葦原天理は巫覡である   作:氷桜

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やってることが本編一期の最後みたいなのを再生破壊エンドレスなんだからそりゃそれに近くなるよねって話。


鋪-19

 

急に、目に光が差し込んできた気がした。

 

瞼越しにも関わらず、熱と痛みが酷く。

二度三度と瞬きを繰り返せば、片目で見る視界が何処か滲んでいる。

 

(…………ん、ん?)

 

手足も無理が効かない……と言うよりも一人で立てない。

その状態になって初めて、手足が使えなくなっていたことを思い出し。

同時に戻ってきたという変な実感を得てしまう。

 

「あ…………あー、あー?」

 

特に意味のない言葉。

声が出るか、変になっていないか。

そんな事を確かめるだけのもの。

 

「んん……?」

 

「ふぁ……」

 

「むにゃ」

 

ただ、そんな声が妙に響いてしまったのも確か。

共に眠りに付き、救助に向かった各々も目覚め始めながら。

地面に膝立ちまでの体勢は何とか成ったが、其処からは四つん這いみたいな奇妙な形で。

誰かが起こしてくれるのを待つしか無い。

 

視線の先には、眠ったままの……けれど腹部が奇妙に()()()()()()()()少女達の姿。

それを見て押し黙りつつも、奇妙な現象を見詰める先代勇者。

そして一人、少し離れたところで息を吐きながら起き上がる初代勇者。

 

『天理よ……内部ではどうだった?』

 

胸元からもぞり、と這い出るように。

男性相を想定して作った編みぐるみが顔を覗かせ。

取ってつけたような顔が少しだけ変わり、表情を作る。

 

報告すべきことは幾らかある。

ただ、それはそれとして言いたいことはある。

 

「今の俺を見て最初の質問がそれか、ワカ」

 

『……我等に何か出来るとお思いで?』

 

「それを口にするのも反則だと思うんだが、ヒメ」

 

確かに人形になにかして欲しいとまでは言わんが。

せめて心配くらいしろよ、と思ってしまうのは甘えからなのだろうか。

思わず細い目で見詰めていれば、きぃ、と軋む金属音。

 

「……天理?」

 

「ああ、銀。 悪い、今立てないしそっち向くのも辛い」

 

顔は見えないが、その声だけでホッとしたのは何故か。

知らず知らずの内に向けている感情の重みに、内心で少しだけ苦笑する。

 

「……また無理したのか?」

 

「無理と言うか……何というか。

 ほぼ事前の打ち合わせ通りに進みはしたんだが、散華の場所がな」

 

腕と足。

それだけを見れば今の彼女と同じ。

だからこそ、お互いに助け合うことが出来ずに。

視線さえも向けられず、何とも言えない時間が僅かに過ぎる。

 

「……やっぱりさ」

 

「ん?」

 

「……アタシも、早く動けるようになりたいなぁって」

 

今、この状態でそれを口にする。

 

視線と、そして何となしに伝わってくる感情と。

それだけで、気恥ずかしさと……同時に嬉しさが浮かぶのは。

多分俺がそれだけ甘ったるいからなんだろうなぁ、と自虐する。

 

「……まーくん」

 

声に顔を持ち上げる――――前に。

しゃがみ込まれ、肩を取られるように立ち上がらせて貰う。

半ば脚に力が入らず、安全に帰るなら引き摺って貰うなりは必要そうだ。

 

とは言え、数度の経験上。

一日は掛からずに()()良くなりそう、という予感があった。

 

感謝するよーに、とでも言ってそうな少女の顔も合わせて浮かび。

その辺も纏めて説明する必要を浮かべつつ、帰ってからの雑事として脳内の箱の中に纏めて放る。

 

「せんちゃん……向こうは?」

 

「身体の方は大丈夫そうね。 後はいつ起きるか……だけど、其処まで心配は無さそう」

 

「そっか……後で詳しく説明はするけど、多分杏さんはそう遅くならずに起きると思う」

 

そう、と漏らしながら。

その口調と、何か抱えていることに薄々と気付いてだろうか。

起こした時よりも僅かに力を込められながら、耳元で声がする。

 

「…………知らない、花の匂いがするけど」

 

「……それも後で説明する。 けど、せんちゃんはまず知らないってことはないと思うよ」

 

「? それって、どういう……」

 

誰と、何処に言っていたのか。

そんな問い詰める口調に、ゆったりと返事をすれば。

その内容に疑問を抱くのも当然ではある。

 

ただ、今此処でする話でないのは彼女も承知の上の筈で。

それ程までに気にかけるのは……多分、彼女自身も無意識に気付いていること。

 

「割と重要なことで、多分せんちゃんにも……後は銀にも大きな話だと思う。

 まずはその怪我を治してからだけどさ」

 

肩を借りるついでとばかりに少しだけ移動して、車椅子の足元当たりに座り込む。

道端でこんな状態ともなれば怪しまれて当然ではあるが。

幸い――――と言って良いのか、場所の関係で人影は未だに見えない。

 

「アタシも?」

 

「ああ。 ……そういや、俺達が行ってからどれくらい時間経った?」

 

「時間? ……そーだなー、多分15分くらいかな?」

 

……ってことは、あの内部の時間は本当に考えなくていいってことか。

ほぼ誤差で収まるんだろうし、精神的な年齢を重ねることに成ったとして。

肉体的に変化が無い、なら外部から観測する手段は無いと思っていい。

 

それに、大赦が監視するとしても向こうが崇める神樹サマの中。

余り露骨に対応もできないだろうし、するとも思えない。

 

「……分かった、助かる」

 

「時間見なかったのか? 天理にしちゃ珍しい失敗だけど」

 

「いや……見はしたんだが覚えてないんだ。 それも全員の前で言うよ」

 

「……覚えてない?」

 

「どういう事? 忘れるようなことじゃないわよね?」

 

どういうことだ、と強く問われる。

記憶に影響が出たのか、と疑うような口調。

言い方を間違えたかなぁ、と強く反省をしながらも。

 

「…………ああもう、後でちゃんと言うから今はこれだけにしてくれ。

 ちょっと呼ばれて、数日精神だけのままでいたんだよ」

 

「は?」

 

「あの時みたいに?」

 

…………駄目だ、次から次へと質問が飛んでくる。

しかも今は脚が動かないから逃げようもない。

 

「まーくん?」

 

「天理?」

 

結局、二人の視線にずっと絡まれ続け。

そのちゃんと美森ちゃんという救世主から声が掛かるまで。

ずっと張り付かれながら聞かれ続けていた。

 

ずっと、ずっと。

それこそ、二柱まで耳を欹てながら。




・無事に帰還。 無事か?
・次々くらいからちょっと甘いの+中学校生活やりつつな章の予定。
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