「「はぁ、疲れた」」
「二人ともお疲れ様」
教室にたどり着いた瞬間に机にうつ伏せに寝たのは、今話題の渦中にある星野アクアと星野ルビーだった。それを労わるのは、不知火フリルだ。
「まぁ~、二人は今、めっちゃ注目の的やからしゃないな」
先に教室に来ていた寿みなみも苦笑しながらアクアとルビーを労わっていた。
アクアとルビーが疲れているのは、直接的に何かあったわけではない。だが、久しぶりの登校であり、しかも、あの事件の後となれば注目の的になるのは仕方ない。フォローとしてかなとフリルが一緒に登校してくれたが、焼け石に水だった。
特にカクテルパーティ効果のようにそこかしこからアクアとルビー、そしてアイの名前が聞こえてくるのが余計につらい。本人たちは小声のつもりかもしれないが、それでも名前と視線を隠しきることはできていなかった。
アクアとルビーは芸能界の若手の中でも知名度のある方の芸能人だ。だが、そんな彼らをして疲れると言わしめるほど注目度は高いのだ。
特にアクアは、あの宮崎旅行での祝福(呪い?)以降、その魅力に磨きがかかっており、余計に注目度が上がっていた。もっとも、番宣とは言え、そこそこの匂わせ発言をしたフリルが隣にいることが無関係とは言えないが。
「それにしても、アイさんも降板とかなくてよかったね」
「ああ、それは幸いだったな」
アクアは、正直、いくつかのドラマは降板になるか、あるいは、正式に発表されていないドラマ、映画でキャストの変更もあり得るかと思ったが、継続の契約となった。むしろ、その後にオファーが殺到したぐらいだ。
これが不倫の結果や、反社会団体が旦那だった、となれば話は別だが、未成年の頃に子供を産んでおり、それを今まで隠し通して、伝説のアイドルと称されるまでになり、今では『主演しかできない女優』だ。すでに、30代のアイが、子供いたという情報に違和感は思ったよりもなく、批判的な報道やSNSで目立つものはなかった。
それでも、やはり短絡的なものや逆張りのものはいて、アイを批判するのだが、度を越したものは苺プロの法務部へ流れ作業のように報告、情報開示などが行われるだろう。テレビのコメンテイターも昨今の男女平等化に伴い女優に子供がいることを批判できず、できるとすれば、未成年だったことだが、それもすでに10年以上前のことだ。今更感が強く、強く否定できない。ならば、素直に芸能界でも多忙といわれるアイドルや女優をやりながら次世代を育て切った母親という面をクローズアップするしかなかった。
なお、アイを応援する芸能界の人間の中にはアイとテレビドラマ上ではあるが、恋仲の演技を求められ、半ば本気になった男性芸能人も含まれていたことを知らされたのは壱護だけで、その情報は墓まで持っていこうと決心したのだった。
さらに、アイには『主演しかできない女優』というステータス以外に『ママタレント』という新しい属性が追加された。もっとも、ワイドショーなどでアイ、アクア、ルビーの写真が並べられることがあったが、どうみても親子には見えないため、困惑するコメンテイターや視聴者が多かったのだが。
「この状況はしばらくは仕方ないかな。しばらくすれば落ち着くと思うけど……その前に、禊の放送があるじゃないか」
「はぁ、あまり思い出したくない事実だな?」
「え~、私は楽しかったよ」
アクアは、あまり思い出したくないという風に首を横に振り、ルビーは収録の時を思い出したのか楽しそうに笑っていた。禊の放送というのはつい最近収録した番組だ。できるだけ内容を拡散させないために最低限の人数で収録したのだが、やはり漏れるところからは漏れるのだろう。
「あんまり言うなよ。今日の放送で告知するんだから」
「分かってるさ」
パチンとウインクするが、本当にわかっているか疑問だ。フリルが今までこの手の話題で内情を知っていることはあってもほかに漏らしたことがないことは分かっているが。
「ほぉ~、アクア兄さんとルビーは何か番組に出るん?」
「まあ、しがらみの一つだな」
しがらみといえば、アイとの騒動から週刊誌様にインタビューを受けたり、ワイドショー向けに出演したり、と学校に行くことはできなかったが、そこそこ大変だった。アクアは、それでもモデルとしての仕事、ドラマの撮影などもあり―――あくまで、責任はアイにあり、アクアとルビーは実子だったというだけで、責任問題にはなっていない。むしろ、話題性が稼げて満足というわけで継続している―――忙しい日々を送っていた。特にアイ関連では、アイ本人はもとよりルビーを含めて影響が大きく、安全性も含めて学校には来られなかったというのが実情なのだ。
