星野アクアはこの贅沢ともいえる空間に男として緊張すればよいのか、感慨深く頷けばよいのかわからなかった。
中庭に設置された植え込みに囲まれたテーブルスペース。ベンチのような椅子もあり、周りは植え込みによって隠れて、見られる心配はないスポット。
男性一名と女性四名。しかも、男女ともに偏差値は70オーバーは硬い布陣。この場に一般人が存在すれば、消滅するような圧の高さの中、有馬かなが口を開く。
「芸能科の人間なら、ここを覚えておくといいわ。ここは暗黙の了解で秘密の話がある時以外は使われないから」
誰かがいたときはおとなしく回れ右よ、と先輩として教えているつもりだろう。もっとも、身長だけならば、最も小さいのだが。
そんな場所だが、今日は入学式ということもあり、誰もいなかった。真ん中に添えられたテーブルに各自の飲み物を用意し、車座に座る。
この場に集まったのは総勢5名。目的は星野アクアから『今日あま』の現場の話を聞くため。
「最初に自己紹介しようか? 入学式で、全員が顔見知りというわけではないよね?」
最初に口を開いたのは、おそらく集まった面々でも一番圧が強い存在。国民的美少女といわれるほどに整った顔立ちをもつ不知火フリル。
「私は、不知火フリル。世間ではマルチタレントってことになる。ドラマも歌もダンスも得意。最近だと『高校生探偵は安楽椅子で熟睡する』に出演した」
ペコリと頭を下げると、左隣にいるみなみに視線を送る。どうやら時計回りのようだ。
「ウチは、キャノンファイア所属の寿みなみいいます。えっと、ミドジャンの表紙とグラビアを最近やってます」
その自己紹介と共に先ほど話題に上がったアクアを見るのだが、アクアにできることはただ目をそらすことだけだった。
「次は私ね。苺プロ所属、有馬かなよ。最近は、その『今日あま』に出演したわね」
それは誰もがわかっている。それが今日の目的なのだから。
「じゃあ、次は私! 苺プロ所属、星野
その先は兄であるアクアに後ろから口を押さえられて、止められた。あらかじめルビーが何を口にしようとするか分かっていたような行動だった。
「ストップ、そこから先は機密事項だ」
「ふがふがふが――――」
口を押さえられたルビーがアクアに何か言いたそうだったが、口にしようとしたことを口外するつもりはないのか、謝っているようにも見えた。
とりあえず、そのまま、というわけにもいかないので、手をはずし、何も言うな、という視線をルビーに向けて改めてアクアは席に戻った。
「えっと、ごめんなさい、何をしているかは言えないけど、よろしくお願いします」
「最後は、俺か。この愚妹と同じく苺プロ所属、星野
一瞬、アクアの本名に対して何か言いたそうな顔もしたが、そもそもアクアとしては愛久愛海ではなく、アクアの名前のほうが有名である。そもそも、長すぎて誰も口にしていない。
「これで全員ね。じゃあ、アクア、『今日あま』について語ってちょうだい」
まるでその場にいる全員の総意である、と言わんばかりに不知火フリルが告げる。これに逆らえる芸能人がいったい何人いるだろうか。アクアは、目の前におかれたペットボトルの水を少しだけ口に含み、『今日あま』の現場について語り始めた。
※ ※ ※
そもそもの話は入学から約一年前にまで話は遡る。
とある事情から有馬かなが苺プロダクションに所属してから数か月後の話である。
「あのぉ……ミヤコ副社長、少しお話があるんですが……」
「あら、有馬さん、何かありましたか?」
このころ、芸能事務所の苺プロダクションは快進撃を続けていた。女優部門では『主演女優しかできない女』星野アイがドラマ、映画で活躍し、男優部門では成長期を終え、子役から脱却した星野アクアが、マルチタレントで活躍、そのおこぼれに預かり日の目をみた役者が吊り上げられるという好循環が生まれていた。
そんな中、プロダクションの副社長である斉藤ミヤコ直属の部署に所属している有馬かなが恐る恐るという感じでミヤコに話しかけてきた。
通常であれば各部署の部長に相談するところだが、有馬かなが所属するのは極秘プロジェクトの部署であり、ミヤコ直属になっていた。だから、役職的には平社員が副社長に直訴するような形になるが、この相談は間違いではない。
