葦原天理は巫覡である 作:氷桜
想定イメージ曲:永縁花/Elemental Note
※今回の話と言うよりはたかしーのイメージ曲2
翌日の日暮れ。
――――と言っても、現時点での時間は時計が正しければ夕方の五時。
つまり、ほぼ丸一日空いてしまっているわけなのだが。
「……何、というか誰だったんだ?」
そんな疑問に、返る答えはない。
取り敢えず自分の部屋で休み、全員で何をするにしても明日。
そんな風に取り決めをして別れたからだ。
(露骨……というか明らかに疲弊が不味かったもんな)
戻ると同時に脚から力が抜け、崩れ落ち。
まだ身軽だったというのもあって俺が抱えて戻った巫女。
背中で寝息が聞こえていたから、恐らく精神肉体両面だったか。
先程、皮膚から滲み出た血は掃除し終えた。
若干上着に染みになりそうなのが怖いが……これも持ち帰るのだろうか。
もしそうなれば、確実に四人は色々と問い掛けてくるだろうし。
口には出さないと思うが、それなり以上に感情を抱え込むはずだ。
”行き来”することで消えてくれれば良いのだけど、と溜息を漏らす。
(色々と話すべきこともあるし、やるべきこともある。
中学に入ったら入ったで色々とあるだろうし……)
まず問題になるとすれば神樹館組の三人……だろうか。
同じ市から転校してきた、ということが公になれば……というのは勿論あるが。
普通の生活をしていても、恐らくは銀のフォローとかで関わることは増えてくる。
予めその辺りを公表しておいたほうがよっぽど後の対処で楽な気がしないでもない。
それに今代勇者……友奈に美森ちゃんは確実として、そのちゃんも関わるなら三人。
その人数での末路を把握しているなら、少なくとも倍くらいは見込んで追加すると思う。
つまり、同級生……或いは上級生、下級生。
学校生活の中で関わることになる年代でも勇者候補は選別されているだろう。
(
つまり、他のグループも考えられてはいるんだろう。
誰が勇者になるか、その時にならないと分からない……とするのはちょっと考えが甘い気もする。
なら伝えてはいないものの、ある程度の時点で確定してくるのは明白で。
気を使う、警戒するのはやはり必要。
せんちゃんやタマ先輩、杏さんは言ってしまえば此方の
大赦側には可能であれば見せたくはないし、意思疎通も取る必要性がある。
「やるべきこと、やっぱり多いよなぁ……」
部屋の中は寝具とテーブル、後は少々の荷物以外何もない。
だからこそ、時間を潰す手立てもなにもない訳で。
一度天井を見上げ、小さく吐き出し。
少しだけ眠ろうと、瞼を閉じた。
――――こん、こん。
軽いノック音で目を覚ませば、既に外は薄闇の中に包まれる寸前だった。
時間として……一,二時間程は眠っていたのだろうか。
「ちょっと待って……」
寝起きながらの、ほんの少し乾燥した喉が声を鈍らせる。
恐らく樹海内で叫んだことも影響しているのだと思いつつ。
残っていた水筒の水を含み、そのまま一気に飲み干して喉を湿らせる。
そうした上で、扉の鍵を外して開けば。
「……たかしー?」
髪留めを付け、何故か申し訳無さそうにしている少女。
その理由が分からずに、ほんの少しだけ呆けてしまう。
「ごめん、何かしてた?」
「いんや、少し寝てはいたけど……」
「え、じゃあごめん。 起こしちゃった?」
いやいや別に、と互いに謎の譲り合い。
彼女からすればもう少し寝ていて、と去ろうとするし。
俺からすれば短時間の仮眠のつもりで、寝過ぎたくらいだし。
そんな食い違い故の論争が数分あって、互いに落ち着きを取り戻した頃。
「それで?」
「あぁ……うん。 夕ご飯どうしようかな、っていうのと。
少し話したいなぁ、って」
「多分皆疲れたままだろうし、簡単な……お握りと味噌汁くらいは作るとして。 話?」
ちゃんと確認したわけじゃないが、多分それくらいの材料はあると信じたい。
無いなら閉まる前に少しだけ買いに行きたいけれど。
その前に話、か。
「うん。 駄目?」
「遺った材料見て……足りないのがあったら買いに行きながら、で良ければ」
多分、皆起きれば空腹を訴えると思う。
そしてそれを下手に聞けば恥ずかしがるのも目に見える。
故に、作っておいてラップと鍋の中に置いておくくらいはしておこうかと思う。
「うん!」
そんな、ながら作業でも喜びを見せる。
一周回って申し訳無さのほうが先に出て。
けれどそれ自体を口にすることは出来ず。
一歩先に部屋から出て待っている彼女へ、後を追うように付いて行く。
「えへへ」
「?」
くるり、と反転してみせた彼女は。
そんな当たり前の行動に、当たり前の反応に。
楽しそうに、嬉しそうに微笑んで見せて。
その理由が分からずに、首を捻ってしまった。
「そんなに?」
「そんなに!」
多分、これも相対的なズレの一つなのだろうか。
行こう、と手を引く姿に何処か作り物のような匂いを感じつつも。
けれど、何処か彼女自身の本心も見え隠れしているような実感もある。
されるがままに引っ張られ、連れて行かれたのは台所。
部屋一つ一つにあるわけではない、全員で一室を使うタイプの場所。
料理ができる人に偏りそうだよな、と妙な偏見さえも浮かぶ場所。
「えーっと……あ、駄目だ。 ご飯が無いや」
「乾燥麺が大量に常備されてるけど、下手に茹でておくと延びるよな……。
というかこれ買い込んだの誰だ?」
「え、貰い物なんだけど」
「多すぎるだろ!?」
どう消費するんだ。
というか誰から、どう、いつ貰ったんだ。
目線を向けて、
「…………明日は、これ消費するか」
「おうどん!」
「手伝えよ」
「大丈夫だと思う! ……前ならヒナちゃんが全部一人でやろうとしちゃったし、ね」
今は出来るようにしつつあるのです、と。
ほんのりと、影が見える言葉を漏らした彼女へ。
「……たかしー」
「んー?」
「俺も、君に聞いてみたいことを今思い出した」
――――少女達が酷似している理由、とか。
生前何をしていたのか、とか。
…………寂しくはないのか、とか。
聞けることを、今。