そして、フリルが意味ありげに言った番組はその中でも最後の最後の番組で、一番疲れた番組だった。
「そうなんや、面白そうやな。なんかの特番なん?」
「特番といえば、特番かもしれないが……そうだな、みなみならいいか。これだ」
そう言いながらアクアが差し出したスマホには、みなみも見覚えのある番組のネットチャンネルが表示されていた。
「深掘れ☆ワンチャン……え? これってルビーがレポーターやってるやつよな?」
「そう、この番組だ。この番組に母さんとルビーと俺が出演する」
アクアが珍しく名前を出した母さんという名前がアイを示すことに少しだけ違和感を覚えながらも、アクアの口から出された名前に驚いた。なぜなら、それは今、一番注目を浴びている一家だからである。
「まさか――――」
「たぶん、みなみが想像した通りだ。今回、深掘られるのは―――」
はぁ、と非常に不本意と言いたげにため息を吐いて、再び口を開いた。
「俺たち、星野家だ」
驚いて絶句するみなみと、たはは、と苦笑するルビー。
そんな二人と苦い表情をするアクアを見ながら放送翌日の学校を想像して笑みが隠せないフリル。もはや、芸能科の中でも一番注目を浴びながらも、一番混沌とした空間となるのだった。
なお、陽東高校の一つ上の学年では、伝説のアイドルグループの一員となってしまった元天才子役が尋問に近い形で、終日注目されているとはアクアもルビーも想像していなかったのだった。もっとも、今までほぼ注目を浴びてこなかった彼女としては本望かもしれない。
※ ※ ※
「はい! というわけで、今日も深掘れ☆ワンチャンのレポーターは、伝説のアイドルグループ『B小町』のセンターにして、『アイの後継者』である星野ルビーが担当します!」
パチン、とアイがよくやっていた横ピースでウインクするルビーだが、今日は勝手が違った。なぜなら、いつもはカメラの向こう側で深掘りの先にいるはずなのだが、今日はスタジオにいるからだ。
「いやいや、一番大切な自己紹介が漏れとるやん!?」
「え? いつも通りですけど……あっ! そうでした! 実は、『アイの後継者』兼、実の娘である星野ルビーがレポーターを担当します!」
もう一度、やり直しというようにポーズを決めるが、ここまでがカンペである。ADもカメラに映らないように大きな画用紙に展開を記載しながら撮影を続ける。最初に一番注目される自己紹介を飛ばしたのは、様式美である。
「いや~、でも、ルビーちゃんが、まさかアイさんの娘だったなんてね……」
その芸人の表情は、いや、こいつマジか、という色も含まれていたが、アイが同年代のアイドル時代の動画を見れば、ルビーと確かに重なる部分もあり納得できるものがあった。もっとも、その情報については今日の番組で明らかになるのだろうが。
「そうなんですよ。それで、今の発言で分かると思いますが、今日の深掘りの対象は、もちろん、私たち『星野家』です! だったら! 私だけでは足りないでしょう!」
ばっ! とスタジオの一部が扉のようになっており、そこを指示したルビーに反応するように扉が開き、奥で待機していた二人の人影が見えた。完全に扉が開いたことを確認すると、ゆっくりとスタジオに向けて歩みを進める二人。やがて、扉をくぐってその人影がスポットライトに当てられて露わになると、おぉぉぉ、という歓声でスタジオが支配された。
理由は言わなくても分かるというものだ。そこにいた二人は、芸能界で今、一番注目を集めている星野アイと星野アクアだったのだから。
「はい! お兄ちゃんの星野アクアと、ママのアイです!」
レポーターらしく扉の向こうから出てきた二人を紹介しつつ、席へと案内するルビー。アクアはルビーがレポーターとなるために協力した時に番組に出演したために大体スタジオの構成を知っているが、アイは深掘れに出るのは初めてで、興味深そうにスタジオを見ていた。
「お兄ちゃんとママはそっちに座ってね」
ひな壇から少し離れた場所に特別に設置された席。深掘れ☆ワンチャンで深掘りのテーマに関係するゲストが来る時に用意される席だった。