「あら、有馬さん、何かしら?」
「えっと……以前、フリーの時にお世話になってた方から、出演の依頼が来たんですけど……どうしましょうか?」
スマホに表示された企画書と送信元をミヤコは確認する。送信元は『鏑木勝也』。企画書は、『今日は甘口で』の実写化に関する企画。ただし、その内容は出資者の所属するモデルの売り込みをメインとしており、かなに求められるのはドラマとして最低限の品質を求めるバランサーのような役割だ。
もしも、有馬かながフリーであれば、喜んで食いついたであろう案件だ。なにせ主演女優。つまり、ドラマの中でも最も目立つ役割で、今まで端役しかもらえなかった有馬かなにとっては千載一遇の好機である。これが誰かの目に留まれば、役者として使ってくれる誰かの目に留まれば、と藁にもすがる思いでかなはその手をつかんだであろう。
ただ、すでに有馬かなは藁にもすがる思いというのは成功している存在だ。ならば、二つ目の藁はつかむ必要がない。
そう必要ないのだが―――
「え? 『今日あま』のドラマ?」
その場に星野アクアがいたことが不幸なのか、幸運なのか。かなが持ってきた企画書に興味を持ってしまった。
「もったいない、というには、ややリスキーですかね?」
「いや、原作は完結しているとはいえ知名度があるから、導線はあるわ。ただ、この目的が気になる―――いえ、ドラマのクオリティよりも優先されるんじゃないかしら?」
そう、通常の作品であれば、ある程度の視聴率を稼ぐために人気のある原作を利用する。だが、今回の作品はある程度の視聴率が見込める作品を踏み台にして売り出したいモデルをキャスティングするという逆の構造だ。これがネットドラマでなければ無理なキャスティングである。
ただし、漫画のドラマ化は意外に難しいものである。その原因としては著作権。絶対的な権限は基本的に原作者が持っている。なので、せっかく実写化しても、これ以上は無理です。と原作者が告げれば、それ以上は放映できなくなるリスクが漫画のドラマ化にはあるのだ。ただし、数年経過しており、すでに完結している作品、ということも鑑みれば、日の目を見るだけ御の字じゃないか、と制作側は考えているのかもしれない。
ただ、この完結しているにも関わらず根強いファンが存在しているというのをどう見るか、である。
制作側は、最低限の数字につながるとみる。演者側は、根強いファンを敵に回すと、と考える。どちらが正しいということではない。どちらも正しい。数字は取れるだろう、だが、下手な演技すれば、見捨てられるか、炎上するだろう。そんなリスキーな企画だった。
企画書と演出者の事務所を見れば、配信はほぼ不可避。低予算、素人、短期間の三拍子が揃った事務所から見ても最悪な環境。たとえ、主演であっても苺プロは、NGを出したであろう。
唯一、引っかかるのは原作が『今日は甘口で』ということだけだ。しかも、興味を持ったのは星野アクア―――苺プロの二枚看板の一人だ。
「言っておくけど、あなたが出るのはダメよ。報酬も、時間も何もかもが足りないのだから」
「わかってるよ」
やや未練がましく、かなの携帯に示された企画書を見ながらアクアが答える。そう、かなが持ってきたのはあくまでも泡沫の役者と新人の寄せ集めのようなネットドラマである。そこに本格派の役者が関わる余地はない。むしろ関われば、即座に予算超過、大御所への影響と企画自体がつぶれかねない影響を与えてしまう。
「でも、これを断るにはあまりにもったいないよな。有馬の主演だし……今のプロジェクトを考えるとしばらく機密だし、これが最後の機会じゃないのか?」
「そうかもしれないけど………」
「有馬の最終目的はあれじゃなくて、女優だ。なら実績は必要だろう」
「……これが実績になるのかしら?」
「まあ、普通にやればただの黒歴史だろうな。ネットの評価に星1が並ぶ光景が見えるよ」
「なら――――」
「ただ、こいつらはモデル志望で、このドラマは自分の知名度向上だ。なら、ぶら下げる人参はいくらでもあるさ」
「いや、あなたならそうでしょうけど………そこまでして苺プロの利益はあるの?」
