星の子たちにハッピーエンドを   作:天凪

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最新話でやっぱりアクルビ(ゴロさり)が最強だなと思いました。


プライベート編
星野瑠美衣の決意


 

 

 

「で、これはなんだ?」

「なんだって、キャリーケースだよ。アクたんのキャリーケースが壊れて、宮崎旅行に使えないって聞いたから、今日の新生B小町チャンネルの動画は、ショッピング動画 with 星野アクアでお送りするよ。あ、もちろん許可は取ってるから安心してね」

 

 撮影するのだから当然だろう。しかも、テレビ番組ではないが、それよりも広い範囲のインターネットに載るのだから。もっとも、会社経由で一般の買い物客にモザイクをかけることを条件に案外容易に取ることはできたようだが。

 

「それで、私たちがそれぞれお勧めのキャリーケースを選んできたわけよ」

「そうそう、だから、お兄ちゃんは好きなのを選んでね」

 

 にやにやとからかうような笑みを浮かべてそれぞれが選んできたキャリーケースを見てアクアは思わず額を押さえて大きくため息を吐く。

 

 ルビーが選んだのは赤いキャリーケースで、かなが選んだのが白いキャリーケース、そしてメムが選んだのは黄色のキャリーケース。各自が選んだのはそれぞれのサイリウムカラーの色であり、この茶番劇の意図が容易に分かろうというものである。

 

 彼女たちの意図は分かった。だが、それで単純に引き下がることはできない。今もカメラは回っており、撮影は続いているのだから。ここで呆れて踵を返して帰るわけにもいかない。だから、諦めて、アクアは示されたキャリーケースの一つに向かって歩き出す。

 

「ほ~」「へ~」「ふぇ?」

 

 三者三様に驚いた様子だった。まあ、当然か、とも思う。なぜなら、アクアが選んだのは黄色―――つまり、メムの色だったからだ。普通に考えれば、安全の一手で、ルビーの赤を選ぶのが妥当だろう。ついでに、世間的には義姉のアイとも同じ色だ。だから、問題にならない。しかし、問題にならないということは誰でも予想のできた面白みのない一手ということになる。これが配信とはいえ、動画である以上、面白みは必須であるが故のアクアの選択だった。

 

「それでぇ、お兄ちゃんはどうして黄色を選んだのかな?」

 

 やはり自分が選ばれるかもしれない、という期待があったのだろう。やや不機嫌になりながらルビーが聞いてくる。その明け透けな態度が人気に繋がるのだろうが、もう少し隠してもいいのではないだろうか。だから、ブラコンやらなんやら言われるのであろうとアクアは苦笑する。

 

「だいぶ前から友人の推しでな。そのお勧めのポイントなんかもよく聞かされるんだが、最近、その良さが分かってきてな。顔は可愛くて、ダンスは上出来、歌はやや難ありだが、そこはヘタウマの部類だな。ファンサービスが旺盛で、ペンライトを振るとウインクや手を振って応えてくれるところが特にいいな」

 

 ぺらぺらとその推しのアイドルの良いところを上げていくアクア。一方のルビーとかなは白けた目で見ており、そして、メムは、顔の前で手を振ってあわあわ、と慌てていた。そして、好きになった点を言い終えると同時に、黄色いキャリーケースを運んできて、隣に立っていたメムに一歩だけ近づき、振っていた手を振りほどいて顎に手を当てて真正面からアクアの顔を見つめさせた状態で口を開いた。

 

「俺の推しはお前だよ……メム」

 

 しばらくの沈黙、だが、アクアの言葉の意味を理解したメムの顔は少しずつ紅潮していき、気が付けば真っ赤になっていた。

 

「はわわわぁぁ……あ、アクたん」

 

 そして夢見心地な表情になるとアクアが近づいてきていたのをいいことに、今度はメムのほうから距離を縮めようとした瞬間、カシャカシャカシャと連続したシャッター音で、メムはその夢から覚めた。

 

「はっ!?」

 

 シャッター音がした方向を振り返ってみれば、呆れたようにスマホを構えたままため息をつくかなと『フリルチャレンジ成功!』と書かれたスケッチブックを持ってにやにやしているルビーがいる。ようやく回り始めた頭で、その意味を理解した瞬間、ばっ、とアクアの方を見てみれば、同じく呆れた表情をしたアクアがいた。

 

