葦原天理は巫覡である 作:氷桜
「それでこうなるの本当に理解できないんだけど???」
「えー、良いと思うんだけどなぁ。 私達はやりたくても出来なかったし」
「……寮の前で泊まったくらい、でしたっけ?」
「私は、そもそも経験ないです」
順に俺、たかしー、杏さん、亜耶。
寝泊まりする場所が目の前にあるのにする理由が分からないやつ。
少しでも変わった何かを体験したいやつ。
嘗てを思い出して遠い目をするやつ。
目をきらっきらさせてるやつ。
そんな四人が並んで、寮の前の中庭に佇んで。
目の前に広げられた
『思い出を作ろう』。
そんな話し合いは、少女達の提言で一瞬で終わった。
『だったら……前に出来なかったことがしたい!』
『……出来なかったこと?』
『外泊! お泊り!』
おお、というテンションになってのが三人で。
何処に、と少しだけ遅れたのが俺。
と言うより、前にできなかったと言うなら次回……全員集まってからのほうが良いのでは。
そんな事を口にしてみたのだが。
『今は今! 次は次! だよ!』
『すっごい強引』
そんな謎論理で封殺されて。
色々と荷物運びなどで苦労して、気付けば眠るためのテントと鍋が用意されている。
……テントが一つなの、未だに納得がいかないんだが。
「タマっち先輩がいればもっと早かったんですけど……」
「タマちゃんもねー……元気かなぁ」
「多分元気かどうかで判断する基準じゃないと思うんだけど」
二人がどういう状態だったか知ってるはずだよな?
目線を向けてもスルーされる。
俺が乗り切れてないのがおかしいのか? 今って。
「……あの、天理様」
「あ、うん」
「……練習、って考え方ではおかしいのでしょうか?」
「いやー……そういう側面があるのは否定しないし、間違ってないとは思うんだけども」
ちょっと考え込んでみれば、袖を引かれ。
顔を近付ければ耳元でこそこそと囁く。
子供がする隠し事、密かな話のような状況。
頬が少しだけ柔らかく見えるのは、今の彼女の感情が元だろうか。
「あの二人を見て、
そう言って目を向ければ、付き従うように彼女も向けたのが分かった。
「お花とか、見に行きたいですね……」
「ぐんちゃんの思い出の光景とかも見てみたかったなぁ」
「……今じゃ、見れませんからね」
「でもアンちゃんのあの時の案は出来るし叶うよ! 皆がいれば!」
だからもっと練習だね!
だったら私はご飯の練習とかしてみます……!
練習する必要性、そんなにあるのか?
手順書通りにやれば……まあちょっと戸惑ったのはあったが、普通に組み立てられたし。
野外炊飯は確かにコツはいるとは思うけれど、気合を入れないと不味いことなのか。
そんな疑問を抱えつつ。
二人の会話が向こうの方から聞こえて、目線を戻す。
同じように、隣の彼女も目線をこちらへ向けていた。
「あれで?」
「……ちょっと、自信が無くなってきました」
凄いな初代勇者。
俺の知る限りだと自分の意見をそう簡単に曲げない子を簡単に曲げてみせた。
多分、全く以て嬉しくない尊敬だろうが。
「ただ、ちょっと羨ましくは思うんだよな」
「……羨ましい、ですか?」
ぽつり、と漏らす言葉に反応が返る。
日常的な話をすることは多分、此処が初めてで。
互いの公のことしか知らないからこそ、今互いに知り合っている。
そういう意味では、この時間も大事だったのかも知れない。
「俺だと、多分彼処まで乗っかれないからさ」
今みたいに色々と言葉の横槍を入れてしまうと思う。
こればっかりは昔からの癖が抜けない。
危ないことをしそうな時には、その最後の押し留めには役に立つのだが……。
(友奈は……雰囲気壊すのが嫌で余り口出ししなかったからなぁ)
無理矢理に笑みを浮かべ、ぎこちないながらもついていく。
他の友人に迷惑を掛けないことや、いっそ踏み込みきっていれば
そうでもなければ後で辛そうな顔を、一人で浮かべるだけ。
その時と比べてみると……。
少なくとも、今のたかしーは向こう側に転じきってると思う。
それだけ、初代勇者達の仲は普通の時なら深く重いモノだったんだろうと予想が付く。
何しろ、
「……それは、それでいいと思います」
「そうか?」
「はい。 ……天理様の気分も、分かりますから」
寧ろ、
そんな事を漏らしながら、横目で再びに二人の方を見詰めている。
「ヒナちゃんと若葉ちゃんも……ぐんちゃんもタマちゃんも。
皆で、またやるんだから」
「はい……はい! あのときとは変わったんですよ、私も!」
俺には理解できないこと。
二人でだけ共有して、嘗てを懐かしみながら再びにそれを楽しもうとする。
『思い出』を共有する側と、しない側。
その差が明白に別れた、今この時。
「でも」
「うん」
経験していない側だから、言えること。
羨ましいと思う側だから、思うこと。
そんな言葉を口にする。
「たまには……何も考えないで、遊ぶのも大事なんだと思います。
私には経験もありませんけど……天理様は、どうですか?」
――――そう言われて。
思い浮かんだのは、三人の勇者達と遊んでいた頃のこと。
銀が大怪我をする前、こういう状態になる前。
唯の友人として付き合っていた頃と……その後。
時間が自然と経過する、あの感覚。
ああ、と自然と声が漏れていた。
「……駄目だなぁ、言われなきゃ分からなかった。
全く経験がないわけじゃない、か」
「でしたら。 先輩として、色々教えてください」
「俺が?」
「…………慕い上げる、唯の
そう、言い換えたほうが宜しいですか?」
「……君にまでそういう事言われると、臓腑がキュッとするからやめてくれ」
くすくす、と笑う中で。
そっと手を伸ばされて。
その手を取って――――二人で盛り上がり続ける、その中へ。
亜耶は意図して1の意味合いで言っている。
・亜耶ちゃんつよーい。
ぶっちゃけ現状誰が好き?
-
わっしー
-
銀ちゃん
-
そのっち
-
ぐんちゃん
-
国土さん
-
あんずん
-
その他達