ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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多分、絆ストーリーです
ノノミのやつよりはマシと信じたいです


幕間
番外:休日


「……あ、おはよう。良い天気だね、先生」

「おはよう、リエ!確かに今日はお出かけ日和だね!」

 

 雲一つ無い晴天の中、時刻は10時過ぎ。トリニティの中心街から少し離れたショッピングモール、その中の広場でスマートフォンを触りながらショルダーバッグを背負ったリエは待っていた。ふと顔を上げたその視界に先生の姿が映ると、彼女は嬉しそうに手を振った。

 

「私服が意外というか……結構可愛い系なんだね?」

「……言わないでよ。結構頑張ったんだから」

 

 先生がそれを褒めると、少し顔を赤らめて彼女は頰をかいた。大きめのTシャツに、アシンメトリーのスカート、厚底のサンダルとそれなりにオシャレしている彼女。緩やかな坂のような傾斜の、大きく膨らんだ胸元に乗ったペンダントには瞳と同じ色のロードクロサイトが煌めいている。

 

「……まあいいや。それで、先生どこか行きたい場所ある?」

「うーん……特に無いかなぁ……」

「オッケー、じゃあ適当に回ろ」

 

 リエは楽しそうに先生の手を取って、軽い足取りで歩き出した。

 


 

 第三次特別試験から数日、朝起きるとちょうど見計らったようなタイミングでモモトークの通知が鳴る。先生は目を擦りながら指紋認証でスマホのロックを外した。

 

「『先生、今日時間ある?』」

「『うん、今日は特に予定も無いよ』」

「『こっちに新しいショッピングモール出来たんだけど、もし良かったら一緒に行かない?この前のお礼もしたいし』」

「『あ、行きたい行きたい!』」

「『じゃあ、10時くらいに』」

 

 リエからだった。一通りのやり取りが終わると、先生はスマホを放り投げてクローゼットへ向かう。天気予報を見ると、今日はカラカラの快晴で、かなり気温も高いらしい。

 

「……じゃあ、こんな感じ……かなぁ……」

 

 姿見鏡の前で服を合わせながら彼女は考える。トリニティまではここから二時間ほど掛かるため、あまり悩んでもいられない。結局彼女は夏らしいカジュアルなワンピースに着替え、先生はシャーレを飛び出した。

 


 

「……あ、キッチンカーだ」

 

 彼女は物珍しそうに指差した。「本当だ」と先生もリエの指差す方向を眺める。

 

「えっと……スムージー……かな?」

「ううん、色々ある」

 

 仲良く並んで近寄ってみると、何やらちょっとしたグルメフェスが開かれている。リエは少し腕時計を見た後に、先生に話しかけた。

 

「……そうだね、早めのお昼とかどう?」

「よし、食べよう!」

「私あの牛串って奴がいいな」

「オッケー!」

 

 意気揚々と列に並ぶ彼女達。幾つかの屋台を回った後に、二人は戦利品を携えて空いていたベンチに並んで腰掛けた。

 

「……こういうとこって、領収書出ないんだ……」

「もしかしてさ、リエってああいう屋台みたいなの初めて?」

 

 先生が問いかけると、リエはかあっと頬を赤らめて話しだした。

 

「……ううん、確か、昔にミカ達と行った……気がする。するんだけど、最近は忙しくて……」

「もしかして、たこ焼きとか食べたことないの?お好み焼きは?焼きそばは?!」

「……あんまり、そういうのに縁がない家庭の生まれだから……私もナギサもミカも……お祭りとかもあんまり行かなくて……」

 

 少し恥ずかしそうに、リエは呟いた。「意外と世間知らずなんだな」と思いながら先生はプラパックを開ける。昇った湯気と共に、鰹節が踊っていた。

 

「それがたこ焼き?……って?!あついあついあつい!」

「あっはっは!どう?美味しいでしょ?」

 

 彼女が手元を覗き込んだ瞬間、先生はすかさず揚げたてのたこ焼きをその口に放り込んだ。彼女は涙目になりながら口を押さえ、必死にハフハフと口の中のたこ焼きを冷まし、ごくりと飲み込んだ。

 

「……あっつう……喉元過ぎれば熱さを忘れるって大嘘だったんだ……」

「もしかして、リエって猫舌?」

「違うから!今のは突然過ぎて……」

 

 彼女はヒリヒリする舌を冷ましながらりんごのスムージーを一気飲みした。それでも足りなかったようで、リエは先生のストロベリーシェイクを分けてもらってようやく自分の牛串に手を付けた。

 

「……間接キスか……」

「……どうかした?」

「ううん、何でも無い」

「そっか!……あとさ、牛串一口食べて良いかな?」

「良いよ、何にする?タンとか……カルビとか……」

「……えっと……それは?」

 

 先生は、リエの持っていた食べかけの串を指差した。

 

「……これは……ハラミ……だったかな」

「ハラミ!私好きなんだよね!もらっても良い?」

「良いよ、残りあげる」

 

 リエは美味しそうに彼女の食べかけを頬張る先生を見て「先生は気にしないタイプかぁ」とぼんやり考えた。

 

「……ごちそうさまでした!めちゃめちゃ美味しかった!」

「それなら良かった。……次どこ行く?」

 