「……いい加減に学習しろよ、メム」

「あんたのアイドルの目標達成には当分かかりそうね」

 

 二人からの言葉が胸に刺さるメムだった。その後、アクアが購入したのは無難に黒のキャリーケースであった。

 

 なお、後日の編集した動画を公開―――メムは非常に嫌がったが、予告済みなので配慮はない―――したところ、『やっぱりMEMちょには早かった』『いつもの流れ』『アクア、いい仕事をしてくれたね。たまに見る乙女面がよい』『アイドルがやっていい表情じゃない気がする』などのコメントにあふれる結果となるのだった。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

「動画、面白かったよ」

「唐突なのは変わらないんだな」

 

 朝の学校、いつもの時間にフリルがアクアに話しかけていた。話題は、昨日の夜に公開された動画だった。あのキャリーケースの買い物動画だ。

 

「MEMちょの乙女面は相変わらずいい……今となっては新生B小町の公式チャンネル動画だけが供給源だから困る」

「さすがに個人のチャンネルでやれるほど恥知らずじゃないと思うぞ」

「そうかな? MEMちょの場合、数字になりそうだったら、悪魔にでも魂売りそうだけど」

 

 あり得る、と思ってしまうのは、アイドルになれなかった情熱だけで超格差社会のユーチューバーという中で登録者数37万のインフルエンサーになった事実があるからだろうか。ただ楽しむだけでは無理な値。戦国時代という言葉が生ぬるいほどのレッドオーシャン(競争が激しい既存市場)である。そこで結果を残し、『今ガチ』というネットとはいえ一般番組に呼ばれ、最後にはアイドルにまで上り詰め、100万を超えた現代のシンデレラといっていいのだが、その根本は有馬かなも驚きの本人のセルフプロデュースの賜物である。そのセルフプロデュースに魂を悪魔に売るなどということはないかと思うのだが……。売買項目の一覧に追加されれば、選択しそうな危うさがあるのも事実である。

 

「……そんなことねぇよ」

「否定できてないよ」

 

 白々しく否定するだけだが、それを面白そうに観察しながらフリルは苦笑するだけだった。それだけアクアがあり得ると思っている証跡だったが。

 

「ところで、キャリーケースを買い替えるということは、どこかに行くのかい?」

「まあ、ちょっと、新生B小町の新作MVとPVの撮影に宮崎にな」

 

 周りに聞かれるとまずいと思ったアクアは、フリルにだけ聞こえるように顔を近づけて小声で予定を伝えた。その際に近づいたアクアに対して少し恥ずかし気に俯いていたことにアクアは気づいていなかった。

 

「なるほど、宮崎―――高千穂かな?」

「なんで分かるんだ?」

 

 ここまでくるとフリル怖いと思うアクアだ。ただの撮影を兼ねた慰安旅行なのに行先の県を伝えただけで、具体的な地方名まで分かる彼女はいったい何者なのだろうか? と思ってしまうほどで、驚きの表情を隠すことはできなかった。だが、そんな表情のアクアに対して、フリルは逆に苦笑する。

 

「むしろ、東京都内じゃなくて、あえて宮崎なら高千穂が思い浮かばないのは、芸能人としてどうかと思わない?」

「―――それもそうか」

 

 芸能関係者にとって、宮崎県高千穂町が特別というのはアクアも理解できるところだった。だから敢えて撮影事務所もそこに本社を置いていることも理解できる。ただでさえ神頼みという言葉があるぐらいの業界なのだ。その手の話に敏感になるのも不思議ではないだろう。

 

「いいね。私も高千穂には一度行ってみたいと思っていたんだ。でも、一人じゃ行く気がしなくてね」

 

 そこで、期待するような視線にさらされるアクア。これでフリルが何を求めているか分からない、と言えるほどに鈍感ではなかった。

 

「―――なら、一緒に来るか?」

「その言葉を待っていた」

 

 言わせたの間違いだろう? とアクアは思ったものだが、今のフリルに何を言っても無駄だと思ったのか、はぁ、とため息を吐いて日程を告げた。

 

「うん、大丈夫そうだね」

「そりゃ、良かったよ」

 

 もう半分ぐらいは投げやりな気分だった。言ったのか、言わせたのか分からない言葉だったが、満足げに頷くフリルを見ているとそれでよいと思った。同行者が増えることをルビーたちに言わないといけないな、と考えているところで、不意にフリルの後ろから聞きなれた声がした。

