葦原天理は巫覡である   作:氷桜

81 / 249
想定イメージ曲:酔花/Riverside

※微妙にお遊び要素があるので暇なら探してみると良いです


鋪-4

 

ここは何処なのか、という大本の質問に戻り。

この場所は神樹の中に存在する丸(・)亀(・)城(・)の記憶を元に作り出した、嘗ての寮だと教えて貰った。

 

『ずっと昔、私達が暮らしてた部屋を再現した感じが近いのかな?』

 

そんな言葉を最後に、時間帯がズレているのか既に夜ということもあって解散し。

たった一人、悩まされる俺だけが取り残されている。

 

(やらなきゃいけない……編みぐるみの作成と、返事か)

 

『大橋の先、少し進むと樹海が見えてくるの』

 

『ワカさんの知り合いなら、そっちにいるはずかな?』

 

この辺りの土地は、どうやら神樹の完全な管理地域。

将来的に叩いて和御魂に戻すことを考えるなら、こ(・)の(・)土(・)地(・)を(・)制(・)圧(・)す(・)る(・)必要がある。

そう教えてくれたのもたかしーで、今回敵視されていないのも彼女が強引に呼び寄せたから。

 

『でも、次に来る時は敵として認識すると思う。

 神樹様の最も信用する力を再現して、それを人への試練として与える……みたいな感じ?

 全員が全員賛同するわけじゃないから、多分そうやってバランス取るんじゃないかなーって』

 

つまり、次に来るなら完全態勢で来い、と。

……向こうで眠る全員を起こしてから、となるのか。

仲間達と遊びに行く機会はあるのだろうか、とかちょっと考えて頭を振り払う。

 

(駄目だ、集中できねー!)

 

用意された、彼女好みの色……桜色の毛糸玉と編み棒を横に置き。

混乱する脳裏を整理しては、深い深い溜息を吐く。

 

(全く以て考えてなかった……普通にお仲間くらいだと思ってた筈なんだが)

 

当然に浮かぶのは先程の告(・)白(・)。

俺が四人に告げた時と違うのは、俺が受動側に立つからで。

即座に断れなかったのも、結局は俺が優柔不断だから。

そして同時に、彼女に対して負(・)の(・)感(・)情(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)から。

 

(普通に考えれば断れば終わり。

 そのちゃん美森ちゃんが同行した……のもそういうことだよな?)

 

少し前、彼女達も同行して挨拶した時。

女子だけが分かる感覚でそれを感じ取っていたとしたら。

そして、それを知った上での先程の言葉だとすると。

更に重みが増してくるのは分かっている。

 

「ただ、答えない不誠実なことだけはしたくねえ……」

 

ぽつり。

本音が漏れる。

既にクズなのは自分自身が分かってる。

何なら捨て置いてほしいくらいには思ってるし、彼女達ならもっといい相手が見つかる筈だ。

 

何処まで行っても、この内容に限っては自分事。

誰かの為に、なんて口が裂けても言えない言葉。

というよりも誰かの為を思うなら断れば済む話。

だから――――結局、告白した時と同じなのだ。

 

(……ちょっと、もう一度考え直してみよう)

 

それでも、手放したくないと思ってしまうのは。

それでも、と考えてしまうのは。

多分普通の生まれ方を、普通の育ち方でないからかもしれない。

 

或いは、ワカとヒメという二人を知っているから。

ただ二人で完成する世界の美しさを知ってしまっているから。

もっと、と手を伸ばしているだけなのかも知れない。

 

立ち上がり、扉に手を掛けた。

きぃ、と少しばかり軋む音の中。

唯の満(・)月(・)が(・)天(・)に(・)輝(・)く(・)。

確か、今日は三日月だったはずで……そういう意味でも、中と外の時間は違うのだろうか。

 

(……明日からすることは決まってる)

 

編みぐるみを完成させ、たかしーを宿し。

樹海の奥へと……人の身で踏み込み、挨拶を交わす事。

そして、改めて。

協力を要請し、仲間を増やすこと。

 

神としての仲間……もう少し言い直すならワカやヒメの知り合い。

荒御魂に落ちていないことが絶対条件。

或いは落ちていても直ぐに戻せる範疇の相手。

可能ならばそれぞれの神具の持ち主と話ができれば最適。

但し、それにも条件はある。

 

(その神具の持ち主……縁がある相手の同行は必須だよな)

 

浮かぶのは初代勇者達。

いや、たかしーとせんちゃんは既に済んでいると考えれば残り三人。

内一人は神樹の中枢だとするなら、実質的に二人か。

 