唐突に持ち込んだかなの企画。普通の事務所であれば、一蹴されるはずの企画。だが、それを真剣に検討するアクアとミヤコ。事務所などというかなが今まで考えてこなかった規模での利益、不利益の話におたおたするしかない。かなは今まで自分の事だけしか考えていなかった。考えられなかった。
子役の時は周囲に言われるままに演じて、ちやほやされて、旬が過ぎて、一人、また一人と離れていって、残ったのは過去の栄光である役者にすがる少女一人。理由があるとはいえ、苺プロダクションに拾ってもらえたのが幸運だったと思える。そんな、事務所に過去の遺産とも言うべき企画を持ち込み、恩人である二人に口論させる。
かなとしては心苦しいほかなかった。だが、主演女優は捨てがたいというのも役者としての本能だ。
わかっている。自分で決めた選択だ。だが、その前にひと花咲かせたいのも役者としての本能だ。だから――――
「副社長! お願いします。我儘なのもわかってます。でも―――でも、私は………役者なんです」
ミヤコとアクアの言い争いに割って入るかな。組織でいえば、いかに無謀かわかる。この場でクビにされても不思議ではない。だが、だが、それでも、役者であることは、ここまでしがみついてきた最後の砦だ。そして、その最後の砦に最後のチャンスが訪れた。ならば、食らいつきたい、というのは役者の本能だろうか。
「だってさ。まあ、新人だし、俺が載るいくつかの雑誌に一緒に載せる話で、やる気も出せるんじゃないか?」
「そのくらい、あなたなら問題ないでしょうけど………苺プロとしてはどうなのよ?」
「元天才子役復活の兆しか? とか、久しぶりの主演、ぐらい打っておけば、ないよりいいんじゃないか? もともと有馬かなのある程度の知名度は必要だったんだ。『今日あま』はファンも多かったし、演出はできる人たち集めてるみたいだ。まあ、鏑木さんならそのあたりは計算してるでしょ」
鏑木勝也―――原作では、面食いなプロデューサー。いろいろとアクアたちとも付き合いが出てくるプロデューサーであるが、今世でも、アクアもお世話になっているし、貸し借りの関係であることに変わりはない。
「ここに演技にテコ入れしてやれば、まあ、星3つぐらいの普通の作品ぐらいにはなるだろう。素人だから付け焼刃だけど」
「う~ん、まあ、ネットドラマだし、そのあたりを勘定すれば、有馬さんの主演女優っていう益はあるわね。あとは出演料とかだけど………」
「鏑木さん、まだ有馬が苺プロに加入したこと知らないからフリー時代のものじゃないか?」
「あ、あの……私は出演できれば、全部事務所でも」
「ダメ、契約通りよ。ただ、まあ、今回は有馬さんの箔をつけるため、としましょうかね」
事務所に所属している以上、それはビジネスだ。ならば、出演料なども問題になってくるはずだが、今回限りは所属前の出演料としてもらえるようで、安心した。
有馬かなを使う理由としては事務所に所属していないため、出演料が安いというのも確かにあったからだ。
「有馬さん、鏑木さんに承諾と契約書を送ってもらってちょうだい」
「は、はい!」
下げていた頭を上げ、ぱん、と胸の前で手を打って、久しぶりの主演に心から喜ぶ。たとえ、問題のありそうな現場とはいえ、主演は主演だ。頑張ろう、という気持ちが心の底からわいてきた。
なぜか、横から視線を感じて、見上げ見るとアクアが微笑ましそうな表情でかなを見ていた。それが子供でも見るような表情で思わずふくれっ面になる。
「なによ………」
「いや――――よかったな」
自分の事のように笑うアクアのその一言で少しだけ救われた気がした。
※ ※ ※
有馬かなは苺プロの事務所に用意されたオープンな打ち合わせスペースに座ってアクアを待っていた。
今日は『今日あま』の初回の顔合わせだ。参加するのは出演者の有馬かなと苺プロから星野アクアが参加する。かなが苺プロに所属したことを知らしめる付き添いだ。
「あ、先輩だ。そうだ、今日って、『今日あま』の顔合わせなんでしょう? 帰ったら台本見せてね!」
おそらく、事務所にレッスンに来たのだろう、動きやすいシャツとズボンという格好でルビーがひょこっ、と顔を出した。
「いやよ。大体、同じ作品に出るわけでもないのに見せられるわけないじゃない」
「え~、ほら、同じ事務所のよしみでさ~」