 

「なにかいいことでもあったん?」

「みなみ……そう、旅行が決まった。アクアと二人で」

 

 ぶっ、とフリルの言葉に噴き出すのも仕方ないだろう。いや、冗談が好きなのは知っているが、いきなりすぎる。そして、案の定、登校した直後にフリルから衝撃の言葉を言われて、キョトンとした後に、驚きの表情を浮かべて、思わず悲鳴を上げないように口を押さえていた。

 

「ひえぇぇ、スキャンダルやん……」

「違うからな。苺プロの撮影についていくだけだからな」

 

 勘違いしそうなみなみの言葉をアクアはすぐさま修正する。周りでも聞いているであろうクラスメイトから広まって、変な噂になったら困る。そのあたりは、芸能科から外に出ないことは理解しているが、それでも変な火種は残さないほうが良いと思った。

 

「撮影って……新生B小町の撮影なん?」

「そう、後は東京ブレイドの舞台の慰安も込みだ」

「……その組み合わせでフリルも行くん?」

 

 確かに思わず言ってしまったが、良いのだろうか? と思ったが、今更撤回もできない。撤回した場合のフリルの反応が怖いということもあるが。

 

「まあ、ルビーの友人枠で大丈夫だろう」

 

 ルビーに言えば、喜びはすれど、拒否することはないだろうと直感的に感じていた。だから、自分が迂闊に口にした内容に気づいていなかった。

 

「そうなん? ルビーの友達枠ならウチもええかな?」

「は?」

 

 気づけば、同行者が増えていた。確かに、ここでフリルのみを誘って、みなみを拒否するわけにはいかない。ルビーにもむしろ「みなみちゃんは?」と聞かれてしまうだろう。

 

「も、もちろん。日程はこれだ」

「あ~、これなら問題なさそうやな」

 

 嬉しそうにするみなみ。やはり友達と旅行というのは女の子にとってはイベントごとなのだろう。みなみが行くとなれば、宮崎の美味しいお店も調べておかないと、と思う。もっとも、アクアには吾郎という強い味方もいるのであまり心配はしていないのだが。

 

「みなみもか……ねえ、アクア、東京ブレイドの慰安ってことは黒川さんも来る?」

「ああ、そうだが。苺プロのメンバーだからな。慰安旅行も兼ねているから来るぞ」

 

 そう、というと少し考えるようにして意味深に笑いながら小さくつぶやいた。

 

「役者はそろった。舞台の幕は上がる……かな?」

「―――なにか言ったか?」

「いや、何でもない。私の話だよ」

 

 そう言いながらアクアに視線を合わせて、旅行を想像したのか楽しげに笑っていた。

 

「面白い旅行になりそうだよ」

「そこは、楽しいじゃないのか?」

 

 ややフリルの言い回しが気になりながら、返事をした。だが、そのアクアの言葉には反応せず、意味深に笑みを深めるだけだった。

 

 なお、フリルとみなみの追加参加はルビーには喜ばれ、かなはアクアとの思い出作りを楽しみにしていたのに参加人数が増えることにあからさまに落ち込み、メムはフリルという芸能界の最前線に立つ女優である彼女に推されているものとして慌てて、アイはさらに増えた名前を聞いて胃を押さえるのだった。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

 東京ブレイドの千秋楽は無事に大きな事件などもなくまっとうに幕を閉じた。千秋楽にはアビ子も来ていたが舞台の出来に満足していたし、舞台の全日がほぼ満員御礼の日々、物販などの売り上げも上々となれば、演劇界の新しいドル箱が生まれたといっていい。早々に次回の演目の検討も始まるそうだ。なお、物販ではブロマイドはペアでの売上が単独よりも上で、男女カップリングとしては『刀鞘』、『刀つる』が上々で、BL界隈では妥当な『ブレ刀』がかなり売り上げを伸ばしていた。

 

 さすがに一か月間の舞台公演の後に全く休みを作らないというわけにはいかない。気持ちの切り替えのためにも一週間ばかりの休養日が与えられていた。

 

