ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

23 / 109
リエちゃん自由人だから好き


記録22:進捗

「……あ。リエさん、おはようございます」

「おはよ、ナギサ」

 

 日もやや高く昇る中、二人は遅めの朝ごはんを食べていた。ナギサは焼き立てのクロワッサンに少し多めにスプレッドを塗り拡げ、リエは炊きたてのご飯をあさりの時雨煮で頂いていた。

 

「ようやく少し落ち着いてきた?」

「はい。まだ調印式はこれからですが、少なくともミカさんの方はだいぶ。……ところで、何故ティーパーティーでそのようなものを……?」

「これ?正実の後輩が百鬼夜行行ったらしくて、そのお土産。気が効くよね」

 

 少し困惑気味なナギサに対して、リエは白米を掻き込みながら答える。彼女が空のお茶碗を持って「ナギサも食べる?」とジェスチャーすると、ナギサは少し悩んだ後に恥ずかしそうに「そ、そこまで言うなら……」と小さく呟いた。

 

「……!甘い……!甘いですこのお米……!」

「美味しいよね。炊きたてご飯。……そういえば、ヒフミちゃんが学園の戦車強奪したらしいけど、聞いた?」

「はい、先程。折角ですし先日のお詫びということで補習授業部の備品に加えておきました。……あと、その……しぐれに?取っていただけますか?」

「どうぞ。……にしても、中々粋なことするね、ナギサ。結構反省したんだ?」

「それはもう。「そのまま使っていただいて大丈夫です」と伝えたら、「えっ?!本当に良いんですかナギサ様?!」と大喜びしていました。何でも、アズサさんと海に行くのだとか。ふふっ、お土産も買ってきてくださるそうです」

「そっか。……まあ、あれだけのことだし、これであの子達も少しは疲れが取れると良いけど。あとヒフミちゃんのものまねそこそこ上手いね」

「はい、全くです。……まだまだ償い切れるとは思っていませんが、少しでも償っていこうと思います。……あと、これ美味しいですね。追加で取り寄せます」

「お気に召したようで何より」

 


 

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

 

 そして、二人が朝食を食べ終えたのは11時手前ほど。もはやここまで来るとモーニングというかブランチと言った方が適しているに違いない。テーブルの上に並んだ食器を片付けると、今度は机を並べて二人は業務に当たり始めた。ミカもセイアもいないが、二人共あんまり書類仕事をするタイプではないため仕事量は以前と大差ない。

 

「リエさん、こちらの資料のデータ、出処はどちらですか?」

「2つ前の正実の報告書。気になるならハスミに連絡取る?」

 

 パソコンのキーボードを叩き、タブレット上に指を滑らせ、ペンを動かしながら書類の山と格闘する。エデン条約調印式が迫ってきているが、むしろ仕事は増える一方だ。いや、調印式が迫ってきているからこそ増えている仕事も決して少なくない。

 

「そういえば、『通功の古聖堂』付近の再開発はどうなってますか?」

「もう手配してある。工事もあと何日かすれば終わるんじゃないかな。テナントの方も『ショコラ・バレンティーノ』を始めとする老舗や大手が応募してきてる。こっちは……聖堂の一般公開までには間に合うって感じ」

「流石の手際ですね。それで、警備の方は?」

「既に正実全部動員は確定してる。あっちも風紀委員の殆ど出してくるみたいだし。それと、シスターフッドも半分くらい。あとは……」

「はい、校旗掲揚は私の砲兵部隊を回します」

「オッケー、じゃあもう殆ど完璧かな」

 

 最後、書類の空欄に自身のサインを刻み、リエは大きく背伸びした。ナギサも一段落したようで、席を立ってキッチンに向かっている。

 

「リエさん、お菓子は何にいたしましょう?」

「んー……今日はフルーツ系がいいな。クリームたっぷりのも良い感じだけど……」

「……では、パンケーキでも焼きましょうか」

 

 そう答えたナギサが倉庫を漁っていると、唐突にリエのスマートフォンが鳴り始めた。

 

「……?……はい、朝日奈リエです」

「『あ、あの……大聖堂の方へ来ていただけませんか……?ハナコさんが……』」

「マリーちゃん?どうかした?」

「『は、はい……今にもハナコさんが脱いでしまいそうで……』」

「……分かった、すぐ行く」

 

 シスターフッドの、伊落マリーからだった。「そういえば、ハナコとコハルちゃんはついてってないんだっけ」と思い出しながら、リエは机の上に広がっていた書類をまとめ始めた。

 

「リエさん?どこか行かれるんですか?」

「ちょっとシスターフッドの方。パンケーキはまた後ででいい?」

「それならご安心下さい。……私も今から買い出しですので」

「あっはは、了解。パンケーキ、楽しみにしてる」

 

 そう言って、リエはナギサに先んじて執務室から駆け出した。

 


 

「……あ!リエさん!こちらです……!」

「待たせちゃった?……それで、ハナコは?」

「今案内します……!」

 

 マリーに案内されるままに部屋に足を踏み入れたリエが目にしたのは、服をたくし上げ、顔を赤らめるヒナタに身体をピタッと密着させたままテキパキと書類を整理するハナコの姿だった。リエは質のいいカーペットの上を一歩一歩とおもむろに進み、ハナコの肩を軽く叩いた。

 

「何やってるのさ、ハナコ?」

「リエさん、ごきげんよう♡リエさんもいかがですか?」

「普段なら乗ってたんだけど……「人に迷惑かけないように」って言わなかったっけ。あんまり酷いようだと私も見逃せなくなっちゃうよ?」

「見逃……え?どういうことですか?」

「……」

 

 リエの発言を上手く飲み込めずにいるマリーと、ただなにか言いたげに黙るハナコ。リエはため息をついて話を続けた。

 

「……ヒフミちゃん達について行けなかったのは残念だけど、ひとまず今はシスターフッドの力になる、そういう約束なんでしょ?」

「……はい。そうなのですが……」

「分かった。どっかでそういうバカンス的なの出来るようにこっちも調整してみるから……今は真面目にお願い」

 

 リエがそう言うと、ハナコは渋々胸の上まで捲くり上げていた制服を元に戻した。ヒナタがその横でホッと一息ついた。

 

「わざわざ来ていただいてありがとうございました……」

「ううん、エデン条約関連でだいぶお世話になってるから。またハナコが暴れそうになったら釘刺しに来るからすぐ呼んで。じゃあ、これで失礼」

「は、はい!またお世話になるかもしれませんが……。今日もあなたと共に平穏がありますように……」

 

 そう言ってマリーは小さくはにかんだ。リエは控えめに手を振って、大聖堂を後にした。

 


 

「リエさん、準備は大丈夫ですか?」

「うん、いつでも行ける」

 

 ティーパーティーのドレスルームで髪を梳かしながら、リエは答えた。この日のために、二人は、トリニティは全力で準備に当たってきた。そしてその努力は間もなく実を結ぼうとしている。

 

「リエさん、迎えの車が来ました」

「よし、行こっか」

 

 ハンドバッグにハンカチやグレネードランチャーを収め、リエはナギサと共に部屋を出た。心なしか、普段よりもトリニティの空気も柔らかいような気がする。

 

「いよいよ……ですね」

「そうだね。……でも、大丈夫だよ」

「そう……ですよね。私達、頑張りましたもんね」

「うん。……これで、ようやく……」

 

 その時は、とうとう訪れようとしていた。




それぞれの読者に違うリエのイメージがあるんですかね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。