ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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温泉入ると急に変なこと話したくなるよね


記録101:本音 

「ふぁ……いい汗かいた」

「そうですね、まさかあそこまでもつれ込むとは……」

 

 腰に巻いたパレオをぱたぱたしながら言うリエと、道の駅でもらっていたうちわを扇ぐナギサ。

 よほど遊び倒したのか、バッチリ日焼け対策していたはずの真っ白な肌はうっすらと健康的に焼けている。

 その後ろの2人、いや1人と1羽も随分と海を楽しんでいた様子で、シマエナガくんはまるでかんざしのようにセイアの頭の上に小さなパラソルを立ててその下で涼んでいた。

 

「あ、リエちゃん達おかえりー!だいぶ楽しんでたみたいだね!」

「まあね。こんなに遊んだの、久々だし」

「聞いてくれ、ミカ。せっかくミレニアムから最新の水鉄砲を取り寄せたというのに、ナギサが海水をバケツに汲むなんて荒業で暴れてたんだ」

「まあいつの時代もスロッシャーって環境だからね」

「先生、残念ながらリエ達にそれは伝わらないよ」

「……ところで、別荘の方は……?」

 

 ナギサが尋ねると、ミカは「こっちこっちー!」と彼女達に手招きする。

 それに素直に従った彼女達は敢え無く「それ」を目にすることになった。

 

「……リエさんリエさん」

「はーい」

「ティーパーティーの別荘ってどんな感じでしたっけ」

「あれ、あのホテルみたいな感じじゃなかったっけ。ほら、桐藤の傘下みたいな」

「……ですよね」

 

 それを再確認した後、ナギサは再び目の前の景色に意識を戻す。

 しかしそこにあったのは何度見ても、百鬼夜行に名を連ねるような和風旅館だった。

 しかも表には「トリニティ温泉郷」とシンプルな木彫りの看板が掲げられている。

 

「路線変更したみたい」

 

 リエが言うと、ナギサも「そのようですね」と同意した。

 もちろん路線変更だとかそんなはずはなく、地盤沈下によって崩れた宿泊棟を温泉開発部の協力を得て建て直した結果、彼女達がキヴォトスのあちこちに建てまくっている和風旅館の様相を呈しただけである。

 とはいえ大して気にすることもなく、疲れながらも楽しそうな顔をして中に入っていく彼女達。

 「あ、お風呂沸いてるからねー!」と声を掛けながらも、ミカは思わず笑みをこぼした。

 

「おや、どうかしたのかい?」

「ううん、別に。ただ……2人とも、楽しそうで良かったなぁって」

「ああ、そうだね。きっとあれが本当の、「ティーパーティー」「トリニティ」というフィルターを介さない彼女達の笑顔なんだろう。……いや、それを一番よく知っているのは君か、ミカ」

「……うん、もちろん」

 

 先生は近くのベンチに腰掛けて静かに彼女達のやり取りを見守っていたが、良い気分でノンアルを開けようとした時、ふと何か焦げ臭い匂いに気がついた。

 

「ねえミカ、何か焼いてたりする?」

「いや、特に──って、お鍋!そうだすき焼き忘れてた!!先生、ちょっと失礼するね!」

 

 そう言って飛び出すミカと、それについていくセイア。

 先生は冷えた缶を揺らしながら「若いっていいな〜」なんて呟いた。

 

◇◇◇

 

「はぁ……疲れたぁ……」

「全く、だね……」

 

 寝湯に横になりながら呟くナギサに、リエは静かに同意した。

 時刻は19時を回っていて、空の星も良い感じに輝き始めている。

 

「こんなにゆっくりしたの、いつぶりでしょうか……」

「さあ、どうだろ。アリウスとか、色々忙しかったしね」

「そう、ですね。まだまだ問題は山積みです。結局彼女達のこともリエさんにおまかせしてしまってますし……」

「いいよ、別に。そういうのが『オブザーバー』の役割なんだから」

 

 「どうせ私、お金も時間もあるしね」なんて笑うリエに「時間は微妙でしょう」とナギサも笑う。

 事実として、1000人以上の元アリウス生の生活のために組まれた特別補正予算600億、その殆どは朝日奈家……もといリエからの寄付金によるもの。

 トリニティはおろかキヴォトスでも最大級の金融グループの総領娘である彼女からすれば財布が痛む程度の額ではあるものの、取り立てて語るような額ではない。

 ナギサにとってもそれは同様であったが、「大丈夫ですか?」と彼女は問いかけた。

 

「アリウス自治区における生活水準は著しく低い、それこそ最低限の生命維持……いえ、それさえも疑わしいほどのものでした。それをいきなりトリニティのレベルまで引き上げるというのは……彼女達の中に、途方もなく大きなギャップが伴うのでは?」

「それはそうだったと思うよ?でも、そうしないといけなかった。あの子達は最も『死』に近い場所にいて、『死』の影に怯えてた。それを救うには……ありったけの光で、身も心も塗り潰さないと。だって、『死』を知ることなく、太陽の下で笑うこと、それがあの子達が本来得られたはずの権利なんだから」

「あなたっていう人は……本当に、お人好しですね」

「違うよ。これは私のエゴイズム。私にはあらゆる力があるから、私はあらゆる手段であの子達に幸福を押し付ける」

 

 無垢に笑いながら口にした、どこか宣言しているようにも聞こえる彼女の言葉。

 リエはナギサの隣、夜の下の寝湯に寝転ぶ。

 

「『飢えた人には魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ』……でも、飢えた人が魚の味を知らなかったら?」

 

「──そしたら、魚の美味しさから教えてあげないと」

 

 指の四角で星空を切り取りながら、彼女は笑った。




この世界線ではオラトリオ編は発生しません。
アリウスの厄ネタはアリウス生徒の協力とトリニティの総力によって問題なく解体されます。
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