「ダメよ」
同じ事務所とはいえ、引くべき線はある。気軽に見せられるものと見せられないものがあるのだ。そこを間違えることが致命的な傷になることを知っているかなはルビーの要求をきっぱりと断った。「え~、ケチっ!」とルビーは言っているが、信用は一度失えば取り戻すのに時間がかかる。それはかなが一番よく知っていた。
「で、先輩は何か待ってるの?」
「アクアよ。もう待ち合わせの時間を過ぎてるのに、あいつは―――「悪い、遅くなった」
何やってるのよ、と言おうとした声にかぶせて、事務所の奥から慌ててきたのだろう少し焦ったアクアの声が聞こえた。
「あんたね―――」
「あ、お兄ちゃんがマジだ」
ひぅ、と息をのんだのはかなだった。事務所の奥から現れたのは星野アクア。それはわかる。ここ最近は毎日のように顔を合わせるような仲だ。だから、アクアの世の中でイケメンといわれる容姿には慣れたと思っていた。いや、そう思いたかった。
だが、どうやらそれは間違いだったようだ。細くさらさらな金色の髪はワックスで整えられ、端麗としか表現できない顔は化粧をしているのだろうか、いつもよりも奇麗だった。なんなら肌のきめ細かさはかなよりも上かもしれない。さらにどう見ても高級そうな腕時計を右手首にはめ、着ているシャツ、ジャケット、ズボンは誰が見てもわかるブランドで固められ、胸ポケットにはサングラスがかけられている。しかも、ただ無造作に着ているのではなく、このままモデル雑誌に出られるのではないか、というほどに統一したテーマでまとめられており、一言でいえば―――
「(か、格好いいぃぃぃぃ)」
語彙力が貧弱になるほどの衝撃をかなに与えていた。妹のルビーはさすがに慣れているのか、何でもないように「今日は重要な日なんだ」などと呑気に話しかけていた。
「まあ、初回だからな。ここで決めておけば後が楽になる」
この初めて見る格好はさすがに今回のために用意したものらしい。ルビーの言葉からもあまりやらない―――アクアからしてみれば仕事以外ではやりたくない格好かもしれない。だが、それを今回は仕事ではなく、ただのオブザーバーに過ぎないのにやってきた。何のために?
「(も、もしかして、私のため?)」
あくまで『今日あま』の主体はかなだ。アクアはマネージャー的な役割となる。だが、それでもかなの仕事がやりやすくなるように決めてきてくれた。それが、無性にうれしかった。
「おい、有馬。俺のせいだが、遅れてるんだ。行くぞ」
「あ、待って」
かなの心情を知ってか知らずか、アクアはいつも通りにかなに声をかけて部屋から出ていこうとする。そんな彼らにルビーは「いってらっしゃい!」と送りの言葉をかけていた。
「ちょっと! どこ行くのよ? 出口はこっちよ」
「駐車場だが?」
お互いに出ていこうとする先が異なることに気づく。お互いが何言ってるんだ? こいつは? という表情をしているが、最初に気づいたのはアクアだった。
「あ、まさか、電車で行こうとしてないか?」
「違うの? 私は毎回電車だったわよ」
「はぁ…俺が電車で行けるわけないだろ…」
「あっ!」
かなは子役の時からアクアと同じで苺プロに所属した後は毎日のように顔を合わせているのだ。だから、気づいていなかった。アクアが国民的美少女と対をなすほどのイケメン俳優だということに。
「行くぞ。ハイヤーを予約してある」
「うん」
かなとしては事務所から移動するのにタクシーを使うのは初めて―――子役時代はマネージャーの車、フリーの時は電車―――だったため、やや戸惑いながらも、アクアの後ろをついていく。
玄関とは逆方向の裏口にはロータリーのように直通の道路があり、そこで待っていたのは黒塗りのハイヤー。いかにも御用達という感じで、今のかなとアクアの差を歴然と思わせる。アクアがハイヤーに近づくとドアを開け、中に入らずにかなのほうへ視線を向けた。
「――――なにやってるんだ。早く入れよ」
「えっ?」
エスコートなど受けたことがないかなは、少し驚くが、時間がないのも確かだったため、アクアにいわれるままハイヤーに乗り込む。それに続くようにアクアも乗り込み、ドアを閉め、シートベルトをつけながら、「行ってください」と運転手に告げていた。
