「……きたまえ。起きたまえ、二人共。到着したぞ」
「んむぅ……」
「……そう、ですか……」
「チー!(うみだー!)」
車が止まり、後部座席で寄りかかり合っていた二人が目を擦ると同時、ビーチの方から「おーい!」と声が響く。
「おや、先生」
「はーい、先生でーす!!三人とも夏、楽しんでる!?あとシマエナガくんも!」
「ピー!(もちろん!)」
「あ、先生……」
「おはよう、ございます……」
「二人は連日激務続きでね。今日からやっと夏休みといったところだよ。それにしても先生、随分とテンションが高いじゃないか」
「そりゃそうだよ!アラサー女がこんなにはっちゃけていいのなんて夏休みとハロウィンくらいのものなんだから!!」
そう言ってふふんと鼻を鳴らす先生。
ミカと同じくらいの身長の彼女の水着はシンプルイズベストな競泳水着。
大人びたナギサやリエと並ぶと、むしろ彼女の方が生徒に見えるほど。
そして彼女は「これでみんなで心置きなく遊べるね!」と屈託のない笑みを浮かべた。
「……ええ、そうですね。今日くらいは、仕事のことを忘れることにします」
「うん、私も。せっかくの機会だしね」
「ああ、二人共その意気だ。それでこそ、こちらも準備した甲斐があるというものだよ。……そうだな、今回は一切難しい話は無しにしよう。回りくどい例え話も、物語の意味だというのも一切無し。私も無邪気に、子供として楽しむとするよ」
「それじゃ、ミカ達と合流しようか」とセイアが駐車場に車を止め、リエ達が荷物を下ろしていた、まさにその時だった。
「!?」
「……?何、今の……?」
突如として響いた爆発音。
その音の中心はビーチの方で、見るとモクモクと煙が上がっている。
(あっやべ)という顔をしている先生とは対称的に何が起こったか全く分からないティーパーティーの三人。
彼女達は荷物を抱え、砂浜の方へ急いだ。
「……ええっと、これは一体……?」
爆心地に到達するなり、散らばった残骸に「こんなものがビーチにあった覚えは……」と首を傾げるナギサ。
「確かに不自然かも」、とリエもそれに頷く。
しかし、二人の反応に明確に焦りを示したのはミカだった。
何と言っても、彼女は今回のバカンスの責任者。
もしこれで二人に「こんな危険なバカンスがあるはずないでしょう」なんて怪しまれてしまったら、せっかくのバカンスがおしゃかになりかねない。
「ち、違うのっ!!」
そう考えると、ミカは思わず叫んでしまった。
はてなマークを浮かべるナギサ、「何が?」と聞き返すリエ。
その落ち着いた反応で我に返ったのか、ミカは言い訳をしようとするが、ナギサは「いえ、結構です」と口を開いた。
「理由はおおかた分かりました。……せっかくのバカンスに水を差してもいけませんし、今回は黙認しましょう」
「……え?」
「私達の代に入ってからは使っていませんでしたし、このような事態も想定はしていました。ですよね、リエさん?」
「うん。プライベートビーチと言っても、これだけ広大だと近隣住民が知らずに利用するケースもあるだろうしね。……まあ、資材置き場にされてるっていうのは驚いたけど」
「……あ、そうそう!工事の関係者さんがね?今朝、ここを使わせてほしいって言ってきたんだよ!報告忘れちゃってた☆」
「ええっと、それはそちらの方が問題ですね……」
「忙しかったんだよ〜!」
もちろん大嘘。
あれらの資材、全て温泉開発部から押収したものである。
しかしミカは今、ナギサとリエを心配させたくないという一心で必死に取り繕っていた。
セイアちゃん?
あれはどうせ知ってるし……。
「っていうかそんなことよりお昼だよ!美味しいバーベキュー用意したんだから!」
「全く、ミカさんという人は……」
「ま、いいんじゃない?今日くらいはさ」
そしてリエは「準備できるまでちょっと散歩でもしようよ」とナギサのビーチベッドを持ち上げながら言う。
ナギサもその提案に乗り、二人は一時的にミカ達の下を離れた。
「……ふぅ〜、なんとか誤魔化せたよね……?」
「ああ、お疲れ様、ミカ」
「あ、セイアちゃん!二人のこと、連れてきてくれてありがとね!」
「何、礼に及ぶことじゃない。……それより、バーベキューの準備は大丈夫なのかい?私の勘によると、あと15分くらいで戻って来るみたいだが」
「うん、大丈夫だよ!後は材料さえ届けば始められるし!」
「……それは何時の予定だい?」
「え、12時半だけど」
「じゃあ今は?」
「……1時、過ぎ……?」
次回、失われたバーベキュー編。
お楽しみに。
「まあそんなものはやらないのだけれどね」
「チーピー!(なんてめたいんだ!)」
えっちなのが投稿されたらしいです