葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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純真な巫女を堕としていく邪悪ムーヴ。


鋪-7

 

その日の夕方。

 

買ってきたよ~と用意された骨付鳥を食べ終えた後の事。

何故こんな戦争になるようなものを買ってきたのかは割と謎。

 

「取り敢えず出来たけど、こんなもんでいいかな?」

 

全員に見えるようにテーブルの上にそれを置く。

 

髪に当たる部分に桜色。

それ以外を私服……或いは現状着ていた服に合わせて黒や灰色で纏め。

手足に当たる部分を組み合わせて段々と細く、丸くして完成。

 

「ワンポイントに見せるように白一筋入れておいたけどこれでいい?」

 

リボン、或いは髪飾りに値するもの。

色々と丸く作成するためにどうしても意匠化は必要となる。

余り混ぜ込めば寧ろ髪よりもそちらが目立ってしまうし、難しいところで。

 

「うわ、凄い……」

 

「趣味の手慰みだけどね……」

 

「自分を其処まで卑下しなくても……」

 

未だ途中の……布と組み合わせた白いリボンは差し出さない。

これは人形とは一切関係ない、俺が作りたいと思って作っているもので。

未だに向こうの友奈にも手渡していない、寂しそうな神様への捧げ物。

 

……後、なんか向こうには普通に布を編んで作ってやるほうが合う気がしたから。

 

「で、二柱の時は向こうで勝手に移ってくれたけど……。

 これで大丈夫なのか?」

 

「うん。 ”私”って判断できる材料はあるし、今こうして繋がりもある。

 亜耶ちゃんって繋がりも残ってる以上は十二分に降(・)ろ(・)せ(・)る(・)かな?」

 

神道には”分け御霊”という概念がある。

 

神を別の場所で祀る際にも用いられる、現代で言うならコピー&ペースト。

ただ、その最も大きい違いは『分けたとしても力が変わることはない』点。

そして『その数に制限は存在しない』という点。

 

半分だけ神、のような状態であるたかしーはこの考えを応用できる。

 

つまり、人である部分……ずっと昔、人であった頃の身を人形の写し身として降ろし。

神としての力は神樹の内側から行使することで、天の神の介入を防ぐ行為。

 

そうすることでの利点は幾つかあるが、多分大きいのは俺と亜耶の二人を利用できること。

神樹の巫女……実質的にたかしーを祀る巫女となっている彼女。

そして、その写し身を持ち……他の神からの薫陶を受けている事に値する俺。

何方を通しても、負(・)の(・)感(・)情(・)に(・)汚(・)染(・)さ(・)れ(・)す(・)ぎ(・)ず(・)に(・)彼(・)女(・)の(・)持(・)つ(・)特(・)性(・)を(・)利(・)用(・)で(・)き(・)る(・)。

 

「しかし、改めて聞くけど良いのか?」

 

「何が?」

 

「いや……便利遣いしてる感じがするからさ」

 

「……それは、私も思っていました」

 

天ノ逆手……天の神、バーテックスに対する特攻。

 

その加護を中継機(ハブ)である俺が得ることで、繋がる勇者達の底上げに使う。

そんな事を提案してきたのも彼女であり、否定する部分は理論的にはない。

ただ、感情的には存在してしまう。

 

「ええ……どかーんと出来るよ?」

 

「友奈さん、そういうことじゃないです」

 

今だってそうだ。

内面では理解しているはずなのに、この空気を和らげる為に変な言葉を口にした。

 

つまり気を使う範疇だからこそ俺にはそれに気付くことが出来。

そして向こうもそれを理解するからこそ、目線で小さく謝意を伝えてくる。

 

「まあ何にしろ、此処から連れ出す手段は確保できたってことにしておく。

 どうやるかは知らないから……渡しておけばいいか?」

 

「あー……うん、恥(・)ず(・)か(・)し(・)い(・)し(・)私自身でやるよ」

 

恥ずかしい、ってどういう手段を取るんだよ。

 

危うく反応して細い目になりそうになって、その言葉が冗談混じりであることに気付き。

分かりにくい言葉はやめてくれないかなぁ、と微かに遠い目を浮かべた。

 

「…………友奈さん?」

 

「アンちゃん、怖い怖い。 待って待って」

 

笑みを浮かべたまま、たかしーに近寄っていく杏さん。

何をするのかは考えないことにするが、ご愁傷さまとだけ言っておく。

 

「……なら、明日にはもう出ますか?」

 

それは、少しだけ小声で呟く亜耶の言葉の方に引っ張られたから。

 

「早ければ早いほうが良いと思うけど……」

 

「それは、そうですけど……」

 

そんな当たり前の言葉を口にした直後。

言いにくそうにしながら、下を向く彼女の反応で何となく理解した。

 

「……寂しい?」

 

「……少しだけ」

 

このまま帰った場合。

唯一大赦に戻る彼女は、再びに一人に戻る。

無論たかしーが常に見ているし、何かがあれば神託だって降りるだろう。

それとはまた別の話。

 

人間としての日常を終えて、巫女としての日常に戻る、ということ。

再びに機構の一部としての生活へと舞い戻る、ということ。

 

記憶を持って戻る、というのはそういうことを意味するし。

――――今の俺達には、それをどうにかする力も手段も持ち合わせない。

 

「……またすぐに会いに行く、って言っても多すぎれば疑われるか」

 

今までよりも急に回数を増やせば。

現状だって「何とか見逃されている」という側面が強いのに、これ以上にともなると。

何かしら大きな理由がいるのは間違いない。

 

「神樹様に仕える日々、に戻るのは喜ばしい事なんです。

 それ自体は私が望むことで、したいことですから」

 

「うん」

 

「でも……会えないことを、寂しがる私もいるんです」

 

おかしいんでしょうか、と小さく漏らし。

何もおかしくはない、と首を振る。

 

「……こういうと、多分失礼なんだろうけどさ」

 

「……はい」

 

「人(・)間(・)ら(・)し(・)さ(・)、を始めたんだと思うよ」

 

ただ一心に祈るだけでなく。

他のことを知った上で、それでも尚祈り続ける。

 

一つの機構から一人の人へと変わり。

悩みを、心を打ち明ける勇気を持った。

 

つまりは多分、そういうこと。

 

「……そんなに寂しいなら、さ」

 

「……はい」

 

「……今日から、皆と色々思い出作ろうか」

 

それだけでも、少しは変わるだろうから。

多分、それはたかしーにも杏さんにも言えることで。

現実世界の皆には心の内で謝りながら、提案したこと。

 

「――――天理様とも、作りたいです」

 

だから。

こうして零した言葉も、多分内側から溢れた欲望の一部。




・思い出つくり、ってなにするんですかね。

ぶっちゃけ現状誰が好き?

  • わっしー
  • 銀ちゃん
  • そのっち
  • ぐんちゃん
  • 国土さん
  • あんずん
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