 ようやくヒリつく舌と頬の赤らみが収まり、彼女は先生に声を掛ける。

 

「うーん……あ、ここってゲーセンあるかな?」

「ゲーセン……ゲームセンター?」

「そうそう!ミレニアムのゲーム開発部の子達に連れてかれてからちょっとハマっちゃって!」

「確かあったと思う。……あっちの方かな?」

 

 リエはそこら辺のゴミ箱に食べ終わった容器を投げ入れた。カラン、と心地よい音が鳴った。

 


 

「……結構騒がしいんだね」

「それが良いんじゃん!ほらほら!」

「うわっ?!」

 

 入り口から奥を眺めていたリエの手を思いっきり引っ張って、先生は彼女を店の中へ連れ込んだ。騒がしい店内に並んだクレーンゲームやリズムゲームの間をすり抜け、彼女達は店の奥へ向かう。その道中で、先生は「あ」と小さな声を出した。

 

「……そうだ、小銭ある?!」

「小銭……?」

「うん、ゲーセンじゃお札使えないよ?」

 

 財布の中身を覗くリエに先生は軽くゲームセンターの仕組みを説明する。彼女は記憶を辿りながらその話を聞いていた。

 

「そっか、そうだっけ。……ごめん、だいぶ久々なんだ。こんなところ来るの」

「へえ、来たことはあるんだ?」

 

 珍しそうに聞く先生に対し、リエは小さく頷いた。

 

「昔……なんだっけな……あ、そうだ。ピアノの発表会の次の日。ミカがクレーンゲームのぬいぐるみに一目惚れしてね。それで三人でお小遣い使ってクレーンゲームとか、太鼓の天才とか、マリンカートとか、メダルゲームとか。結局一日中遊んだっけ」

「一通りって感じだね」

「まあね。……それで、小銭だっけ?両替機は……あった」

 

 少し離れたところに両替機を見つけると、リエはそこまで駆け寄って万札を差し込んだ。ジャラジャラと百円玉が落ちてきた後に、何枚かの千円札が返ってくる。

 

「ごめんね、先生。細かいの無くて。これで大丈夫?」

「うん!それだけあれば十分遊べると思う!何かやりたいのある?」

「……じゃあ、あれかな」

 

 彼女は少し離れたカジノのルーレットのような機械を指差した。

 

「メダルゲーム?良いね、やろうやろう!」

 


 

「『サテライト6、ジャックポット獲得!!おめでとう!!』」

「えっと……リエ?そろそろ止め時なんじゃ……」

「……いや、挙動的にまだ400枚は出る!……次小当たり出たら止める!」

 

 リエは天才であった。あらゆることを爆速で飲み込み、器量良くこなす。それはメダルゲームでも変わりはなかった。もはや的確に結果を予測しては、まとめて賭けて大儲け。意外な才能もあるものだな、と先生は生き生きしているリエを眺めて考えた。

 

「ったぁ!これで1万枚!……メダルゲームって楽しいね!先生!」

「そう言うと思った。あの時のプールくらい楽しそうな顔してるもん!」

「……?!そんなにかな……?」

 

 先生の言葉で冷静になったリエは、自分のはしゃぎっぷりに少し顔を赤らめる。その顔を、先生はこっそりとレンズに収めた。

 

「……これ、待ち受けにして良い?」

「止めて、だいぶ恥ずかしい……」

「……あとさ、それ……大丈夫?」

 

 よそ見していたリエは、間違えて全ベットのボタンを押していた。それも、全く当たるはずのない場所に一点賭け。赤くなっていた顔からスッと血の気が引く。

 

「……やっばぁ……」

 


 

「楽しかったね!ショッピングモール!」

「……儚い……夢だった……」

 

 少し落ち込みながら、リエは言った。空は綺麗な夕焼けで、でも夕立を起こしそうな積乱雲が遠くに見える。

 結局一時は1万枚を超えたメダルは泡と消え、リエの手はヤケ買いした服やらアクセやらの紙袋で埋まっていて、翼までも荷物持ちに酷使している状態だった。

 

「……ていうか随分買ったね……」

「まあ、ナギサ達へのお土産も兼ねてだけど……っと、そうだった」

 

 リエは何かを思い出して一旦荷物を下ろすと、先生に一つの紙袋を手渡した。

 

「これ、先生の分」

「……良いの?」

「言ったでしょ?「お礼がしたい」って。……あんまり高いやつじゃないけど……受け取ってくれたら嬉しいな」

「もちろん!ありがたく受け取るよ!」

 

 そう言って受け取った紙袋。「あんまり高くない」と彼女は言うものの、キヴォトスでも有名なブランド品のピアス。これがお嬢様か、と少し考えるものの、遠慮よりも生徒からのプレゼントに心が躍る。先生はその場で開けると、試しに着けてみせた。

 

「……どうかな?」

「うん、似合ってる。……じゃあ、この辺で。またね、先生」

「うん!帰り道、迷子にならないよう気を付けてね!」

「……そんな年じゃないよ、私」

 

 ショッピングモールの敷地を抜けたところで、二人は別れた。曲がり角で先生の背中が見えなくなるまでリエは手を振った。




メモロビはメダルゲームではしゃいでるリエです
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