「はい! というわけで、自己紹介してもらいましょう!」
「一つ聞きたいんだが……」
アクアは少し戸惑ったように片手をあげてルビーに問いかける。だが、そんなアクアの戸惑ったような表情を無視してルビーは、明らかに上機嫌と分かるような笑みで振り返っていた。
「なに? お兄ちゃん」
「おまえ、なんでそんなに上機嫌なわけ?」
一応、この番組は今、芸能界の話題の中心である星野家について深掘りする番組で、アクアとルビーからしてみれば、過去を掘り返されるわけだ。アクアとしてもあまり気乗りはしていなかった。もっとも、鏑木が微妙に父親について探りを入れれば、バレそうだ。だから、貸し借りとしてこの番組に出演しろ、と言われれば出演しないわけにはいかなかったが。だが、ルビーはその不本意なはずの状況にも関わらず機嫌がよさそうだった。いや、番組に出演する以上、上辺は取り繕うことはできるかもしれないが、双子の感性としては、ルビーの機嫌は本気でよいように見えた。
「え~、だって、ようやくママの事、ママって言えるんだよ? お兄ちゃんは嬉しくないの?」
「それは……」
少し考える。確かに、今までは義理の姉として隠してきた事実だ。そして、おそらく芸能界という場所から引退しない限りはアイを母親と呼ぶことはないと思っていたのだから、事故とはいえ、こうして公に呼べることは確かに歓迎すべきことなのかもしれない。
「そうだな」
諦めたようにはぁ、とため息を吐くとアクアは仕方ない、というように苦笑するしかなかった。
「もう、二人とも可愛いんだから」
そう言いながら、アクアとルビーの間に入って肩に腕を回しながら満面の笑みを浮かべて抱き着くアイ。一幕だけ見れば、家族のじゃれ合いだ。今がどういう状況か、思い出せばTPOにはあっていない。だが、アイ、アクア、ルビーは間違いなく美少女、イケメンと言えるビジュアルの面だけ見れば、眼福とも言えた。
「はいはい、家族仲がいいのは結構ですが、今は座ってくださいね。ゲストの紹介ができないので。もっとも、今更のような気がしますが」
ここまでは仕込みという奴だろう。深掘れ☆ワンチャンのスタジオの司会が苦笑しながら座ることを勧める。もちろん、ルビーはレポーターという立場なので立ったままである。
「一人目は、ドームツアーまで行ったアイドルグループ『B小町』のセンターを務めたアイさん。つい先日、双子の子持ちだったことが発表されました。そのうちの一人が深掘れ☆ワンちゃんのレポーターのルビーちゃん。そして、本日のもう一人が本日のゲストである星野アクアさんです」
司会に紹介されてペコリと頭を下げるアクアとルビー。なお、アイはなぜかアイドル時代のように横ピースを決めていた。アイがふざけるのはアイドル時代からのお約束なのでさほど驚くことでもなかった。
「さて、本日のゲストでわかると思いますが、今回、深掘りの対象は『星野一家』です。今まで秘密にされていた星野家族に迫りたいと思います。それでは、あとはよろしくお願いします。ルビーちゃん」
「はい! 今日は星野一家を『深掘れ☆ワンチャン』!」
いつものように片手にマイク、片手を犬のように指を組んでレポーターとして画面を切り替えるための仕草をした。
最初にスタジオのスクリーンに表示―――番組上は画面に表示されているはずの映像―――されたのは、二人の赤ん坊である。赤ちゃん用のおくるみに包まれたうっすらと金髪が生えている男女だった。言うまでもなくアクアとルビーの生後の僅かの頃の写真だった。
『XXXX年XX月XX日、アクアさんとルビーさんが誕生しました』
そんなよく聞くナレーションが入っていた。二人の写真を提供したのはアイだが、懐かしいなぁ~、と小声で呟きながら見ていた。なお、アクアとルビーからしてみれば、その感想は微妙だった。生まれが特殊なだけあって、普通の赤子であれば記憶はないのだろうが、二人にはそのころの記憶があるからだ。
アイが体調不良で長期離脱した時から振り返らないのは星野一家の深掘りだからだろうか。あるいは、ただの忖度だろうか。そのあたりはともかくとして、映像は続く。