 ただし、それは俳優部門のアクアとあかねの話だ。アイドル部門のルビー、かな、メムには関係ない。兼任しているかなが心配だが、休養日が2日与えられ、宮崎でのPV、MV撮影に挑むことになっていた。なお、本人としては、「仕事がなくて、ひたすら稽古で暇していた時の百倍まし」と仕事への熱を燃やしていた。もっとも、燃え尽きてもらっては困る、とミヤコがアクアに命じて、無理やりマッサージ込みのデートに行かされたのだが、かなとしては間違いなく心の補給剤になっていた。

 

 そんなこんなで、あっという間に日々は過ぎ、気が付けば宮崎旅行の前日になっていた。先日購入したキャリーケースに荷物を詰め込み、もうあとは行くだけとなったアクアは自宅のリビングで水を飲んでぼう、と虚空を見つめていた。

 

 特に何もすることがない夜の時間だった。意味はない、何も考えることもない。ただ、日常を思い返すだけの時間だ。その中には、ああ、東ブレの舞台終わったな、とか、明日から宮崎か……オカルト勘弁とか、戻ってきたらあのドラマの撮影かとか、取り留めないことを考えていた。

 

「あれ~? お兄ちゃん、準備できたの?」

「ルビーか」

 

 そんなことを考えているとリビングにルビーが現れた。彼女も準備は終わったのだろう。おそらく喉が乾いて飲み物を飲みに来たという体だった。たまたまアクアがいたからだろう、オレンジジュースを注いだコップをテーブルに置いて、対面のソファーに座る。

 

「明日から宮崎だね! 楽しみだなぁ~。せんせ、私が宮崎に行くって伝えたら出迎えしてくれるって!」

「まあ、そのおかげで助かったところもあるけどな」

 

 人数としては、九人の大所帯だ。車も一台では足りなかった。そこを吾郎が運転手をしてくれることで、車二台で行動できるようになったのだ。

 

「(吾郎医師か……)」

 

 目の前で吾郎と宮崎の空いた時間でどこにデートに行こうか、と呟いているルビーを目の前にして、今更ながら思う。

 

 ―――これでよかったのだろうか? と。

 

 今までアクアはルビーと吾郎がくっつくように参謀のように行動してきた。いきなりルビーの前世を語るようなことをせず、親戚の娘のような態度で吾郎と付き合い、そして決定的なところで急所を刺すような不意打ちで吾郎を仕留めた。少なくとも、このままルビーが諦めなければ、吾郎はルビーがアイドルを卒業すると同時に結婚という流れになるだろう。吾郎がルビー(前世さりな)を愛しているのは間違いない。その愛の種別は考えないとしても、少なくとも幸せにしたいという思いは間違いない。

 

 もっとも、吾郎とて、聖人君子ではなく男だ。ルビーが本気で攻めれば、肉体的にも堕ちるだろう。残念ながらそれが男というものだ。だから、結婚後も心配はしていない。年齢的な子供の心配もあるが、それはオカルトがすべてを解決してくれるだろう。

 

「なあ、ルビー」

「ん? なに? お兄ちゃん?」

 

 アクアからしてみれば、軽口の類だった。彼女の意志を侮るわけでも、見くびるわけでもない。一般的な意見のつもりだった。

 

「本当に吾郎医師でよかったのか?」

「は? お兄ちゃんもママみたいなこと言うの?」

 

 それは信じられないほど冷たい声色だった。さんざん言われたことだからだろう。その言葉に敏感に反応したといってもいい。もっとも、事あるごとにアイから言われれば、さすがに聞き飽きたというルビーの言葉も分かろうというものだ。

 

「違う。ただの最終確認だ。前世のままだったら年齢差も15歳ぐらいだが、今世では30歳近いんだぞ。お前がアイドルをやめるころには吾郎医師は50歳近いだろう。そうだとすると、もしかしたら夫婦の時間は20年ぐらいかもしれない。そういう覚悟もひっくるめての確認だ」

 

 男性の平均寿命は82歳だ。つまり最低と見るともっと短いかもしれない。医師の不摂生という言葉もあり、10年も続かない可能性もある。だが、その言葉を聞いてルビーはキョトンとして、コップのジュースを一口飲んで笑った。

 

「なんだ、そんなことか。お兄ちゃんは、心配性だなぁ」

「いや、年齢差がある結婚だったら普通に考えるだろ」

 

 少なくともルビーのほうが長生きすることは間違いない。先立たれる未亡人を心配するのは兄として当然のことだった。

 