そして、前々から聞いている事。

目的を達成するために必要な巫女の数。

その為に、という側面は最初の頃にはあったけれど。

今になって漸く思い出すほどに、何処か曖昧に塗り潰されている。

 

(……………………結局、そうだよな)

 

俺は。

いや、俺に決める権利はない。

少女達の為に捧げる、と決めた考えの一部として。

共にいてほしい、と告げるのならそうしたい。

 

唯(・)の(・)一(・)人(・)で(・)……その願いだけは叶えられないけれど。

 

彼方此方に飛び交う思考の謎に、もう一度溜息を漏らせば。

それに合わせたように。

きぃ、と扉が開く音が二つ隣から。

 

確か、二つ隣の部屋は――――。

 

「あ」

 

「あ」

 

顔を伏せようとしたけれど、間に合わず。

先程の告白の主、国土さんが顔を出す。

 

視線が合ったと同時に頬が朱に染まり、目線を伏せて。

遅れるようにして、俺も再度天を見上げる。

 

「……こんばんは、もおかしいですかね?」

 

「……良いんじゃないか?」

 

目線が合わない。

合わせられない。

つい先程の事が互いに脳裏に浮かんで。

 

「眠れない?」

 

「……天理様も?」

 

「集中できない、って感じかな……」

 

多分、様付をやめて欲しい云々は言っても聞いてくれないと思う。

彼女にとってはそれが当然だと分かってしまったし。

勇者、と呼ばれるよりはよっぽどマシだったから。

 

「……ねえ、国土さん」

 

「はい」

 

ぽつりと。

視線を合わせずに、話をする。

 

「前に会った二人……を含めて今は四人か。

 俺、明らかに色々と酷く言われる人間だけど」

 

「はい」

 

「そんな人間を……想ってくれるの?」

 

「そうです、ね」

 

視線を合わせないなら。

互いの顔を見ないで済むから。

浮かび上がってしまう顔色を、見せずに済むから。

自分の酷さを淡々と語ることが出来る。

 

「……多分、私の考えだけじゃない部分もあると思います。

 何処か、神樹様に感じるような感情を抱いていないと言えば嘘になります」

 

ワカとヒメが計画し。

そして、ほんの少しだけ進んでしまった神結いの策略。

ほんの少しだけ神樹に寄せる、ということはその存在と被ってしまう部分も出る。

それが一番最(・)悪(・)な部分だというのは……色々と物申したいけれど。

 

「それでも……私は、自分の意志です」

 

年下の少女は。

俺から聞いた、偶発的な状態ではあったけれど。

そう、はっきりと告げた。

 

「…………答えを、聞いてもいいですか?」

 

――――答え。

答え、か。

 

「まず……俺から言えるのは、やめておいた方がいいってこと」

 

自分の意志を言わない。

 

「後悔して、離れるのならその方がいい。

 寧ろ、ずっといい相手を見つけられると思う」

 

突き放すだけ。

 

「俺は、一人を選べなかった男だから」

 

事実のみを告げて。

 

「――――答えを、教えてください」

 

けれど、少女の言葉は折れずに。

 

「そんな人でも。 ……いや、そんな人に」

 

巫女として、いや人として。

 

「……私は、救われたんですから」

 

彼女の言葉は、妙に心に響いた。

――――悩むことなど、許さないと言い放った。

 

「責(・)任(・)、(・)取(・)っ(・)て(・)下(・)さ(・)い(・)」

 

…………。

少しばかり、涙が混じったような声色に。

俺は、結局勝てなかった。

 

だから。

少女の言葉に、行動で示した。

 

耳元へ。 言葉を。

両手で。 抱き締められ。

強く望んで。 伸ばされた顔は。

受け入れて。 微かに、確かに接した。

堕ちた『巫女』は。 幸福を纏った『人』は。

堕とした『巫覡』へ。 永遠の願いを、口にした。

 

それを。

満月だけは、確かに見届けていた。




・小学六年生と中学一年生相当の会話です

・そりゃじっくりコトコト他の手助けもない中で唯一、それも対等に相手してくれる同年代の異性が純真な子を一年も炙ればそうもなるわ。

・因みにくめゆの記載・メモリアルブックの年表を見る限り
「三ノ輪銀の死亡直後から後継の勇者決め」※にぼっしーとメブの争い
は始まっています。
・本編一年前の現状だと大体候補者の半数が落とされている状態。
・ですので現在ゴールドタワー建築が急ピッチで進行中、メブとの出会いもまだ先、という状態です。

ぶっちゃけ現状誰が好き?

  • わっしー
  • 銀ちゃん
  • そのっち
  • ぐんちゃん
  • 国土さん
  • あんずん
  • その他達
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。