場面は、続いてアイが復帰直後に出演した歌番組だ。このころは、まだアイドルとして歌番組に捻じ込んだ壱護の腕前だけで、ほぼ無名といっていいアイドルだった。だが、ここからB小町にとってリスタートだった。もっとも、この裏側で絶対的なセンターとなっていたアイに子供がいたとは誰も思っていなかっただろうが。
そして、さらに映像は月日を加速させ、一歳の時の集合写真が写り、苺プロの社長である壱護と副社長のミヤコ、そして、星野家のアイ、アクア、ルビーが集まっている。特に部屋を飾り付けて、ホームビデオ風に撮影していた映像には、「毎年こうやって誕生日をお祝いできたらいいよね」というアイのセリフが入っている。
おそらく、見返す予定だったのだろうとはアクアでも予想できた。もっとも、こんな風に全国ネットではなく身内だけのつもりだったのだろうが。
その後もいくつかのナレーションと共に月日は加速していき、ついにアイが映像系の番組で飛躍し、結果的にアクアが芸能界に飛び込むこととなった映画の時代になった。
『それが始まり』―――五反田泰志が監督した映画でアイとアクアの銀幕デビューの作品である。この作品でアイは女優として、アクアは子役としてデビューを華麗に飾っていた。
『それが始まり』のコピーライトが入ったアクアとアイの映像が流れた後、そのナレーションが入った直後に画面が切り替わる。今まではナレーションと一緒に歴史を勉強するようにしていたが、今度は生中継が繋がっているような画面になり、最初に映っていたのは『深掘れ☆ワンチャン』で、ルビーとは別の場所でレポーターをするときに重宝されている有馬かなだった。
「はい! ルビーと一緒にB小町のユニットを組んでる有馬かなです。今日は、アイさんとアクアがデビューした『それが始まり』の五反田監督にインタビューするためにスタジオに来ています!」
その場面を見てアクアが思ったのは―――ああ、実家じゃなくてよかったな、おっさん―――だった。そんなアクアの心情を無視して、控室のような場所でインタビューする五反田に近づくかなだが、五反田監督が近づくかなに気づいて、少し驚いたような表情をして口を開いた。
「よう、有馬か。最近はすっかりアイドルになっちまったな」
「いや、映像系にもちゃんと出てますから」
だが、その言葉に説得力はない。確かに有馬かなとしてドラマなどにも出演しているが、まだ主演級とはいえず、端役で、どちらかというと『新生B小町』の有馬かなを期待しているのが分かる役柄だからだ。もっとも、その演技力に注目が集まっていないとは言えないのだが。
「それはともかく、早熟、アイ、とうとうバレちまったみたいだな」
「あれ? 五反田監督はもしかして、アイさんとアクアが親子って知ってたんですか?」
そこで、イエスと答えられると番組的には色々な意味で終わりそうなのだが、インタビューは事前の物で編集がないので問題ないのだろう、とアクアは判断した。
「いや、全然知らなかったさ。だが、俺は、本物しか撮らない性質でな。時々、アクアと共演するアイが現場に来ることがあったが、その時にアクアを見守る表情がちょうど息子を見守る母親みたいなことがあってな。まさかな、と、思うことはあったさ。まさか、今更分かるとは思わなかったけどな」
かかか、と笑う泰志。毎年、監督賞にノミネートされるだけのことはあるということだろう。もっとも、受賞したことはないのだが。
「早熟、アイ。さすがに今は俺の作品には呼べないが、次に会うときは撮影現場だな」
ははは、と笑う五反田監督と私も呼んでくださいよ! と売り込むかなを余所に映像が断ち切られる。半ば放送事故のように見えるが、このまま続けられるということは、想定通りなのだろう。
「そういうなら、早く監督賞を取れよ」
そんなアクアのつぶやきもしっかりと放送では取られていた。
若干の放送事故のようなことを思わせながら、時代は続いていく。
アクア、ルビーが小学生の頃のホームビデオのような映像が流れ、その中で保護者としての立ち位置には苺プロの有名副社長のミヤコが立ちながら、隠れるように実は存在していたアイの姿が見られ、確かに編集されたように見えるのであればアイも家族のように振る舞っていたことが分かった。もっとも、この場では誰も、アイとアクア、ルビーが家族は分からなかっただろうが。
