葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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ほんの少しラブコメ?風味。
疲れで脳が死んでるので上手く反応できない天理君。


鋪-17

 

夕食、という名の軽食。

雑談、という名の語り合い。

睡眠、という名の同室での仮眠。

 

結局、昨晩一日で済むような話ではなく。

彼女もそれを望まず、ずっと続いて。

気付けば同室の布団の上、二人で浅い眠りに沈んでいた。

 

「んー……」

 

「…………ぁ、おはよ?」

 

起きた時間もほぼ同じ。

朝に弱いとも強いとも言えないような状態。

ただ、起きることは習慣として成り立っているから。

脳が眠気を訴えるのを冷水で無理矢理叩き起こそうと部屋を出る。

 

空を見る。

 

太陽が――彼女が言うには()()()()()()()――が顔を覗かせたばかりで。

まだ少し猶予はあるとしても、眠ることよりも動くことを優先する俺達だった。

 

「…………昨日の残りでいいよなー?」

 

「うんー……」

 

とは言え、脳が死にっぱなしなのも確か。

ゆっくりと階段を降りていけば、既に台所からは物音。

 

「…………高嶋様達、何方にいるんでしょう?」

 

「…………同じ部屋で寝ている、とか?」

 

かちゃりかちゃり、と立つ音は箸の音か。

そして微かに漂う味噌の香りに、ほんの少しだけ頭が活性化する。

隣からはぐう、と聞こえてきて……苦笑する顔を横目に、聞かなかったことにし。

 

「おはよ……随分寝てたなー……」

 

「おはよー……」

 

暖簾を超えて、二人へと顔を見せる。

 

方や、両手でお握りを齧っている亜耶。

方や、味噌汁を啜りながら此方を見詰めている杏さん。

 

丁度話をしていた相手が顔を覗かせた事に目をぱちくり、とさせているのは二人共同じで。

口の中を全て空にしてから返事をしたのも、また同じだった。

 

「おはよう、ございます……?」

 

「あの、一体何処に……?」

 

そして恐る恐るの問い掛け。

其処まで気にする理由が良く分からないのだが。

まあ別に隠すこともないので、ハッキリと伝える。

 

「夜に話してたら寝てた……んだよな? たかしー」

 

「多分……そう、かな?」

 

俺が最後に覚えているのは、布団の上でゴロゴロとしながら話している場面。

 

どんな運動が体力を付けるのに効果的か、とか。

或いは護身術としてどういう動きが有効か、とか。

将又編み物のことを色々と教えたり、とか。

或いはちょっとした恋の話とかも、夜のテンションの中でした気がする。

 

……女の子相手にするもんじゃなかったな、アレ。

 

「…………良いなぁ」

 

「……私もしたかったです」

 

ぼそりぼそりと聞こえる声。

 

……いや、まあ。

夕暮れまで何かをしなければいけないわけじゃないが。

 

どうする、と目線を向ければ。

少しだけ笑っている。

 

仕方ないなぁ、とでも言いたそうな。

皆一緒のほうが楽しいだろうから、とでも言いたそうな。

けれど、微かにだけ残念そうな色を帯びながら。

 

「…………走った後で良ければ、する?」

 

俺からしたい話というのもないから、聞き手になりそうだけど。

 

「あ、走るなら私も走る。 亜耶ちゃんはその間に()()()()済ませておけば?」

 

軽い提案に乗り気な口振りで。

二人が乗っかりやすいように誘導している。

 

気分が下向きになっていた二人も、その発言にバッと顔を持ち上げ。

そして、たかしーの発言に頷いて答えていた。

 

「……そう、ですね。 普段よりも遅くなってしまいましたし」

 

「いつもの?」

 

「ほら、ヒナちゃんもやってたでしょ。 巫女としての身を清める、ってやつ」

 

ああ、と答えているから……少なからず思い当たるものはあるらしい。

 

眠っていて、あの苦痛の中でも忘れなかった嘗ての記憶の断片。

こうして魂だけが活動しているからなのか、以前よりも活力が湧いてきているような。

俺の勘違いに過ぎないのかも知れないけれど、良い方向に動いている気がする杏さん。

 

そんな姿に、タマ先輩の背中が浮かび。

其処から繋がって、四人の顔が浮かぶ。

 

(……五人は大丈夫かなぁ)

 

こうして、俺を含めて四人とは別の時間軸にいる相手を思う。

無論此方にだって口にされて、受け入れた相手がいるのは変わらないけれど。

数日見ない、会わないだけで少しばかり不安になるのは十分に毒されてきている。

 

「…………」

 

むう、と頬をほんのりと膨らませ。

俺を見ている亜耶の視線に気付いたのはそんな時で。

 

「誰のこと、考えられていたのですか?」

 

ジトッと、湿った目線も混じり。

そんな顔をして欲しくない、と思いつつ答えを返す。

 

「…………残してきた友人?」

 

「大事なのは分かりますけれど……」

 

何か考え事でもあるのか、他の二人へと顔を向け。

同じように俺へと目を向け、視線が三種類集まったことで少しだけたじろぐ。

 

「……今は、私()のことを考えてほしいです」

 

多分、()と言いたかったのかも知れない。

ただ、彼女は後の方に重みを置いた言い方をして。

 

ごめん、と口走ったのはそれに気付いて直ぐ。

 

「……そうだな、本当に悪い。 失礼だもんな」

 

「…………考えるな、とは私でも言えませんし言いません。

 でも――――分かって、頂けますよね?」

 

ああ、と頷けば。

お握りをテーブルの上に置き、一度立ち上がる。

 

とてとて、と歩いてくるのは此方へと。

何だろう、と働かない脳のままで追従していれば。

 

「…………なら、良いんです」

 

恥ずかしそうにしながら。

腕にしがみつかれて、少しだけ慌てる。

 

「え、亜耶…………!?」

 

「……暫くは、こんなことも出来ないんですし」

 

清めれば、こんなことなんか出来るわけもないんだから、と。

他の二人の目線を背負いながら。

初日の焼き直しのように。

 

「一日……もう半日、ですか。

 私達に下さる、お礼です」

 

見上げる少女。

見下ろす俺。

 

その距離は、妙に近く。

それだけ、距離が縮まったのだと思いながら。

 

「…………えいっ」

 

「私もー!」

 

後から後から張り付かれる。

近付かれる理由が全く分からないまま。

妙に好かれる理由に気付け無いまま

 

――――その日を、少女達に捧げた。




・最後の日は省略気味。
・多分ゆゆゆい編は色々酷くなりそう。
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