「行きますね」とドライバーが告げて、ゆっくりとハイヤーは動き出した。かなが過去に乗った車よりも柔らかいシート、動いているというのにほとんど揺れを感じず、無駄に高級感を感じられた。かなとアクアは、それぞれ街風景が流れる窓の外を見ながらシートに身を任せていた。
「――――あんた、手慣れてるわね。遊んでるの?」
「はぁ? あれくらい普通だ、普通。むしろ、有馬こそ慣れてるだろう。俺より先輩だったんだから」
「………そういう扱いを受ける前にお払い箱よ。ずっと自腹で向かって、自腹で帰ってたわ」
「それは…………すまん」
「いいわよ。ただの事実だもの」
かなの境遇は知っていたものの、アクアの芸能界常識とはずれていたため、居たたまれなさを感じる。そんな空気を払拭するようにふっ、と小さく笑って、揶揄うように口を開く。
「そういえば、ルビーも言ってたけど、あんたその恰好滅多にしないんだって?」
「ああ、準備に時間かかるし、面倒だからな。ただ、出演者達への格付けは最初に済ませたほうが面倒がない。有馬のバックにはこの俺がいるって威圧にもなる」
「へ~、ふ~ん、へ~」
実に冷静に告げられるアクアの仕事モードの格好の理由。だが、それはすべてかなが『今日あま』という地雷のような現場で役者としてやりやすくするための小芝居。
かなのためにアクアがわざわざ面倒だという格好をしてまで守ってくれようとしていることが嬉しかった。
「なんだよ」
揶揄うようなかなの口調が気に入らなかったのか、アクアは今まで窓の外を見ていた顔をかなに向ける。それと同じようにかなもアクアに言いたいことがあり、視線をアクアに向け、向い合せになる。
「べっつに~、アクアがそこまでして私の演技が見たいなんて~。アクア、相当私の演技好きでしょ?」
これで、少しでも照れたり、狼狽えてくれれば、かなの中に生まれた歓喜に対して、少しは意趣返しができるかと思ったが、アクアは何を言ってるかわからない、というようにきょとんとしたような表情をして――――
「好きじゃなきゃここまでやらない」
その言葉を聞いた瞬間、かなは今の自分の顔を見せられないと直感的に感じて、慌てて顔を再び窓の外へと映した。
「???」
肝心のアクアはなぜ急にかなが顔をそむけたかわかっていないようで、窓ガラス越しにみたアクアは困惑した表情を浮かべていた。一方の自分は、顔が真っ赤になっていることが鏡を見なくてもわかるほどに熱を持っていた。
アクアの何気ない言葉が、かな自身に向けられたものではないことは分かっている。ただ、それでもいつものアクアらしい当然ともいえる冷静な口調で告げられたことが、余計にアクアの本心からの言葉と理解できてしまって、時間がたつごとに湧き出す恥ずかしさと嬉しさは尽きることを知らない。
「ばか………」
今の自分の感情を誤魔化すように小さく悪態の言葉をつぶやくが、かなの乙女な心臓の高鳴りはしばらく止まりそうになかった。
「なんか言ったか?」
「うっさい」
ドライバー「甘ぇ‥‥」
『今日あま編』の回想という体で始まりました。といっても、まだ顔合わせも終わってない! アクアのマジモードは使えるものは何でも使うの信念からきております。
この編は、かながヒロインだからかわいいのは仕方ないね! 苺プロに入った話は後回しですが、書く予定です。
次回は、苺プロから短工期、低予算、素人の現場にアクアが殴り込みをかける回です。
誤字脱字報告毎回ありがとうございます。助かってます。
もしよろしければ、感想、評価よろしくお願いします。励みになりますので、感想を一言でも頂ければ幸いです。
苺プロダクション
・社長は斉藤壱護、副社長は斉藤ミヤコと変わらず
・『主演しかできない女』アイと『国民的イケメン』星野アクアの男女の俳優部門がメインになった。
・アイドル部門はどうしても伝説のB小町を彷彿させるため休止中
・自社ビルを購入しており、事務所、レッスン場所(ダンス、歌兼用)、送迎場所を兼ね備えている。
・契約しているハイヤー会社があり、予約ができる。(料金は事務所へ直接請求)
・人数的な規模は中規模だが、影響力は高い。というか、アイが裏番組に出ると表番組と裏番組がひっくり返る。