小学生時代の授業参観、運動会などのイベントが放映される。その合間にアクアが出演したドラマ、アイが主演したドラマなどが差し込まれる。ルビーがないのは仕方ないことだろう。芸能界にデビューしていないのだから。もっとも、運動神経などはルビーのほうが勝っていたのか、映像では運動会の一位の旗を持つのはルビーが主だったが。代わりといっては何だが、アイからダンスや歌のレッスンを受けている動画は受けていた。
やがて、映像は直近の中学生レベルになっていた。そこで改めて登場したのは、先ほど五反田監督にインタビューをかましたレポーターの有馬かなだった。
「え~、この頃のアクアは成長期ということもあって、ドラマなんかの映像系からは離れて舞台演技に出演していたんですが、その時に共演した黒川あかねさんにお話を聞きたいと思います」
本当に話を聞く気があるのか? という態度だが、そんな態度をまったく気にしていない様子で黒川あかねが、手を振りながらインタビューを受け照れていた。
「そうですね。あの時のアクア君は今と変わらずに演技に集中していて、映像系とは違ったと思うんですが、しっかり演技していましたね」
「ああ、そうよね。ついでに、あんたは私生活で色々面倒見てもらっていたのよね?」
「ちょっ!? かなちゃん!? それは禁句でしょ!?」
禁句もなにも、黒川あかね界隈ではアクアがあかねを変身させたのは有名な話ではあるし、なんなら黒川あかねが有名になった『今ガチ』ではアクアによって変身する前の写真が静止画として残っているぐらいである。はっきり言えば、あかねの抗議は今更というほかないのである。
あかねとかなのじゃれ合いが終わり、次の場面に移る。
ルビーは相変わらず同級生などからアイドルになる前にどんな姿だったか、ということを聞かれており、運動神経はよかったが―――という中途半端な反応をもらっていた。アクアからしてみれば、だろうな、という感想しかなく、劇的に歌唱力が改善したのは小学校高学年から中学生の最終学年だったからである。
そして、いよいよ、お互いに直近の数年になるころにルビーがアイドルとしてJIFでデビューした後の経歴を紹介した後に、最後のインタビュアーが現れた。そのインタビューに向かったのはB小町の最後のメンバーたるメムである。
「あはは、私が向かうのはおかしいと思ったんだけど、ルビーとかなちゃんがダメだったからね。不知火フリルちゃん、よろしくね」
「いえ、MEMちょが来てくれて嬉しいです」
ニコニコといつもの笑みを浮かべるフリル。本人がメムのファンであることはとうの昔に伝えているのだが、そこは様式美だろう。厄介ファンのような態度でメムに絡むフリルだったが、どこまでが演技で、どこまでが本気なのかはアクアも分からなかった。だが、そんな中、メムは勇敢にもインタビューを続けていた。
「そうだね、アクアと共演の始まりは映画からだったかな? まあ、ヒットしたし、原作にも救われたと思うよ。個人的にはアクアの演技も好きだけどね。―――え? 次回作? そうだね。安楽椅子探偵のシーズン2が来期に予定されているから、ぜひ見てくれると嬉しいな」
そこまでメムが引き出して、フリルが改めて笑う。その笑みに含みがないといえば嘘になるだろう。
「以前、呟いたように原作は踏襲するよ。だから、そうだね……あのシーンを楽しみにしているファンはこうご期待といったところかな」
あわわわ、と慌てるメムは何の反応も期待できない。ある意味でスタジオに阿鼻叫喚を与える発言をしたフリルと当てにならないメムを置き去りにしてスタジオに戻されてしまった。だが、それはベテランの司会者といったところだろうか。かろうじて、取り繕うと、その矛先をアクアに向けてきた。もっとも、そうなることは大体分かっていたが。
「まあ、この展開については俺から言えることはないですよ。フリルが言うようにこうご期待という感じですかね」
呆れたようにアクアが言うが、それは司会者も織り込み済みだったのだろう。期待値だけ上げるだけの発言に何も言うことはなかった。もっとも、本命は別にあるのだから当然だ。その本命に当たるアイとルビーは気が付けばその場にはいなかった。
「さて、皆様、これまでアイさん、アクアさん、ルビーさんの経歴を深掘りしてきました。しかし、これだけでは不足ですよね? もしかしたら、一生実現することがないかもしれない舞台をぜひとも、この機会に見てほしいと思います。新旧のB小町の絶対的センターによる奇跡の共演を!」