「あはは、大丈夫だよ。私の前世の享年知っているでしょう? 20年? 前世より長いじゃん」

「いや、それは反則だろう」

 

 前世の年齢を言い訳に出されたらアクアとしても口ごもるしかない。その時間に意味がないといえば、前世のさりなの時間に意味がないということと同等になるからだ。

 

「もしかしたら、吾郎医師よりも素敵な男性に出会うかもしれないぞ」

「でも、その探している間にせんせと一緒の時間は短くなる。それに、私の世界にアイとせんせ以外はいなかったんだよ。お兄ちゃん。だから、無駄」

 

 真顔でまっすぐ見つめてくるルビー。その表情に気圧されそうになる。

 

 前世のさりなの世界。それは小さな病室だったと聞いた。最後には母親すら見舞いに来ない小さなさりなとしての世界。それは、テレビでの推しであるアイと時々さぼりで見舞いに来る吾郎で構成されたさりなの世界。ならば、恋愛の対象は吾郎しかいなかった。だから、今世であろうともほかの男は無意味と言い放つ。それがルビーとしての答えだった。

 

「……はぁ、悪かった。余計なこと言った」

「ううん、心配してくれるのは嬉しいよ。ママに本当のことを言えないのは寂しいけど」

 

 ルビーはアイに前世の話はしていない。本当は、あなたの娘ではないんです、とはさすがに言えない。もっとも、アクアとしては、実は俺たちがいなかったら死産だったんだ、とオカルト以上の事も言えないため、この部分についてはルビーに助言はできなかった。

 

「まあ、そのあたりは吾郎医師の漢気に期待しよう」

「……せんせにそれを期待するとママが本気になりそうで怖いんだけど」

 

 それは確かに……とルビーの言葉に頷きそうになってしまう。医師という職業があってか、そもそも人の助けになる―――特に産婦人科のため女性に―――という意志があるため、アイが本気で悩み相談をして、吾郎が優しくすることでアイが本気にならないとは誰にも保証できないことだった。なお、その時は吾郎の意志の強さに期待するしかないのだが。

 

「ママと親子丼とか嫌なんですけど!?」

「……口が悪い。というか、その意味をどこで知った?」

 

 少なくともそこでアイとの不倫を許すような感性をしていないことについてはとりあえず安心した。

 

「まあ、少なくともルビーが諦めない限り大丈夫だろう」

「その根拠は?」

「吾郎医師にとってアイは推しで、さりなは傷だからだ」

 

 アイはファンという名の推しだったが、さりなは心に深く刻まれた傷だ。だから、母親に見捨てられた子供。吾郎の人生の中で深い傷を刻んだ女の子。ならば、吾郎の性格からしてその子をさらに傷つけるような真似はしない。

 

「まあ、ルビーがよっぽど嫁として不義理をしなければだろうが」

「大丈夫! ちゃんとアイドルもやって! お嫁さんもやるんだから!」

 

 どうやら、欲張りなところは魂関係なく血筋で受け継いだらしい。原作でのアイのセリフが思い浮かんだ。

 

「そうか、頑張れよ」

 

 だから、アクアから送れるのは激励の言葉だけだった。本当にこのアイドルオタクが嫁げるのか、この現代ではあまり考えなくても良いのかもしれないが。

 

「いや、私よりもお兄ちゃんでしょ。この旅行、大丈夫?」

「……なにが?」

 

 ルビーは心配そうに尋ねるが、アクアにはまったく身に覚えはない。新生B小町とルビーと仲のいい友達とあかねが一緒に行くだけだ。確かに肩身が狭いのは間違いないが、それでも気の知れた仲間とは言える。

 

「はぁ、お兄ちゃんの恋愛教室の卒業はまだまだか」

 

 ルビーの呆れたような呟きにアクアは、疑問符を浮かべながら腕を組んで何が問題だったか、考えるしかないのだった。なお、どれだけ考えても友達と旅行に行く、としか答えが出ないところがアクアの限界だった。

 

 

 

 




宮崎にたどり着きませんでしたが、旅行前の一幕でした。

ここで、フリル、みなみが増えました。ただの旅行だと面白くないと思ったのと終幕への準備です。
吾郎も次回は出てくると思います。高千穂町のHPとか見てたら遅くなりました。
あと、飲み会は2日ぐらい潰れますね・・・


誤字脱字報告毎回ありがとうございます。大助かりです。

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