないような言葉で。
俺の返答を伺うように、視線を向けて。
「…………うん」
他に発する言葉も思い付かず。
有難う、とだけ口にして。
その場の話し合いは、強制的に終りを迎えた。
千景殿の設立や五穀化派閥などの活動が原作よりも早期に、活発的になっているため気付いてしまった。
変更点:
・「人」の側に残る理由が極めて強くなっている。
・「神」の心に、微かな影響を与えた。
・「姫」の心に、憧れと焦燥感が浮かんだ。
・「巫覡」は異様に焦っている。
・当人認識、仲が良い年下の巫女という方が強くてその他の好意へは深堀したことがないので。
ぶっちゃけ現状誰が好き?
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わっしー
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銀ちゃん
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そのっち
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ぐんちゃん
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国土さん
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あんずん
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その他達