葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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鋪-6

 

かぎ針、鋏にピンセット。

少なくとも俺の年代で自分の部屋にこんな物が置いてあることはまず無い物体達。

それらを手に、左右の手も利用して一つ一つと編んで行く。

 

ぺらり、と捲られる紙の音。

何かを口にすることもなく、一通り目を通しては何かを書き記し。

ペンを変えては何かを書いていく音がする。

 

「…………」

 

「…………」

 

同じ部屋。

同じテーブルを囲みながら。

互いに向き合いながらに、やるべきことに集中をしつつ。

 

「なら……昔の精霊、とは役割が違うんですね?」

 

「扱う場所の違いだと俺達は考えてるけど……。

 勇者システム自体に対策が織り込まれてる可能性は否定できない、かな」

 

時折に、確認するような会話が挟まる。

 

まず優先して進めなければ行けないのが、彼女を此処から出た後に収める器作成。

とは言え、この後に向かわなければならないのは樹海の中。

幾ら()()()()()()()()()()()()とは言え、唯の人間が進むには苦労を強いられる。

 

故に、何日か掛けて踏破することを前提に準備をした方がいい、と。

提言したのはこの地をよく知る一柱(たかしー)

 

彼女が言うとおりであれば、この世界……神樹の内側は『人の魂の一部』を捉える場所。

故に普通に生活をする人々が存在するし、学校だって何ら変わらず運営されている。

けれど、ある一定周期で繰り返される仕組みになっているとも言い。

 

『何と言えばいいかなー……()()()()()()()()()としても使われてる場所、かな?』

 

そんな風に説明をされて、何となくに理解をしてしまった。

 

恐らく、生活面では苦労することはない。

代わりに神樹に常に確認され、何かしらの……勇者、或いは巫の才能があれば神託で伝える。

それらを監視する実体式のモニター、と言ったほうが近いのかも知れない。

 

『だから、時間はあんまり気にしないでいいよ。

 何をしても肉体には影響も出ないから、何をしても大丈夫。

 ……ただ、普通だったら此処から出る際には記憶は断絶されるんだけど』

 

魂の一部だけでなく、そのモノを放り込んだ以上。

記憶は嫌でも継承してしまう、とは追記のような一言で。

 

……つまり、それがなかったらあの告白に関しては何の意味もなかったのでは。

てへへ、と誤魔化そうとする少女へ冷たい視線が刺さったのは一時間程前のことだ。

 

その視線から逃げるように、亜耶の手を取って買い物に出てしまい。

残された杏さんと『どうしよう』と話し合った結果。

互いのやることと、彼女のしたいことをして待つことになったのが今。

 

(……何ていうか、向こうの友奈より意識的にボケてる感じはあるんだよなー)

 

天然ボケと意図したボケ、と言うべきなのか。

多分その差はとても小さく、だからこそにそれなりに大きいと俺は思ってる。

 

はぁ、と手を止めながらにボヤけば。

何かあったのか、と目線を向けられて。

何でも無いですよ、と首を横に振る。

 

何となく、そのちゃんが執筆モードになっているときのような感覚。

彼女よりも色々と気を配ってくれる、というのは多分互いに失礼なんだろう。

そのちゃんもボーっとしているように見えて内面で色々考えてるのは知ってるから。

 

「システムの解析……は流石に厳しい、ですよね」

 

「美森ちゃんなら出来そうで怖いけど……。

 ただ、神樹サマの力を電子的に利用してるって考えが理解できないからなぁ」

 

「……概要は分からなくはないんですけどね」

 

かりかり、と記していたノートを此方に向ける。

其処には彼女が以前研究していた『精霊』に関しての記述。

そして、今の勇者たちにとってのそれとの比較が記されていた。

 

『西暦:神樹様の内側から自分に合う精霊を降ろし、それを以て媒介として神具・肉体を強化』

        

問題になるのは媒介にする存在?

一例として私の雪女郎。 『人を殺す』逸話があるから、そういった意味で安定しなくなる?

王子様を介する場合は不安定になる方向が固定化されるらしい。 経由する神の影響?

 

その他諸々。

一部気になるところはあるが意識して見なかったことにする。

 

「多分、神樹様が私達に与えてくれる()()……を再度戻してリソースにしてるんだと思います。

 その時に、必要以上に力を求める時のリミッター兼フィルターが精霊なのかなぁ、って」

 

「あー……つまり、身体が耐えられる限度以上を仮に与えておいて。

 必要になれば精霊の意思で与えるけど、負荷は当然掛かるみたいな考え方?」

 

そう言えば、と付け加えておく。

 

「ワカとヒメが言ってたんだけど、勇者適性の高い低いって聞いたことある?」

 

「……ありますね。 当時ですけど、友奈さんが一番だったと思います」

 

「あの数値って、神々からすると()()()()()……霊的な媒介としての強弱らしい。

 数値が高ければより多くの力、強大な存在を降ろしても身体が耐えられる器としての素質、とか」

 

そう告げれば。

持っていた書籍を口元に当てて、何やら考え事を始めた。

 

『今昔遠野物語』と書かれた、妖怪などを纏めた一冊の資料。

こういった知識一つ一つが、杏さんの武器の一つであることは間違いない。

 

 

かりかりかりかり、と書く速度が更に増した。

整理するのももどかしいように、最後の辺りのページに思い付いたことを只管に書いていく姿を見る。

そして、その文字の丁寧さ……綺麗さが変わらないことに驚きつつ。

 

(こういう……色々考えられる人がいてくれると助かる。

 相談するにしても別の視点から考えられるからな……)

 

微かに、洗髪料の香りが漂ってくる。

色々と書き記すことで、テーブルに身体が当たって変形するのが見える。

ただ、集中しているその姿のほうがよっぽど綺麗に見えて。

 

とてもじゃないけど、当人には言えないな。

そんな風に纏めながら、再びに編みぐるみの作成に手を伸ばす。

 

そんな時間は、暫く。

二人が帰還するまで続き。

 

――――途中で、同じように。

杏さんが俺を見詰めながら微笑んでいるなんてこともありながら。

ゆっくり、ゆっくりと時間は過ぎていった。




・研究家気質なのと理屈家の会話。

・性質・考え方の面だけで言うなら多分ひなたさん・杏さん・ぐんちゃんの三人が一番噛み合います。
・性格面だとたかしー
・気兼ねなく遊べて悩みを相談したり出来るのはタマっち先輩
・若葉様は多分ある一線を越えるとめっちゃ仲良くなる

・そんな想定。

ぶっちゃけ現状誰が好き?

  • わっしー
  • 銀ちゃん
  • そのっち
  • ぐんちゃん
  • 国土さん
  • あんずん
  • その他達
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