ばっ、と示し合わせたように注目が集まるように設置された扉の向こう側から現れたのは、現役時代のアイドル衣装に身を包んだアイと、今まさにアイドル業界を蹂躙している新生B小町の衣装に着替えたルビーの姿だった。その直後から、スタジオに流れたのはB小町の代表曲である『サインはB』であった。
本来はグループで踊るような曲であったが、この日のために用意したダブルセンターのように踊るアイとルビー。気が付けば、いつの間にか用意されていたサイリウムをいつものメンバーとゲストであるアクアが振っていた。アクアがオタ芸を披露しないことを惜しまられていたが、さすがにライブ会場ではないところで一人で披露するのは心労がすごいことになりそうだった。
『サインはB』を筆頭にB小町のヒットソングをメドレー形式で歌って踊るアイとルビー。親子とは思えない身軽さで踊って歌う二人にスタジオは目を、耳を奪われ、やがてファンになっていくという事象を経験し、やがて、その時は終わりを告げていた。最後にポーズを決めて、歓声と共にアイドルのように手を振るアイとルビーに近づいた司会者はアイにマイクを近づけると、今の感想を聞いた。
「そうだね……夢が一つ叶ったかな? って思うかな」
「夢ですか?」
「そう! 娘のルビーと一緒に親子共演するって夢だよ!」
もはや、すべて明らかになって何も憚ることがない究極で無敵なアイドルであったアイが無邪気に笑い、隣で呆然とした表情をしていたルビーを抱きしめていた。え? ママ? と戸惑うルビー。その画面外では、微笑ましいものを見るような表情で見守るアクアがいて、おそらく動画を見ていたすべての視聴者の心情を代弁していたのではないだろうか、と思うほどである。
結局、この場面はそのまま放映された。もはや今更感が強かったし、母と娘を強調できたからだ。
この番組の視聴率はネット番組の割には同時視聴率、再生回数がほかの回とは段違いに再生され、世間の関心の高さを示していた。余計な余波としては、この番組のプロデューサーである鏑木は星野一家への影響力の強さで評価を高めたりしたが、それは別の話である。
この番組をきっかけに星野一家はさらに芸能界で躍進することになる。
アクアとルビーの事がバレたことをきっかけに星野アイへと芸名を変更したアイはさらにのびのびと主演としたドラマや映画に出演するようになった。
星野ルビーはより一層、新生B小町の活動に専念し、アイと同じようにドームツアーができるアイドルを目指して、全国でライブを行うようになっていた。
星野アクアは、モデル、ドラマ、映画、楽器と結局フリルと同じように歌って踊って演技ができるマルチタレントとして芸能界でより有名になるように道筋が作られてしまっていた。それに応えられるアクアも、また不思議な存在なのだが、期待通りに芸能界でイケメン俳優として名を馳せるのだった。
そして、次の舞台はさらに数年後―――星の子たちが子供から大人になる時代へと舞台を移すのだった。
忙しくなると一日が早くなりますね。気が付くとこんなに日数が・・・・
そして、今度は出張で、一週間ほど何も応答がないと思ってください。
次回からは最終章の『星の子たちにハッピーエンドを』編です。
まあ、ヒロインが決められなかったので、ギャルゲーのように各ヒロインのマルチエンドです。
ルビーだけはゴロー先生との専属エンドですが・・・
原作も最終章なので、本年中には完結したいと思います。
マルチエンドは誰を期待してますか?
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寿みなみ
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不知火フリル
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MEMちょ
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黒川あかね
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有馬かな
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ハーレム