葦原天理は巫覡である 作:氷桜
以前見た時から思っていたことで。
そして実際に踏み込んで思うこと。
(……色々と
高低差、道を塞ぐような根の波。
かと思えば木々が転々とした手入れされたような林の列。
何となく、何が置き換わっているのかが予想できてしまうようで。
そう思っているだけだと、多分迷ってしまうだろう地形の数々。
「だいじょーぶ?」
「寧ろ重くない?」
「へーきへーき!」
そして、少なからず樹海を識るのは勇者達で。
一部を共有できるのは巫女と、神様で。
結果、唯一のお荷物として俺がたかしーに担がれて。
その後をゆっくりと杏さんと亜耶が追うような状態になっている。
「よーいしょっとー!」
「うぉ……!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて、何処か楽しそうで。
普段自分では見られない高さからの光景と衝撃に、少しずつ混乱を覚えては消えていく。
ただ……まあ、道順とかそういったものは決まっているわけではないから。
勘とか感覚とか、不確かなものを頼りにする他無いのだけど。
「随分楽しそうだよね、たかしー」
「うーん……楽しい、でいいのかは分かんない!」
「そう?」
風の音。
葉の音。
生物の鳴らす物音はまるでしないのに、木々が起こす音は意外と大きい。
耳元で聞いた声は、一度目は何も聞こえなかったようで。
二度目に少しだけ大きい声で漸く届いたようで、それを基準として声を出す。
普段使う声よりも響く、腹筋と喉を酷使する声。
多分やりすぎれば痛めるだろう、と自覚症状がある声。
訓練も必要なのかなぁ、と益体もないことを思い浮かべる。
「今まで出来てた事が出来なくて、でもまた出来るようになる……って。
楽しいって呼んでいいのかな?」
だからこそ、その質問は他人にはし辛いものだったと思う。
極端に仲がいい相手にとっては、トラウマを刺激することで。
殆ど知らない相手には説明する理由も、感情も理解できない。
自分の事を後回しに、常に誰かの為に。
それが大前提だからこそ、出来ないことが当たり前となっていて。
それが別の理由で出来なくなったとして、感情は変化して良いのか。
そもそものところで其処が理解できないし……して貰えない。
身体障害や精神的な障害、負担。
そういったものとはまた違う、
自分の中心を他人に置いているからこそ、他者に助けて貰う生き方を自分から選べない。
そんな、かわいそうな少女でかみさま。
そう思い込むこと自体が多分不敬で。
そう考えてしまうことが、彼女を下に見てしまう事で。
けれど――――決定的なところで、俺達の視線は常に同じ高さを保っている。
「でも、
「半分くらいは!」
「残りは?」
「皆とするのが楽しかったから……皆とだったら、かなぁ?」
後ろとの距離がそれなりに空いてきて。
一度足を止めた彼女と、至近距離で会話する。
今はそれほど大声を出す必要はなく。
代わりに感じるのは、極短距離で会話するからこその近さ。
男だからこそ感じてしまう、異性への奇妙な感情と。
それに付随する諸々の関係性への足踏み……は特に浮かばない。
俺の周りには女子しかいなくなっていたから、それなりに落ち着いて話ができて。
彼女の周りには人がいなくなっていたから、対話する距離が狂っていて。
基準が互いにおかしいことになっているから、近くで対話できる相手。
少なくとも――――警戒や緊張とは、今は無縁でいられる相手。
「なら、俺達はその皆に入ってないのか?」
「うーん、入ったら150%になるかも?」
「なんだそりゃ」
こうして話をしていると、改めて思う。
彼女は本来一人にしてはいけない相手で。
けれど、巡り合わせから一人になってしまった相手。
『こうしなければならない』が先に有り過ぎる、もしかしたら有り得た誰かの
「そういえばさ、普段はたかしーって何してるんだ?」
「え? 何、って?」
「今は俺達を引き込んでるからこうして一緒にいるとしてさ。
神様のもとにいる時、みたいな場合……寝てるみたいな感じ、って言ってたけど」
あー、という声。
そんな雑談を交わしながらも、彼女は俺を下ろそうとはしない。
「要するに、神託送って無い時のこと……でいいの?」
「そうそう、それ」
「基本的にずーっと見てるよ?」
一分一秒でも、「こう」だと思った相手を見ている。
全ては知れなくても、自分が喪ってしまったからこそ。
少しでも良い方向へ向けようと、声を発する「権利」を得た存在。
「昔に若葉ちゃんとヒナちゃんが作った……疑似精霊、っていうのがいてね。*1
なにかする時はそのお手伝いが多かったかなぁ」
「精霊を……作った?」
「うん。 って言っても、普通にしてる時は声を届けるだけ」
それも、特定の条件に合致した相手にだけ。
それが精一杯で、物理的に助け出せるようなことは何も仕込めなかったらしいけれど。
「でも、そうやって力を貸してたから天理くんにも気付けたんだよねー」
「え…………って、まさか二人を見てた夢の話か?」
「せーかい。 だから、助けた後で直ぐに呼ぶことも出来た訳」
何処か眩しそうで。
何処か嬉しそうで。
何処か、切なそうな横顔が目に入る。
「ちゃんと言ってなかったね。 二人を助けてくれて、ありがと」
「いや、俺がしたくてしたことだし」
「それでもだよ~」
それ以上は、何も言わずに。
何も言えずに、口に出せずに。
ただ、回された後ろ手への力の加減で思ってしまった。
まだ、したいことがあって。
まだ、やりたいことがあって。
けれど、もうそれは叶わない少女。
口に出すことさえも許されない、『助ける』という理由があってこそ介入できる少女。
――――そんな子へ。
たった一人残された、年上の……子供。
彼女を助ける為に、出来ることとはなんだろう。
思い上がり。
無理。
その言葉全てが、彼女を苦しめ続ける覆いの言葉であるなら。
賢いものなら、賢者であるなら諭すように諦めさせる行為でも。
(…………二人に、聞いてみよう)
俺は、誰かを助ける為にこうして生きているのだから。
「……遅いね?」
「ちょっと戻ってみる?」
「かなぁ……。 アンちゃんに無理させちゃったなら、久しぶりにマッサージでもしてあげよっと」
また一つ、無理へと手を伸ばすことを決意した。
背に伸びた指に触れながら。
そんな事を、思っていた。
・無理
・無茶
・無謀
・そんな言葉で止まってたら多分わすゆで全員喪ってる。
・実際、神を人に『堕とす』という方法は世界各国を探せば見つかる。
・……けれど、この馬鹿がやろうとしているのはもっと直接的だったりする。
ぶっちゃけ現状誰が好き?
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わっしー
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銀ちゃん
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そのっち
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ぐんちゃん
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国土さん
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あんずん
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その他達