葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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鋪-10

 

「さて」

 

全員が全員、一度身を清めて。

その上で寮の前に集合して、樹海の前に立つ。

 

「これが、樹海」

 

「勇者でもなければ見ること無いもんねー」

 

唯一その存在を視認したことがない羽衣姿の少女が零し。

歩けるかを心配するような口調に。

彼女の分まで荷を背負った、桜色の半神は安心させるように言葉を紡ぐ。

その胸元には、俺が作り上げた編みぐるみ。

 

当初は……それこそ、俺が持つという話ではあったが。

昨晩のことを考え、此方との縁を少しだけ強めようと俺から頼み込んだ。

 

神降ろしの器としての縁を紡ぐ為、彼女の霊体との接点を増やし。

そしてこの世界と現実世界の両方で作ることで対照させる。

『霊体』(このからだ)に編みぐるみを付属させることも進めはするが。

実体と霊体、何方も繋がっている方が効果は安定するし強くなる。

 

『同じものは繋がっている』。

『縁を持つものは薄くとも繋がっている』。

 

そんな、呪いとしても利用された手法*1を紡ぐ為であり。

同時に、()()()()()()()()()()()()()()()為でもあった。

 

「この奥……ってどれくらいなんだ?」

 

「果ては……恐らく、日本列島の端まであると思います、けど」

 

ふとした疑問に。

装束姿の……勇者姿の少女が、()()()()()()()()で反応する。

 

今朝方、と言うには深夜を挟む時間帯の騒動を半分程は覚えていたらしい少女。

お陰で朝目覚めた時の状態には焦っていたが、それはそれとして何処か満足そうで。

楽しそうに口遊んでさえいたから、深く追求するのはやめておいたが。

 

()()()()()()()、とかじゃないよな……?)

 

流石にないだろう、と予想していることは口に出さない。

 

ただ、タマ先輩に俺。

少しばかり小柄の、今の彼女の身長に及ばない二人を特殊な呼び方で。

ちょっとだけ疑ってしまったのは申し訳なかったか。

 

「そんなに遠くまで?」

 

「恐らく……ですけど、四国の外まで樹海が続いているならそうだと思います」

 

実際の状態を、俺は見たわけではない。

飽く迄伝聞、或いは微かに()()光景の一部。

神樹サマによって守護されている四国の外は、天の神……荒御魂の結界に覆われているという。

 

不毛の、熱気に溢れた土地へと変貌したそれ。

恐らく、中心に据えられたのは「太陽」、或いは「光」。

幾つかの逸話で語られ、けれどその多くで力を発揮しないとある神。

 

和御魂と荒御魂とは、神の表裏であるからこそ。

平穏を保ち続けた存在が反転してしまえば――――そうなることは予想も付く。

そして、俺達の最後の目的はそれを元に戻すこと。

 

出来るのか、ではなく。

やらねばならない、宿命にも似た決意。

 

「特に、此処が神樹様の中でしたら……この土地は、地の神の物でしたから」

 

「ああ……国譲りの話か」

 

確かに、一時期所持していた逸話が正しいのならば。

土地の記録が残っているのにも納得は行くが。

 

「ただ、それでも……そんなに広く樹海にする必要もないよな?」

 

「……恐らく、ですけど」

 

「樹海にする、ではなく……()()()()()()()()()、のでは?」

 

あまり良く考えずの言葉。

それに順々に反応する少女達。

少しだけ遅れて、自分でも自分なりに答えを出せる問い。

 

「……しない、ならまだ分かるんだが()()()()?」

 

ただ、その考え方は少しだけ俺のものと違っていた。

 

現状、天の神の結界によって塗り潰された地域。

つまり監視する理由も無いのだから、樹海として埋めておく。

俺としてはこの方向性で答えを出していたのだが。

 

「高嶋様も言っていましたが、この場所は神樹様の内側。

 そして魂の一部を引き入れている、というのがありました……よね?」

 

「あったな。 そんな事出来るのは流石神様だと思ったけど」

 

「多分……その時に、現実世界との差異を反映してる……のだと思います。

 一定期間で繰り返す、って話も友奈さんがしてましたし」

 

そう言われると、確かにそっちの可能性のほうが高く感じる。

つまり、反映する元が存在しないから対応できない。

だから樹海は樹海のままで、変動しようにも変化した後が荒れ地じゃ意味がない、か。

 

「……ん? そうなると待てよ」

 

「どーかしたー?」

 

三人で立ち止まって話をしているからか。

一人置いてきぼりのような、唯一諸々に詳しい彼女も近寄ってくる。

 

……寧ろ、此方の様子を伺っていた?

割りとありそうだな、と思いながら口を開いた。

 

「いや、ほら。 次の時のこと考えるとさ。

 食事とか諸々どうすんだろう、と思って」

 

「ああ。 私じゃ無理……だけど、ちゃんとした神様ならだいじょーぶだと思うよ?」

 

「いや雑だなおい」

 

産み出す権能を持つ存在。

移動する権能を持つ存在。

 

そうでなくとも、この土地であればある程度自由に力を振るえるというのだから。

意識して力を抑えている彼女以外は信用していいと思う、とはたかしーの言。

 

「信じる者は救われる! って言うじゃん?」

 

「確かに救われてる俺達が言えることじゃないんだけども……。

 じゃあ……うん、感謝してみるか。 たかしーさまー」

 

「え、いや私はやめて?」

 

神樹サマと、初代勇者達がいなければ俺達は此処に存在していない。

だからははー、と仰々しく頭を下げれば露骨に嫌がって。

梯子を外された気分になって、表情を変えれば。

 

全員が小さく、笑みを浮かべた。

随分昔にやった、道化の立ち位置。

 

……こういう形なら、悪くはないとも思った。

*1
『丑の刻参り』はこの理論。

また怪奇現象を扱う創作において、髪や血液などの自身の一部を用いて身代わりに出来るのはこれの応用。




・赤嶺のゆーなちゃんはやっぱり凄かったんだね……となる話。
・何も進んでねえ!

ぶっちゃけ現状誰が好き?

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  • あんずん
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