ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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記録99:バーベキューの時間

「……やはり、このような運動はどうしても慣れないというか……」

「ちょっと痛むね、やっぱり」

「ふふっ、まあ私はやり慣れているからね。それに私には二人と違って余計な脂肪がついていない。バランスの良い肉体なのだよ」

「セイア?」

 

 彼女達がヨガを始めて1時間半ほど経った頃。

 固くなったナギサの背中を押していたセイアは、視界の片隅に入ったミカ達の姿に気が付き、続けてリエ達もそっちの方に目をやる。

 ミカは「おまたせー!」とクーラーボックスを引きながらブンブン手を振っていた。

 

「三人ともごめんね。今から焼き始めるから、もう少し時間掛かっちゃうかも……」

「いえ、構いませんよ。私もちょうど用が出来ましたので」

 

 紛らわしい言い方をするナギサに、ミカの顔から血の気が引く。

 そして彼女の頭に「まさか帰っちゃうんじゃ──!?」なんて思考がよぎったところで、傍らで「んん〜〜っ」と背を伸ばすリエを尻目に、ナギサは威風堂々とティーセットを取り出した。

 

「……え、ナギちゃん何してるの?」

「「何してるの?」と聞かれても、見たままですよ。今からBBQをするのなら、必然的に終わる頃には午後のティータイムでしょう?」

「……ええっと、つまり……?」

「ええ、紅茶の準備です」

 

 そう言って、大型グリルで肉やら海鮮やらを焼いているミカの隣で、IHコンロでお湯を沸かし始めるナギサ。

 リエも紅茶のお供と言わんばかりにグリルの端っこを間借りして餅を焼き、お汁粉を作り始めている。

 セイアはどこかからかうように「おや、予想は当たったかい?」なんて問いかけながらグリルを覗き込む。

 

「っっぁっっつっっ!!?」

「駄目だよセイアちゃん!?急がないとだし火力上げてるんだから!」

「私牡蠣焼くー!」

「ナギサ、砂糖は?」

「もちろん、極限まで」

「了解」

「……すいません、ハスミ先輩」

「なんですか?イチカ」

「……この人達、フリーダムっすね」

 


 

「というわけで焼き上がったよ」

「セイアちゃんありがと!それと先生、私の見間違いじゃなかったら牡蠣生焼けでちゅるんしたよね?」

「!?や、別に……そんなことしてないし……あの牡蠣生食用だったし……私生牡蠣ちゅるんネキだし……」

「リエさんリエさん、なんと幸運なことにお醤油と焼き海苔を見つけてしまいました」

「磯辺餅?なら追加で焼かないと」

「ハスミ先輩、リエ先輩って昔っからあんな感じでしたっけ?」

「……まあ、お菓子の持ち込みはだいぶ多かった方かと……、……私の次くらいに」

 

 ミカとセイア、それとイチカが主導となって次々と食材を焼いては各々に取り分けていく。

 それをもっちゃもっちゃとお汁粉を頬張りつつ待っているリエとナギサの様子は普段とは著しく対照的で、天幕の下のビーチベッドに座りつつ割り箸と紙皿で焼けた肉を口に運ぶその姿は普段よりもずっと幼く見えた。

 

「ミカ、ミカ」

「……?何、先生?」

「こうしてみると二人ってちょっと童顔だよね。ナギサもリエも」

「あー、そういえばそうかも。特にリエちゃんは普段キリッとしてるからその分のギャップかな……」

「ナギサも初期とのギャップじゃないか?」

「セイアちゃん?」

 

 そんな会話はつゆ知らず、仲良く並んで食べているリエとナギサ。

 

「ちゃんと考えたらさ、ナギサの水着だいぶ恥ずかしくない?」

「やっぱりリエさんとは意見が合いますね。全く同じセリフをあげます」

 

「あのお店の新作、すごい美味しいんです。新作って感じで」

「まあ新作だもんね」

 

「時々さ、「ここで取引先撃ったらどんな顔するんだろ」って思う時あるじゃん」

「あー、ものすごくあります」

 

 体育座りで中身のない会話をする二人と、食い意地の張った上司へと肉をデリバリーするイチカ。

 相変わらずここでもバランサーに徹しているのは流石の彼女といったところだが、ちゃんと定期的に自分の分も抜いている辺り彼女にもバカンスを楽しむ余裕はあるらしい。

 

「ナギちゃんリエちゃん、次何食べたい?」

「どうします?」

「海鮮いきたいな、ホタテとか」

「おっけー!バター醤油にするね!」

「ミカ……いつの間に手慣れたものだね?」

「新しく出来たお友達に料理が趣味の子がいてさ、その子に色々教わったんだ〜」

 

 少し得意げに語るミカに、セイアは感心の意味で「君らしくないね」と反応を漏らす。

 そしてそれと同時、先生のお腹から「ぐぎゅるるる〜〜っっ」なんて、とても鳴っちゃいけない様な音が鳴り、全員の視線が反射的に向く中、彼女は「あ、やば」と顔を真っ青にする。

 

「ごめんミカ、トイレ!!!」

「ああもう生牡蠣ちゅるんネキなんてするからだよ〜〜!!」

「因果応報というやつだね」

「あ、ミカ。私も牡蠣食べたい」

「私もですミカさん」

「この状況で良く行く気になるっすね……」

「……!焼きマシュマロ……!」

 

 そして先生がアラサーの意地で猛ダッシュを見せる中、バーベーキューは続いていく。

 ちなみに昨日の晩御飯のラーメンににんにくを突っ込みまくったツケが今来ただけであり、牡蠣は特に関係なかった。

 


 

「ちなみにですが、一昔前には「rのつかない月には食べるな」、すなわち5~8月には気温の上昇につれて食中毒のリスクが上がるなどの理由で牡蠣を食べることが推奨されていませんでしたが、現在は養殖技術の発達などによって一年中楽しめるようになっています。しかしそれでもノロウイルスが心配な方は生食用を加熱して食するのがおすすめですね。鍋などもいいでしょう」

 

「……団長、誰に向けて言ってるの?」

 

「いえ、正しい知識を広めることもまた救護ですから。救護には多くの形があるのです、ミサキ」

 

「はいはい、覚えとく」

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